「新たな現実を取り戻す二人の愛の物語。」マトリックス レザレクションズ 林檎さんの映画レビュー(感想・評価)
新たな現実を取り戻す二人の愛の物語。
過去作ほどの衝撃は感じられなく今一つでした。
三部作で丸く収まっていたものを無理やり引っ張り出してきてしまったな、というのが印象です。作中のマトリックス4制作の会議も皮肉たっぷりに聞こえてしまうし、なんで作ったんだろう。ただ作るからにはスタッフ、役者みんな全力なんだろうけど、どうしても楽しかった!好き!とはならなかったです。
世界がレイヤード(荒廃した現実と仮想世界)する設定が物語の理解を難しくさせているし、まぁこれは以前からですけど、前作までで言うとアーキテクト、今回はアナリスト、とその仮想世界での管理者のような存在がいて管理者ぜんとしているのも、情報技術に疎かったり苦手にしている人達には届きずらく理解しづらい世界・設定だと思います。逆にそれが好きな人にはぶっ刺さる訳なのですけども。ちなみに私はITエンジニアなのでこの世界観大好きです。
過去作のように仮想世界が嘘で現実世界が本当で、その本当な世界で生きていくことが正義!みたいなことではないにせよ、今作ラストで覚醒した(仮想世界で空も飛べるようになった)二人は仮想世界を創りなおすみたいなことを示唆しています。なので恐らく仮想世界を維持しつつ現実世界でも二人は生きていくんでしょう。ただポッドに繋がれた人々はどうなっちゃうのでしょうか。君たちは仮想世界で生きていきなさいってことなのかな。でも解放したらしたで様々な問題(食料、住居など)が起こるだろうし、全員解放ということではなさそうです。
結局、二人の愛だけが成就したような終わり方で、ネオを助け出したバッグスがやりたかった事とは違うような気がします。救世主って何してくれたの?という疑問が残ってそのまま終わってしまいました。まぁ今回は救世主ではなく一人の好きな女を助けに行く話だったと言われればああそうかと納得する感じです。
映画の続編って難しいです。そのシリーズのファンにとっても、どうしても過去作と比較する部分はあるだろうし、そして好きな作品であればあるだけ、その高いハードルを越えるのはとても難しいです。
制作側も安定した収入が見込める作品を作りたい思いもあるだろうし、当たるかどうか分からないオリジナル作品よりもある程度売上が見込める二作目、三作目、ということで。はっきり言ってしまうとつまらなかったです。もう一度三部作を見た方が充実した時間がもてたな、というのが率直な感想です。