「傑作」THE BATMAN ザ・バットマン サムライさんの映画レビュー(感想・評価)
傑作
非常に面白かった。3時間があっという間だった。
バットマンというスーパーヒーローを主人公にしているが、いわゆるスーパーヒーロー映画では無い。にも関わらず確かにこの映画の主人公は「バットマン」になっている。ちょっと実用性のある頑丈なコスプレをしている一般人というような描かれ方をしているのに、確かにヒーローなのだ。この絶妙なバランスで様々なジャンルを横断し、サスペンスとアクションとヒューマンドラマを合体させた最もリアリティの高いバットマンを完成させているように感じる。
バットマンという虚像を通して、多くを語らないブルース・ウェインという人物を浮き彫りにしていく脚本と演出も素晴らしい
そしてブルース・ウェインが浮き彫りにされていくきっかけとして、リドラーという劇場型犯罪者による事件の解決が行われる。このリドラーとの推理対決もとても見応えがあり、探偵ものとしても完成されている。非常に自然的に探偵=バットマンの内情が明かされていく。それを暴いていくリドラーもまた、ゴッサムシティと密接に関わった人物であった。全ては繋がっていて、その謎がどんどん紐解かれていく中で、人物が浮き彫りにされていく。改めて巧みな脚本と演出である。
予告にもあるペンギンとのカーチェイスシーンは凄い。
車の前方やタイヤ横に取り付けたカメラで、あんなにカッコ良い映像が撮れるのかと驚いた。見入った。編集がとても上手いなと思った。
カメラも素晴らしい。一人称視点や逆さに撮られる映像など、カメラの画角と動きが、人物の目線や感覚に近い場所を捉えている。これがこの映画にある種の生々しさを与えている。リアリティを底上げしている。「面白そうだか!」という感覚で使ってしまいそうなカメラの技術を巧みに操り、作品の一部分としてとても上手く活用している。本当にすごい。
アルフレッドとのあるシーンで思わず泣いてしまったが、それが全てだ。わずか2時間程度で、そのシーンのセリフや演技で思わず彼らのことを思い、さらに自分に重ねて泣けてしまう。これはこの作品が素晴らしい完成度でザバットマンの世界に私を引き込んだ他ならぬ証拠である。