「中学十年生」あの頃。 CINE LADAさんの映画レビュー(感想・評価)
中学十年生
音楽仲間には一定数いたのです、アイドルに流れていく人間が。その世界にハマることなく今まで過ごし、おそらくこれからもアイドルにはハマらないのだけれど、自分が通らなかった世界観を垣間見れた。そして頷く、なるほどねと。
イベントでの急なバンド結成の流れが熱い。
「なんで急に?」と思う人も多いだろうけど、音楽とはつまりリビドーなのです。思いつくままに、明確な理由もなく「バンドやろうぜ!」と誰かが叫び、周りに居る人間がずるずるとステージに上がる。舞台では、自分らの胸の奥にある気持ちを、楽器やマイクを通してぶつけるだけ。オリジナルだろうがラップだろうがアイドル曲のカバーだろうが、何でも良いのですよ。これこそ中学十年生の青春劇。
あー、バンドやりたい。
物語に特別に強弱を付けず、悪く言えばだらだらと過ぎるむさ苦しい日常は、今泉力哉監督らしい描き方。伏線だとか起承転結とか、そういったあざとさではなく、他愛のない日常の積み重ねでオタクたちの関係性をじんわり表現する。
そして、現代のアイドルには欠かせないであろう「卒業」という概念は、彼女らを推すオタクらにもやってくる。誰に見守られる訳でもなく、華美な演出も、卒業の舞台もマイクパフォーマンスも用意されない長い長い中学生活からの卒業。濃い十年生の時間を過ごしたからこそ「今が一番楽しい」と言えるのだろう。
今が一番楽しい!と言いたいな。
やっぱりバンドやるかな。
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