「バットマンの心の闇…そして…」THE BATMAN ザ・バットマン bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
バットマンの心の闇…そして…
かつての『バットマン』と言えば、勧善懲悪のSFアクション・ヒーローというイメージがあった。しかし、『ダーク・ナイト』を境ににして、方向性が大きく変わり、アカデミー賞に数多くノミネートされた『ジョーカー』でも描かれたような、人間臭い苦悩や痛さが根底に流れる、ヒューマンタッチ色が濃くなってきている。
本作も、この流れを汲みながら、ブルース・ウェインが、幼き時に両親を殺されたトラウマを抱える中で膨らんできた復讐心が、底深い心の闇となってバットマンを生み出す原動力となっている。そのバットマンの本性を、今回は敵のリドラ―によって暴かれていくのだが、そういう点では、原作のアメコミとは一線を画し、犯人捜しのサスペンス要素も取り入れた、新たな『バットマン』と言える。
ストーリーは、ゴッサムシティーに蔓延る大物マフィアのボスを検挙した、市長、警察署長、検事の連続殺人事件が発生するところから始まる。その犯人として名乗り出たのが、「世の中の嘘を暴く」と豪語したリドラ―。犯行現場に、なぞなぞを残し、警察やバットマンを挑発していく。リドラ―を追う中で、執事のアルフレットまでもが襲われ、これまで明かされなかった、ブルースの両親の死の真相と父親の罪が明らかになっていく。そして、リドラ―の仕掛けた最後の謎に、バットマンが挑んでいく。
本作では、両親の復讐心だけでを支えに生きてきたブルースが、両親の死の真相を知る中で、人を想う心が芽生えていくのだが、その最たるところが、キャット・ウーマンこと、セリーナとのピュアな美しいラブ・スリー。ブルースの氷の様な心を、セリーナが解きほぐしていく。
また、リドラ―役のポール・ダノは、リアリティーのある猟奇的なサイコパスの雰囲気を醸し出している。そこは、『ジョーカー』の経緯と同様に、どこにでもいる一人の男が、リドラ―となるまでの生い立ちや屈折した考えや苦悩までも、しっかりと描くことで、インパクトあるキャラクターに仕上げている。
そして、バットマンを演じたのが、ロバート・パティンソン。パティンソンは、これまで『ハリーポッター』では、優等生役のセドリックを、『トゥイライト』では、美しきヴァンパイアを演じた。そのことが、これまでとは、ひと味もふた味も違う、暗黒面に落ちそうな殺気を含んだダークヒーローを演じるのに、活かされていると感じた。
3時間の超大作で、最初は、ストーリーの布石が読めない部分もあったが、ある時点からスッキリし、ラストシーンまで観る者を飽きさせない、展開となっていた。