「友情も愛情も家族さえ全てを切り捨てた可哀想な人の話」夜明けを信じて。 まるおさんの映画レビュー(感想・評価)
友情も愛情も家族さえ全てを切り捨てた可哀想な人の話
一言で言うなれば、架空の主人公が自分の半生を山も落ちもなくただ淡々と自分語りしていく映画。
なろう小説俺TUEEE系小説の最強版でした。チートの俺がちょっとした行動で世界を救う昨今ありふれたネット小説を何とか無理矢理に現実に落とし込んだ作品です。
椅子に縛り付けられてる気分になるつまらなさは天井のシミを数えてた方が100倍マシと思えます。鬼滅の刃のきの字にも及ばないつまらなさでした。
親族にムビチケを貰ったのでポイントをためるついでだと思いましたが、見合ったメリットはありませんでした。
まず映画を表現方法として選んだことが間違いだと思います。ストーリノーの本題もはっきりせず何を言いたいのかも示さず、ただ考えごとの垂れ流し、ならせめて100分以内に収めたほうがまだ見やすくなったかと思います。表現方法としては30分ラジオドラマでするべきです。
昨今人気だった半沢直樹の人気にあやかりたいのか仕事面もフォーカスされていますが、アメリカ行きの出世コースに乗ったりする割には本人はピンときていないようでどこか心ここに在らず、しかも仁義だの人情だの日本の本社に筋を通すと熱いことを語ったわりに辞めるときは一方的で、恩がある上司にも事情を話さず、事前の相談もなく突然という形で辞表を出して去っていく、その人情の一切ない非常識さは3日で来なくなるバイトか何かかと思いました。
母もその息子を褒めていたり、大学の同級生も天才性があるとしたり一歩先を行くだとか褒めそやしたり、面接の時に上司の上司に求められて頭を下げられたりもして、周りから評価が高い人物として描かれていますが全く本人にはそのような能力が見られない。まるでこの映画には登場もしていない全く別の人のことを語っているかのように感じられました。本当に主人公のことを指していたのか疑問にさえ思います。周りの人たちは誰のことを語っていたのでしょうか?
それとも最初の方でポエムをもらっていた女性のように、自分は完璧なように見られるけれどそんな人ではないと謙遜したいのでしょうか……?
しかし、謙遜する人とは思えない数々の行動に辻褄が合いません。
自分はこんなにも力も知恵もあるのに周りはわかってくれないと駄々をこねているようにさえ感じられます。
霊が見えることも隠したいのか広めたいのかわからない行動でした。反感を買っていた相手から、本を書いただけで尊い人などと頭を下げられるのも突然すぎる現実味のない描写でした。
また女性に好かれるように描写されていますが、実際にいる人物だとしたら結婚のけの字も考えられませんね。おそらく家事も育児もしない家庭を顧みない夫になっている恐れがあります。
詩を相手に送るのは時代でしょうが気持ち悪いことこの上ない。スマホがある現代なら知り合いという知り合いに気持ち悪いナルシストとして広がっているでしょう。本当に自分の見たいように相手を崇拝している独り善がりな好意でした。知りもしない一目見ただけでろくに話しかけもしなかった相手に自分の理想を押し付けすぎて、理想通りできなかったら相手に責任を押し付けるストーカーの気さえ感じられます。
昭和という時代もあり挿入される曲のタイミングやら曲調はまるで焼酎のCMのようでした。まだアニメ映画の音楽の方が素晴らしいものでした。
なんだか、大学の仲の良い同級生や仕事仲間、目をかけてくれた上司、人との親密な関係をすべて切り捨てた孤独で可哀想な人のようでした。それなのに誰にもわかってもらえないと相手に押し付け自分は唯一無二の崇高で世界にとって不可欠な人物だと信じたいだけ。
そんな人が理想の自分を見たいがために、作り上げた自己満足の自分語り映画という印象でした。
そのことがエンドロールの歌で感じられました。
孤独という以外に言い表せない主人公です。