劇場公開日 2022年3月11日

  • 予告編を見る

「エンタメではなく、しかし静かに胸が熱くなる。」THE BATMAN ザ・バットマン つかまんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0エンタメではなく、しかし静かに胸が熱くなる。

2022年3月12日
iPhoneアプリから投稿

大学生の時に『DARK KNIGHT』を鑑賞したとき、とてつもない衝撃を受けた。

ノーランの選ぶ構図やカットの気持ちよさ、音楽や音響の良質さと絶妙なタイミング、そして何より演じる俳優たちの凄まじい演技(特にヒースレジャーのジョーカーが、というのは言うまでもない。)と、観客をも苦しめる決断を迫るシナリオ展開。

非の打ち所がなく、ヒーロー映画の枠を完全に逸脱していながら、上質なエンターテイメントであり、かつ人間の芯に迫る映画だったと思う。

さて、今回の『THE BATMAN』である。
先のノーランが作り上げたバットマンと比較しても、エンターテイメント性を大きく排し、より人間の根幹に迫る内容だったと個人的には感じている。

パティンソン演じる「ブルースウェイン/バットマン」の、正しさへの想いや願い、そしてそれとは裏腹に、その存在が世界へ与え続ける影響が、思わぬ形でゴッサムシティを襲い掛かる。
正しさとは何か?人の在るべき姿とは何か?そもそも誰かのために何かをすべきなのか?など道徳的・倫理的な問いかけにもつながって、ずしりと重くのしかかる作品だと感じた。

それらの答えは、おそらく見る人それぞれで異なるだろう。私自身、今作について、何がどうあれば良かったのか?ということに、明確な答えは出せないでいる。
それだけ、深い問いかけを投げかける作品だったとも言えるだろう。

しかし、ただ一つ私が印象深く、その姿に惹かれたのは、どれだけ辛い現実に打ちひしがれても、前を向き、戦い続けようとするバットマンの姿だった。

混迷の中で、絶望の中で、悲しみの中で、それでも歩き続け、戦い続けようとする。
その姿こそ、今作が見せたかったものかもしれない。

どれだけ打ちのめされようとも、泥臭くて青臭くて人間臭い。そんなブルースウェイン/バットマンに、胸が熱くさせられる作品だった。

つかまん