「突き詰めれば“ひとり”。ひとりとひとりの連なりが生命の歴史」おらおらでひとりいぐも 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
突き詰めれば“ひとり”。ひとりとひとりの連なりが生命の歴史
原作者・若竹千佐子が桃子さんという主人公の思索を通じて伝えるそうした哲学的なメッセージを、脚本を兼ねた沖田修一監督はアニメーションやCGも駆使し、視覚的に直観しやすいユーモラスなビジュアルで表現した。コメディやドラマを比較的オーソドックスな話法で作ってきた沖田監督だが、今作ではストーリーを映像で語る「映画」のフォーマットでどこまで遊べるか、正統な映像表現手法をシュールレアルな描写や唐突なギャグで脱構築できるかに挑戦してもいる。
地球46億年の歴史と桃子さんの人生は、一見遠いようで、俯瞰すれば脈々と続く命のバトンで繋がっている。人間は生まれる時もひとり、死ぬ時もひとりだが、家族や出会った人々など、有限の時間を一緒に過ごした人と、過去の自分自身の記憶は共にある。単に独居老人のありようにとどまらない、人生への向き合い方についての含蓄に富む豊穣な映画体験だ。
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