「共依存と生活保護」MOTHER マザー kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
共依存と生活保護
生活保護も断り、児童福祉ソーシャルワーカーも払いのけ、息子と二人で生きていこうとするも働く気が全くない。パチンコ、酒、男・・・自堕落な生活が続けば、ある意味信念を突き通してるのかもしれないが、周囲の人間はたまったもんじゃない。両親からも絶縁され、息子周平に盗みを働かせ、やがて娘冬香も生まれることに。
歪んだ愛情もここまで発展すると他人を全く受け付けない。元はアルコール依存症の夫婦を指した言葉「共依存」が重くのしかかる。母親の一方的な命令もさることながら、愛情も溢れているので危険な状態に陥り、物事の善悪さえもわからなくなっているのであろう。
人間関係でいえば、元夫が一番まともで離婚した原因も想像に難くない。母親にしても、自宅に住まわせれば問題も起きなかったに違いないし、秋子本人に男を見る目があれば良かったのだろう。遼(阿部サダヲ)との関係にも「共依存」があったと考えられるし、そんな依存のために世間から隔絶された哀しい女性だ。
『万引き家族』を思い出す方も多いようですが、個人的には昨年の『凪待ち』を思い出してしまいました。依存症という恐怖。断ち切れない何か。自尊心だけは強いため、社会保障をも拒み続けるのだろうし、このような人はどこにも必ずいるものだ。この作品では働く気がない主人公だったが、コロナの影響で働きたくても職がない人が増え続けるだろう。
残念だったのはスマホを持ち続けていたこと。本当のホームレスだった持ってないだろうし、それでも生活できてしまうという説明がなかったところか。元夫からの養育費月5万だけというのも。それでも長澤まさみの体当たり演技だけは評価できます。
この親子なんだかんだとお金を手に入れてそれをパチンコで使い果たすくらいなので携帯は(時に使えなくなりつつ)持ち続けたのかなあと思って見ました。ホンモノの貧困と言うより使い方の間違い。息子は最終的に就職してるしきちんと暮らす努力さえすれば出来なくないのに母親は言わば障がい者か精神疾患の域。実話に対する問題提起には役立った気もします。