「事故映画 恐くない中田」事故物件 恐い間取り 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
事故映画 恐くない中田
変死、自殺、火災、殺人…。
曰く付きの住居。所謂“事故物件”。
そんな物件に実際に何軒も住んだお笑い芸人・松原タニシのノンフィクションを、中田秀夫監督が映画化。
中田監督のキャリアも最近パッとしない。
復帰したJホラーのアイコンは期待外れの駄作だったし、落としたスマホは掛け間違いだったし…。
が、今回は実体験を基にしているだけあって面白そうで、話も恐怖も期待出来そう。
今度こそ今度こそ今度こそ、JホラーとJホラーの名匠の復活を!
売れないお笑いコンビ“ジョナサンズ”。ヤマメは突然相方の中井から放送作家になると解散を告げられ、途方に暮れる。
そんな時、中井が出したある企画を番組プロデューサーが気に入り、やる事に。
それは、曰く付きの事故物件に住むというものだった…。
Wikipediaによると、実際は先輩芸人から「住んでみろや」と言われ、住むようになったとか。
多少脚色されてるが、似たり寄ったりの経緯。
で、渋々住む事になったヤマメ。
そんないきなり“出る”訳…
出た!
カメラにオーブがくっきりと!
これで番組は好評と高視聴率。ヤマメも“事故物件住みます芸人”としてブレイク。中井とも和解する。
いい事尽くしだったが、他の事故物件にも移り住む内に、ヤマメの周囲で奇怪な出来事が頻繁に起きていく…。
はっきり言ってしまおう。
開幕のクソつまんねーネタが全てを物語っていた。
中田監督、今回もやっちまったな…。
いや、『貞子』よりかは作品エンタメ度的にはマシだったと思う。でも、『貞子』よりマシ、『スマホ』以下ってとこ。
では、恐怖度は…?
多少ビクッとするシーンはあった。白昼現れた赤い服の女とか、襲い掛かってくる男の陰とか、鏡に突然映る老女とか。
でもこれら、びっくりどっきりで、『リング』のようなじわじわ来る恐怖は微塵も無い。
何よりずっこけてしまったのは、最後の物件に現れた幽霊たちがヤマメに襲い掛かるシーン。え? これ、コメディ…?
その物件で、正体不明の黒フード&黒服姿のダース・モールみたいな怨霊みたいな奴と闘うシーン。え? これ、超常現象アクション…?
明らかなSF(スーパー・フィクション)。ノンフィクションじゃなかったの…??
って言うか、毎度毎度言ってるような気がするけど、本当に『リング』を撮った監督の作品なの、これ…?
そもそも、これはホラーなのか…?
確かにホラーではある。が、
売れる為なら何でもする芸人と、パワハラ的なお笑い界。こっちの方がある意味、ホラー。
ジョナサンズの唯一のファンの女の子、梓。彼女とヤマメのぎこちない仄かな恋の行方。
ヤマメが芸人を目指す理由となったのは、『パッチ・アダムス』的な“174秒”の割りといい話。
だけど、ホラーの中に他のジャンルがごちゃごちゃ入り雑じり。
おそらく中田監督はこれら全てを巧みに纏めたつもりなのだろうが…。
また比べるのは申し訳ないので敢えて伏せるが、名作Jホラーのようにホラー一本の雰囲気にして欲しかった。
まあ、悪くない点もあった。
何と言っても、ホラー映画には欠かせない美少女。さすがJホラーの名匠なだけあって、そこは分かってらっしゃる。
本作では、奈緒。
可憐で、健気で、キュート。
さらに彼女、見えるんです…。
他キャストでは、事故物件担当の不動産の江口のりこ。単なる風変わりな不動産屋と思いきや、終盤で怨霊退治にも通じ、最後の最後で…! 出番はそんなに多くないが、さすがのクセ者。
お陰で主演のジャニーズ亀梨はすっかり霞んでしまった。
“物件”が題材なので、勿論それらも。入った瞬間から不気味な部屋もあれば、意外と住みやすそうな部屋も。住んでみる? みない?
後は、う~ん…、う~ん…、う~ん…。
ヒットもしたし、あの結末から続編も作られそうな。
でも個人的には、またまたまたまた中田監督に冴えない作品が増えただけ。
いずれ忘れ去られ、曰く付きの“事故映画”になるかも…。