「観客の熱狂を糧に己の音楽を貫いた男」エルヴィス みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
観客の熱狂を糧に己の音楽を貫いた男
従来のミュージシャン伝記とは一線を画す異色作である。伝説のミュージシャン・エルヴィス・プレスリーの波乱に満ちた半生を描いた作品である。主人公とマネージャーの二人を軸に描いている。主人公の栄光と挫折、苦悩、葛藤などに加え、マネージャーと対比して多面的に主人公像を浮き彫りにしている秀作である。
本作の舞台は1950年代のアメリカ。エルヴィス・プレスリー(オースティン・バトラー)は、斬新なロック音楽と刺激的なダンスパフォーマンスでデビューし、若者達を熱狂させる。しかし、主人公の歌唱スタイルは当時の保守的な社会からの批判、中傷の標的となる。いち早く彼の才能を見抜き、金になると考えマネージャーとなった強欲なトム・パーカー(トム・ハンクス)は、主人公に歌唱スタイルの変更を迫る・・・。
全編に流れる音楽は聴き慣れた曲ばかりであり、そんな音楽のシャワーを浴びながら冒頭からすんなりと作品世界に惹き込まれる。特に歌唱シーンの迫力は圧倒的であり、胸に刺さる歌詞、ライブ会場にいるような臨場感で気持ちが高揚してくる。当時の若者達の熱狂ぶりが納得できる。
主人公の創り出す音楽は、ストレートに主人公の心情を表現したものであり、遠慮や嘘がない自己主張が、今聞いても古臭くなく斬新である。今も昔も変わることのない普遍的な人間の心情を表現しているからである。
主人公は純粋に自分の音楽を究めようとする。どんなに批判されても、苦悩、葛藤しながらも自分の音楽を貫いていく。音楽をビジネスとしか考えない強欲マネージャーとの対比が主人公の純粋さを際立たせている。主人公を言葉巧みに懐柔しようとする強欲マネージャー役のトム・ハンクスの巧演が光る。
終盤、主人公は、次第にライブでの観客との熱狂、愛の虜になり、私生活では満足できず薬に溺れていく。立てなくなった主人公の椅子に座っての渾身の歌声が心に沁み渡る。
本作は、観客の熱狂を糧に純粋に己の音楽を貫き続けた男の物語である。
みかずき様
新年早々にレビュー同様の丁寧なご挨拶をいただきまして
ありがとうございます!
本年も的を得た冷静沈着なレビュー
楽しみにし参考とさせていただきます
こちらこそどうぞ宜しくお願いします
美紅さん
みかずきです
コメントありがとうございます。
エルヴィス・プレスリーが自分の音楽を貫く純粋さが際立つ作品でした。
全編に流れる音楽も聴き慣れた曲ばかりで、ライブ会場にいるような臨場感もあり、熱狂させる音楽の力を実感できる作品でした。
では、また共感作で。
-以上-