「怖いを求め過ぎると肩透かしされますが、元ネタ自体が実は取り扱いの難しい作品です。」事故物件 恐い間取り 松王○さんの映画レビュー(感想・評価)
怖いを求め過ぎると肩透かしされますが、元ネタ自体が実は取り扱いの難しい作品です。
色々と話題の作品で今年の夏は個人的には目玉作品が少なかった事もあるのと、監督が「リング」の中田秀夫さんとあって、結構期待値を上げて観賞しました。
で、感想はと言うと…コメディ?かと思うぐらいに怖さが薄い。
また、いろんなツッコミ所が多くて、ツッコんだら負けなぐらい。
芸人の松原タニシさんの体験談を元にしているとは言え、過剰に芸人さんを絡めての笑いのポイントを入れてくる感じで逆に引く。
ですが、なんと言ってもクライマックスの4軒目の一番ヤバい物件での霊体験はツッコまざるおえないぐらいのオンパレード。
山野の千葉のアパートに奈緒さん演じる梓と瀬戸康史さん演じる元相方の中井が急に駆けつけるのも謎なら、中井に除霊の方法を電話で伝授する不動産屋の事故物件担当の横水が水餃子を食べながらの描写も謎。
何がしたいのかがよく分からない。
4軒目の西洋風の怪人の霊もなんかピントがズレてるし…
これが事故物件に住んだ体験での結論なら住む際には、御札、線香、ビニール傘は必須になりますねw
それにしても何故、関西から遠く千葉の山野の部屋に尋ねるのに「LOVELOVE愛してる」と描かれたコントの小道具を梓が何故持参したかはどう考えても…分からんw
様々な事故物件に住むと言うのは、普通の人ならなかなか思っても実行に移さない体験で、それを実行している松原タニシさんの体験は興味があるし、聞いてみたいし、見てみたい。
どんな怖い体験をしたのかな?と普通は思いますわな。
でも蓋を開けてみるとそんなに怖い体験ではなくて、せいぜい最初に映った「オーブ」ぐらいが通常かなと思います。
でもそれでは何か弱くて、映画としていかに「魅せる」かがポイントと言うのも分かるんですが、4軒目のはやり過ぎだろうとw
また、ラストの横水の死亡?も違う意味でやり過ぎ。
あれも、事故物件を取り扱っている不動産屋の担当は取り憑かれて不幸に会うとなりますよね。個人的には横水よりも制作プロデューサーの木下ほうかさん演じる松尾の方が呪われる気がするんですけどねw
3軒目のお婆さんの体験でも十分怖すぎる。でもこれでもちょっとやり過ぎな感じ。
最初の「6階立ち入り禁止」ぐらいの方がリアル感があってそちらの方が怖いと思うし、そこを膨らませた方が良かったのでないかなと。
中田秀夫監督ならその手のテイストを使っての方が得意かと思うんですよね。
脚本担当のブラジリィー・アン・山田さんは滝沢秀明さん主演で清水崇監督の「こどもつかい 」でも脚本を担当されてますが、ホラー作品のポイントがどうもズレてる感じがする。
ジャニーズのタレントさんが主演で製作委員会にジャニーズが入っているのが原因か?と言うのは邪推でしょうかw
でも、清水崇監督、中田秀夫監督というジャパニーズホラーの2大巨頭の作品で低評価(敢えて言う)は如何なもんかと。
そもそも、このお話って実体験を元にしたノンフィクションがベースになってますが、作品の性質としての製作の落とし所は実はかなり難しい。
松原タニシさんは今も元気に事故物件に住んでるし、呪われているみたいなエピソードや事故物件に住んでいて呪われたみたいにすると過剰に霊体験を盛っている事になるし、ヤラセ臭くなる。
かと言って"何もありませんでした。"では盛り上がらない。
事故物件と言う案件は不動産業者には厄介な案件で、劇中でも出てましたが「心理的瑕疵」と言った明記義務が発生するけど、様々な事情や社会情勢を考えると部屋での死亡と言う事は起こりうる事かと思います。
実際に事故物件を専門で扱っている不動産屋もあるぐらいなので、過剰に「こんな怖い事があるよ」と言う感じで煽るのも色々と厄介。
まるまるノンフィクションでは駄目だし、フィクションとして謳い過ぎても駄目。
そう考えるとかなり難しい案件ではあるけど、それでもこれで良いのか?中田秀夫監督?と言いたくなりますw
落とし所としては「これは僕は芸人として成り上がっていく為に事故物件に住んだことを体験談にしてみましたが、安易に事故物件に住むことはやはりお勧め出来ません。それでも住みたいと言う方は自己責任の元で実行して下さい。…でも、何かあっても責任は取れませんよ。それを警鐘する事がこの映画の存在意義です。」と言うのぐらいを強く打ち出さないと駄目だと思うんですよね。
そうすれば事故物件と言う我々が暮らしている中で身近にありうる事の怖さと取り扱いの諸注意にもなるかと思いますが、如何でしょうか?
映画としては最初の物件のあのマンションだけに絞るか、不幸の連鎖の元凶は最初のマンションとして戻ってきて、立ち入り禁止の6階に挑むとした方が怖いと思うし、ラストの横水の件はやり過ぎ感はあってもいきなりシリアス描写になって怖い。
中田秀夫監督独特のジメッとした怖さを醸し出せる要素は十分にあると思うのに、どうも妙に突散らかして、コメディ感を出そうとしてるのが本気か冗談かが分かり難くて惜しいし勿体ないんですよね。
様々な意見があるのですが、あくまでも個人的な一意見として捉えて頂ければと思いますが、なんともはや…と言うのが感想。
それでも観ないと始まらないので、いろんな意見があるかと思いますが、興味があれば如何でしょうか? 事故物件に住む際の参考ぐらいにはなるか思いますw