劇場公開日 2022年7月1日

  • 予告編を見る

「真の意味での“信用できない語り手”」エルヴィス regencyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5真の意味での“信用できない語り手”

2022年6月23日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

単純

興奮

まずはエルヴィス役のオースティン・バトラーに拍手。容姿は似ていないが声質や仕草がかなり本人に寄せている。エルヴィスのモノマネは一歩間違えたらギャグになりがちだけど、そう感じさせないギリギリのラインを保っていた。
そしてトム・パーカー大佐をトム・ハンクスが演じると聞いて、本作は彼をストーリーテラーにして進むんだろうなと思っていたが、案の定その通り。エルヴィスの晩年は様々なメディアや検証本などで語られているが、本作では“信用できない語り手”をパーカーにする事で、エルヴィスとの関係性にサスペンス性を高めている。「誰が彼を殺したのか」と宣伝コピーにあるのも、そういった要素を意識したと思われる。
ただ、そうした煽りが逆効果になってしまった感ありで、パーカーが考察した(というか脚本&監督のバズ・ラーマンが)エルヴィスの死亡要因がイマイチ呑み込めない。主役はエルヴィスだが、陰の主役といえるパーカーの出自や人物像なども掘り下げて欲しかったところ。多分これがエルヴィス視点での伝記ものだったら、母親への愛情をメインに描いていたんだろうなあ。
ただ、エルヴィスの熱唱シーンはさすがラーマン。特に「サスピシャス・マインド」の使い方には唸らされた。
にしてもトム・ハンクスはイイ人役や独りぼっちになる役が多いけど、『クラウド アトラス』でも見せた狡猾な役も上手い。

regency