劇場公開日 2022年7月1日

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「若き日のエルビスは確かにキング・オブ・ロックンロールでした。」エルヴィス SUZさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5若き日のエルビスは確かにキング・オブ・ロックンロールでした。

2022年7月18日
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鑑賞方法:映画館

 私が子供の頃、エルビスはすでに侮蔑の対象だった。西田敏行や吉幾三にパロディにされた晩年のエルビスは滑稽ですらあった。もみあげ、襟のやたら高いシャツやラインストーンだらけのジャンプスーツ、成金趣味のバックルやカンフーアクション。エルビス自身もとてもキングには見えず、誰か架空のスターのパロディをやっているように見えた。オマケに死因も太り過ぎなどと言われた。
 そうした晩年のエルビスが多少なりともカッコ良く見えてしまうのだから映画っておそろしい。とは言っても、カッコよく見えるのはステージ上ではなく、移動車内で伺い見えるいかにもなサングラスだったり、これでもかの指輪だったりと、シンボライズされたエルビスだったりするのだが、、、
 しかしながら、若き日のエルビスは別格だった。痩せた身体に緩やかに着流したジャケット、ちょっと俯き加減の暗い眼差しと長い髪。うん、カッコ良い。ステージも登場時の熱狂が良く伝わる映像だった。少し「病み系」だったのね。後にビバ〜ラスベガスとか脳天気に歌うとは思えないね、良い曲だけと。
 「俺は音楽のことは解らない」と言う大佐の言葉に象徴されるように、エルビスのファッションやステージアクションに比べて音楽の取り上げ方が少なかったように思う。腰の動きをスローモーションで見せるのも良いけど、一曲フルの歌唱シーンを観たかったな。やっぱりエルビスの音楽を楽しみたいのだ。特に黒の皮の上下できめた68年のカムバックライブをじっくりと。
 あの時代のアメリカの世相については「勉強になりました」って感じ。進んでいるようで、あんなに遅れてたのね、アメリカって。第二次世界大戦後ですよ。ホロコーストとの戦いも経てのあれですよ。L.リチャードは白人の客の前でお行儀よく歌ってるのしか観たことなかったけど、黒人だけのプライベートライブではケダモノのよう。抑圧の度合いは白人ロックスターの比ではなかったのだろう。

SUZ