劇場公開日 2022年3月11日

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「ゾクアック」THE BATMAN ザ・バットマン かなり悪いオヤジさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ゾクアック

2022年3月20日
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映画の神がいるとするならば、残念ながらマット・リーブスにはその才能を与えていなかったのだろう。監督ならびに共同脚本をつとめている本作で、はからずもそれを証明することになってしまった、そんな感想をもたずにはいられない凡作である。この“バットマン”に限らず、MARVELならびにDCコミック元ネタの“テーマパーク型”ヒーロー映画の場合、(別種の)過去作へのオマージュをやろうとするととんだ茶番劇に転んでしまう、それがわかっていないのである。

おそらく、なぞなぞをくりだず今作のヴィラン、リドラー(ポール・ダノ)はフィンチャーの『ZODIAC』を、ゴッサム・シティーの片付け屋ファルコーネ(ジョン・タトゥーロ)は『ゴッド・ファーザー』のドン・コルレオーネを、バットマンとキャット・ウーマンのロマンスは『007』を、エンディングの水上歩行は『十戒』のモーセ(救世主)を模倣した演出であろう。

が、着ぐるみ姿のロバート・パディンソンがそれをやってしまうと、まったくの茶番劇、できのわるいコメディにしか見えないことに、このマット・リーブス監督まったく気づいていないのだ、脚本段階で出資者たちから大幅な“お直し”を命じられたであろうグダグダなシナリオを、ダラダラと3時間近くも無駄に引っ張りつづけた理由は、ラストシーンががなかなか決まらなかった故にちがいない。

“監視による恐怖と的を絞った暴力”によりゴッサムを良くしようと試みるバットマンことブルース・ウェイン。父親を殺された復讐心を胸に秘めた彼の苦悩する姿は、現在ウクライナ東部で暴れまくっている某独裁者のメタファーではなく、おそらくは、マフィアとの癒着やフェイクニュースによる民衆洗脳を元来得意としてきたJFK以降のアメリカ民主党政権の迷走を反映させているのではないだろうか。

そしてリドラーの謀略を見事打ち破ったバットマンは気づくのである。これからの時代は暴力による恐怖だけではダメで、民衆を導くためには“希望”が必要だ、と。いまさらそんなわかりきっていることを言われても、こんな薄っぺらなエンディングを見せられて「うん、その通り」と素直に頷いた観客が一体何人いたのだろう『TENET』の撮影をわざわざ休んでまで本作のオーディションを受けにいったパディンソンを、ノーランはきっとこう思ったことだろう。「全然わかってねっ」と。

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