劇場公開日 2022年3月11日

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「虚像のダークナイトシリーズから、ついに実像のバットマンへ」THE BATMAN ザ・バットマン JanSmashさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0虚像のダークナイトシリーズから、ついに実像のバットマンへ

2022年3月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

映画『ダークナイト』以降の印象が強いバットマンーーしかし、ここで傑作がきた。

先に言及しておきますが・・・
『ダークナイト』からバットマンを好きになった人には、あまりオススメできません。

恐らく日本で最も印象深いバットマンは『ダークナイトシリーズ』。
『ダークナイトシリーズ』からバットマンを好きになった人も多いだろうが、あれがエンタメ化したバットマン。つまり虚像。ただ、「ダークナイト」のバットマンを否定はしてる訳じゃない。
でも、『THE BATMAN ザ・バットマン』こそ「限りなく本物のバットマン」なので、ニュアンスがだいぶ変わる気がします。

●ヒーローへの認識の違い
アメリカのヒーローは日本のヒーローと違う。
日本では弁護士や刑事などが正義として描かれる。それは、悪のカウンターだ。
一方、アメリカのヒーローは夜な夜な秩序を守る慈善家だ。
アメリカのヒーローは献身的な自己犠牲の慈善活動家と言える存在であり、だからこそ自らを蔑ろにして人の尽くす姿に共感を得られない事もある。
日本の正義とは根本考えが別物であることを留意してほしい。

●バットマンの本質を描いた作品
『THE BATMAN ザ・バットマン』はDCコミックの中にいるバットマンというヒーローの本質。
そして、あり方を正したような気がした。
バットマンは子供の時、自分がコウモリを怖がったことがきっかけで両親を亡くす。
つまり、バットマンは自らの恐怖を乗り越えようとする人間でもある。

本質的にバットマンは復讐者だ。
悪を憎む=悪への復讐者。
犯罪への復讐者であり、邪心への復讐者であり、弱かった自分への復讐者である。
けして、悪人への復讐者ではない事をしっかりと描いた。

●正しい異名は?
バットマンは「World's Greatest Detective(世界最高の探偵)」、「Caped Crusader(ケープを纏った十字軍騎士)」という異名を持つ。
実は本質的にはこの2つの方がバットマンを正しく表している異名でもある。
今回のバットマンはヒーローというより、混沌のゴッサムシティにおける探偵。
そしてクライマックスに訪れるシーンによって、まさに「人々を導く騎士=十字軍騎士」であることを証明したのだ。

●総評
個人的にはアメコミヒーロー映画における最高傑作の一角。

近年のヒーロー映画。そして、バットマンの世界観における映画シリーズに対するアンサー。
DCヒーローとはどういうものか世界に示した作品に感じた。

「教えてやるよ。これが本当のバットマンなんだ」

そんな意志を制作側から感じ、胸を張ってバットマンを描いたと感じた。

でも、日本で受けるかは微妙だ。
ハッキリ言って選り好みする作品だと思う。

DC特有のダークで文学的で悲壮的な部分を、ヒーロー映画で臨むのだろうか?
赤いスーツで有名な映画『JOKER』はかなり原作に近い存在だったが、『ダークナイト』のジョーカーを想像した人からは不満も多かったはずだ。
今回のバットマンも初期の原作に近い存在なので、不満は多いと思う。

正直言って、ダークナイトからバットマンを好きになった人にはちょっとオススメするのをためらう。

JanSmash