劇場公開日 2022年3月11日

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「“人間”BATMANの復活」THE BATMAN ザ・バットマン h.h.atsuさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0“人間”BATMANの復活

2022年3月12日
iPhoneアプリから投稿

ノーラン版やスナイダー版のバットマンは、ガジェットも強力で並み居るヴィランを圧倒し、スーパマンとも対峙できうるほどの力を持つ。見様によっては彼らが表現したバットマンはポストヒューマン的な存在であったといえる。

対して、マット・リーヴス監督が表現したバットマンは、とても人間くさい存在だ。
まず空は飛べない(コウモリなのに)。
無感情を装っているが、内実は不安と苦悩に苛まれている。
自ら「復讐者」と名乗り、怒りがその力の原動力となっている点は敵役のリドラーとシンクロするものがある。2人の違いは、解釈と表現の違い程度に過ぎない。

ロバート・パティンソン演じるブルースは、バットマンとしての活躍が街の犯罪浄化に貢献できていないことに疲弊している。本作のクライマックスの大惨事も結局は防ぐことが出来なかった(アベンジャーズやジャスティス・リーグなら一発逆転できただろうが、現実はそうはいかない)。

社会に巣食う「悪」の存在は現実の社会も同じで、トップを引きずり降ろしても、その座に誰かが座るまで壮絶な競争が繰り広げられる。正義の実践者ひとりができることには限界がある。取りうる選択肢はふたつ。そこに絶望を感じて行動を止めるか、大河に一滴を注ぎこむ行為を諦めないか。

ノーラン監督三部作との比較がされるのは避けられないと思うが、ここは映画監督という調理人が「バットマン」という素材をどう調理し皿に盛り付けるか、の表現の違いでしかない。当然、観る人によって好き嫌いはあるのも映画鑑賞ならではのこと。

atsushi