「どうだ観たか!これがBATMANだ!」THE BATMAN ザ・バットマン 猿田猿太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
どうだ観たか!これがBATMANだ!
「正義の味方」という名の乱暴者、得意技は暴力、それがバットマンの真の姿――それが冒頭の第一印象。舞台のゴッサムシティの荒れっぷりはすぐ見て取れる。ジョーカーよろしく白塗り集団のチームに、半分しかメイクされてない新入りが一人。恐らく、それが上下関係を示す証なのだろう。そんな階層をも築かれた街など、もはやロクなものじゃない。その新入りがアイツをやっちまえとそそのかされる。そこに現れた我らが正義の味方、バットマンの登場――などと格好良さの欠片もない。金に飽かせて造らせた鎧で銃弾をもはじき返し、一方的に殴りつけるだけのパワーゲーム。その拳の力は恨み辛みそのもの。正に、「復讐」という名のヒーロー。
これまでバットマンの映画化・映像化は何度もされているので、詳しい説明はほとんど無く、月に写された蝙蝠のマークはどういう意味か? もちろん意味が有るんだけど、興味がある人が後で調べれば良いことで、本作を観る上では問題ないでしょう。
蝙蝠というだけに、夜の暗がりを飛び交い、得物を狙うのが本性。お陰で、映画の全編が暗くて暗くて、バトルシーンやチェイスや単なる人同士の対話でも誰が誰なのか判り無いほど暗くて暗くて暗い映画。お陰で、途中で眠っちゃったほど。激しいアクション映画だというのにもかかわらず。でも、ラストでハッキリと眼が覚めました。正しく眼が覚めるような結末でした。
ここから激しいネタバレなのですが、警部が犯人に問いかけます。お前は誰だと。普通、聞かないと思います。これは闇にバットマンに向けられた質問だったのでは無いでしょうか。「復讐だ」と応えた瞬間、バットマンにカメラがパン。そう、俺はお前だ。お前は俺と同じなのだと。悪は許せない、許さないと襲いかかり、馬乗りになって、ただ殴りつける。思わず、仲間から制止されるほど、怨みを込めて殴りつける。
しかし、ブルース・ウェインは否定しました。胸のバットマンのシンボルを引き千切り、その思いを象徴するかのようにケーブルを断ち切り、洪水で逃げ場を失った人々の元に舞い降りる。そして篝火を灯して人々を導く、これぞ聖者のような美しさ――本当に美しかった。ずっと暗いシーンが続いただけに、このラストのシーンだけは一生忘れたくない、ずっと我慢して見た甲斐があったと云いたくなるほど美しかった。
その後の続編が出そうな犯人の笑い声、キャットウーマンとじゃれ合うようにバイクを走らせて去って行くシーンも中々でしたが、そして最後の最後。全てのシーンが終わった後に、画面一杯に表示された「THE BATMAN」、これぞバットマン。どうだ観たか!これがバットマンなのだ!――そんな監督の叫びが聞こえたように思えたのですが如何でしょうか。
見終えて、1時間と立っていませんが、ここまで感想を夢中で書いてしまいました。長文ごめんなさい。それほど、ラストに感動していまいました。いやー、良かった。