「静謐なモノクロ写真集の、よう」椿の庭 はなもさんの映画レビュー(感想・評価)
静謐なモノクロ写真集の、よう
この映画の設定は、古い家に住む老婆と、近々に事故で母を亡くしたアメリカ生まれらしい孫娘とが住んでいる。なので孫娘は日本語がたどたどしいし、少し二人の関係性は距離があると言うことだ。
その事を事前に知らなかった私は、とても不自由だった。
何しろ極端に台詞がない。あるのは、庭の樹々の移ろい、折々の花の色、咲き終わった花殻、小鳥のさえずり、虹、遠くに見える海、雲、空、雨、時計の音、そしてレコードの音楽だ。
かなり広い庭には、大きな藤棚がある。結構うっそうとした木々、こんなに広い庭を有しているのだから、かなりの邸宅らしいが、その全貌、和洋折衷らしい屋敷は、見せてくれない。冒頭からそうなのだ。見たい画像を見せてくれず、ビックリするほどの大写しのおばあさんの顔、手、孫の顔。
せっかく着物を着ているのだからカメラをもう少し引いて、仕草ある姿を見たかった。
そして自然光のカメラは、画面が暗い為、時のうつろいを表すけれど、本当に見たいモノ、私の場合は、面白そうな部屋の間取り、彫り模様のあるテーブル、いす、着物の柄、帯、写真の裏書きをハッキリ見られなかった事がとても不自由だった。
中盤、おばあさんは、居心地良さげな椅子でこときれる。それを見つけた孫の渚は、その時が来ることが分かっていたかのように、ゆっくりと、でもおばあさんとの束の間の時間を愛おしむように、おばあさんの手を重ねて慈しむシーンがとても印象的だった。
二人が共に過ごした時間は、短かったかもしれないが、確かに、祖母の静かな生き死にを記憶してたようだった。形あるものはいつか朽ちてなくなってしまうが、自分の記憶ある限り、その時聞いた曲と共に、いつでも思い出せるのだと思った。
渚役のシム・ウンギョンは、秘めた演技が巧みで、暗い日本家屋の中で彼女の白い肌は映えて魅力的だった。
今晩は
今作は、フライヤーは手元にあったのですが物理的に観れなくて。
且つコロナ禍の第七波が物凄い勢いで拡散しているので、私の居住区のミニシアターでの予定していた本日の鑑賞を断念し、今作を配信にて鑑賞しました。
結論から言うと、非常に面白く、且つ相続に関して考えさせられる映画でしたね。では。
はなもさん
コメントありがとうございます。
普通家に居たら同じ服を着たりするはずなのに、富司純子さんの着物はいつも違ってたと思いました。
シャキッと着こなして素敵だと感じました。