「ニュート・スキャマンダーとダンブルドア軍団」ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ニュート・スキャマンダーとダンブルドア軍団
『ハリポタ』から『ファンタビ』開始の間の5年の空白を例外とすれば、これまでで最長の3年半のブランク。
メインキャストの降板・変更、コロナなどで製作や公開の延期が続き…。
前作『~黒い魔法使いの誕生』がシリーズで最も成績も批評も鈍く(内容的にもいまいち弾けず)、今後の展開へちと不安にもなったが、いったんの仕切り直しの一息になったのではなかろうか。
魔法、晴れて再開。
新たな魔法ワールドへの入り口程度だった1作目。
一気に複雑さとダークさが増し、急ぎ過ぎて詰め込み過ぎだった2作目。
前作のラストで今後への課題を残し、それを受けて今回どう展開するのかと、やはり気にはなっていた。
率直な感想。
前作の詰め込み過ぎの反省からか、思ってたより小出し。展開的にはそれほど大きく動いてなかったような…。
“充電期間”の価値はあったような、なかったような…。
タイトルからはダンブルドアの何かが明かされるのか?…と思わせるが、実際の話は、グリンデルバルドの野望とそれに立ち向かうニュートらの活躍。
前作で仲間や信奉者を集ったグリンデルバルド。魔法界のみならず、人間界にも脅威が。冒頭“ある人物”に、「人間界を焼き尽くす」と宣言。いよいよ本格的に動き出す。
後のヴォルデモートは恐怖で支配したが、グリンデルバルドは政治を巧みに利用。証拠不充分で無罪となり、魔法界の新たな指導者を決める選挙に立候補。選ばれた暁には…。策略家。
その選出のキーとなる新たな魔法動物、キリン。
手中にしようと画策するグリンデルバルド。
対し、守るニュートら。『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』で“ダンブルドア軍団”が結成されたが、言わばその“初代”。
ニュートと兄テセウス、前作から引き続き登場の名門純血魔法族の末裔ユスフとニュートの助手バンティ(←彼女、ナイスな役回り!)、新キャラとして米魔法学校教師のヒックス。そして忘れちゃいけないジェイコブ。
ダンブルドアからの召集と命を受け、“ノープラン作戦”を決行。
ある者はスパイとして(スネイプみたいな…?)、ある者はある任務を託され、ニュートら本隊は行き当たりばったり。
どうグリンデルバルド一派に立ち向かっていくのか、彼らの動向がやはり一番の見もの。
中でも、ジェイコブの活躍は見逃せない。ニュートにとっては頼れる“相棒”。ダンブルドアも一目置き、凡人だが、彼のような心が大きい人物が必要とまで。ダンブルドアから魔法の杖も貰い…!
それは我々観客にとっても同じで、時に笑わせ、時にドラマを締める。言うまでもなく、クイニーとのマグルと魔法使いの禁断の恋。前作のラストで、グリンデルバルド側に付いたクイニー。ジェイコブは今も尚クイニーを想い、クイニーも…。クライマックス直前のあるシーンで、やっと顔を合わせての再会。この時揺れに揺れ動くクイニーに対し、ジェイコブは真っ直ぐ想いを伝える。その姿、これこそ真のイケメン!
本作、『ファンタスティック・ビーストとパン屋マグルの恋』でも良かった…?
NYとパリを経て、今回は世界が舞台に。
ベルリン~ホグワーツ~ブータンへ。(架空の世界が一つ混じってるけど)
ニュートが愛するお馴染みの魔法動物、ボウトラックルとニフラーが活躍。加えて、キリンや地下監獄の不気味な魔法動物も新たに。
ニュートらvsグリンデルバルド一派、ダンブルドアvsクリーデンス、そしてダンブルドアvsグリンデルバルド…。
“血の誓い”を立てたダンブルドアとグリンデルバルドはどう闘いを…?
ごちゃごちゃし過ぎた前作よりかは良かった。
今回も無難に楽しめる魔法ワールド。
が、物足りなさや難点もあった。
その最たるは、“ダンブルドアの秘密”。
『ハリポタ』でも明かされなかったダンブルドアの秘密が遂に明かされる!…と、大いに期待を持ち上げる。
魔法界と人間界のみならず、シリーズにとっても大きな衝撃となるような何か重大な秘密かと思ったら、非常にパーソナルな事で、ちょっと拍子抜け。
若かりし頃、グリンデルバルドとは愛し合っていた…!という同性愛告白は、“兄弟以上の関係だった”という発言から薄々察し付く。
ダンブルドアの実弟だった…!というクリーデンスの衝撃の本名と出生をグリンデルバルドから伝えられ、幕を閉じた前作。何だかんだ言って、この続きが気になる。
が、前作であんなにキーであったクリーデンスが、今回は随分と隅に追いやられた感じ。更なる事実。クリーデンスは“実弟”ではないが、“一族”。前作のラストであんだけ煽っといて、アレ~?…な感じ。“その人物”との関係や和解、ダンブルドア一族のドラマをもっと踏み込んで欲しかった。そうすればもうちょっとタイトルに近付けたと思う。
正直これじゃあ、“ダンブルドアの秘密”って…?
大層な秘密なんて無かったし、クリーデンスとの関係も拍子抜けだし、グリンデルバルドとの関係や実妹の死などダンブルドアの過去は『ハリポタ』を見てれば知ってる事だし。ここら辺、ちょっと残念だったかなぁ…。
日本の宣伝って、本当に過剰。
ダンブルドアの秘密が遂に明かされる!…とか、今回の舞台はホグワーツ!…とか。
作品自体の踏み込みも足りなかった気もするけど、過剰宣伝に期待釣られるのも禁物。
あくまで、今回どう展開していくのか?…程度に見れば、それなりに。
キャストたちは皆、好演。
キャストでのトピックスはやはり、グリンデルバルドの代役、マッツ・ミケルセンだろう。
某事情でのジョニデの降板は本当に残念だが(ここ近年では一番ハマり役だった)、それを充分補ってくれたデンマークの名優。
特殊メイクのジョニデに対し、ミケルセンは素顔で、スマートな悪のカリスマぶりを発揮。代役がミケルセンで良かった…。
ジョニデ続投で見たかったと思う一方、最初からミケルセンで見たかったとも思ったり。
そのキャスト変更は別として、クリーデンスが長髪になったり、クイニーが金髪になったり、何故かキャラのイメチェン…?
何かスケジュールの事情か、物語の展開上のカットか、ティナのほとんど不在やナギニの未登場が残念…。
前作よりユーモアやエンタメ度はアップ。前作より見易く、雰囲気も1作目と前作の中間な感じ。
だけど、プロデューサーやJ・K・ローリング女史からは絶大な信頼を得ているようだが、前作のレビューでも述べたが、そろそろ監督の交代あっても…。『ハリポタ』は時折の監督交代がシリーズに新風与えてくれていたので、このトーンとスタイルで最後まで続投するようであれば、本当にいつか飽きが出てしまいそう。どうでしょう、イェーツさん…??
大きな秘密はなかったような、話の進展もあったようななかったような…。
それでも5部作の“真ん中”として、今回一応の一区切り感付けた感じ。
前2作からのグリンデルバルドの野望も打ち砕かれ、残り2作どう企てるのか。
“血の誓い”も解消され、完全に袂を分けたダンブルドアとグリンデルバルド。今度会った時は…。
前作の課題を多少回収し、また新たな課題へ。本当に残り2作、どう展開していくのか…?
何はともあれ、今はあのハッピーエンドに免じて。
おめでとう、ジェイコブ&クイニー!
ダンブルドアの校長としての存在は魔法界においてかなり神聖視されていて若い頃にグリンデルバルドと共にマグルを支配下に置くもしくは滅ぼす思想があったと言うのは衝撃なわけでそれを原作の死の秘宝ではリタに暴露されてるのを今回取り上げた、という事ですよね。
まさか同性愛者とは思いもよりませんでしたが。ハリーポッターの映画の方で掘り下げなかった部分をやりたかったという原作者の意向があったのかなあって思いました。
仰る通りですね。
〝秘密〟というほどの秘密ではなかったし、それ自体は物語への影響はかなり限定的というか…。
でも原題もsecret?
まぁ事情は色々とあるとは思いますが、温度差は残りますね。