「「夢」と「現実」」マトリックス レザレクションズ Masuzohさんの映画レビュー(感想・評価)
「夢」と「現実」
マトリックス
1999年に公開されたSFアクション映画
真実を知らず仮想世界マトリックスで人生を送る
主人公が現実世界の救世主であることを知らされ
成長して行く過程を描いており
CGや撮影技術において「驚異の映像革命」
と評されその後の映像作品に与えた影響は計り知れない
製作にあたっては攻殻機動隊等日本の漫画アニメに
影響を受けている
公開当時は大学生くらいで夢中になったものです
当時のブームは相当なもんで2chでは
エージェント・スミスのコスプレをした
大規模OFF会なんてのも行われてました
何よりすごいのは当時まだネット社会にも
なっていなかった時期に仮想空間やコンピューター
のアーキテクチャーやアップデートといった概念
を取り込んだ世界観を作り上げたこと
人によってはちんぷんかんぷんだったでしょうが
TVゲーム世代はすんなり受け入れられたと
思います
ただこのシリーズ3部作のうち最も評価が
高かったのは「1」で続編の「リローデッド」
まではその世界観と映像革命っぷりが溢れていた
のですが「レボリューションズ」で急に普通の映画
になってしまい尻すぼみで終わってしまった
印象も強かったのです
作り手として話を終わらせる方向に舵を切った結果
作品の特色が抜け落ちてしまったのは案外と言うか
残念な感じがしました
で今回のまさかの続篇
「今更続編なんて絶対コケるからやめておけ」
というファンの声が言うまでも無く聞こえてきました
ネオもトリニティも死んだ(っぽい)
あの終わり方からどうやって話を興すのか
ウォシャウスキー監督は毎年のように続編を
やれやれと「権利者(ワーナー)」から
言われていたようです
リメイクか?続編か?
この映画はそのへんのやり取りをそのまま
前半部分にもって来ています
前作までの「マトリックス・トリロジー」は
トーマス・アンダーソンが1999年に開発した
大ヒットTVゲームで続編を会社から要請されており
本人が拒否しても他の人にやらせるつもりでいる
という図式はそうきたか~と思わせられます
トーマスは悩みに悩んで飛び降り自殺未遂
なども起こしますがそのたび死んではおらず
悪夢のような日々にさいなまれるところで
「あなたに真実を気付かされた」と言う
バッグスと名乗る女性に導かれて
今いる世界の真実に近づいていく事になります
そして後半はトーマスをそのような状況下に
置いて新バージョンのマトリックスで
管理していた「アナリスト」から
最愛の人を取り戻す愛のストーリーになります
前作までから「新バージョン」になった
マトリックスの世界
現実も17年経過して現実の世の中は
すっかり変わりました
ネット社会SNS社会に代わり
処理しきれない情報とゴシップや不祥事に
食いつき日々炎上が起こる毎日
管理社会型だった前のマトリックスと違い
感情をコントロールして支配しているという
アナリストからは現代社会の比喩を感じます
マトリックスの社会=現実の社会ですから
会ったこともない顔も知らない人間に
怒りを燃やしてネットで批判する人々の
現実とは何かという警鐘も感じます
この作品に関しても
ファンや映画会社が望む続編としては
あからさまに低予算がまるわかり
スミスやモーフィアスの配役が変わっており
キアヌも続編製作中らしいジョン・ウィックと
風貌をまるで変える気がありません
旧キャストも同窓会然としています
でもこれもファンや映画会社が望む
驚異の映像に溢れたマトリックスに持った「夢」
に対し「現実」という事ですよね
「夢」ばかり押し付けられても作り手には
予算や製作期間旧キャストのモチベーションからは
こんな「現実」しか出てきませんよという
非常に皮肉めいた作品だと思います
つまりファンからは期待したような作品ではありません
この作品のために初見で旧三部作を観た人からすれば
この内容は拍子抜けもいいとこでしょう
自分も他の人にもれず好きだったけど3作目でコケた
やつやなぁと言う印象で全く期待しないで観に行って
まさかここまでメタな内容とは思わなかったので
面喰いましたが作り手の言いたいことは
受け取れた気がします
アクションもしょぼいし絵的は褒められず
ファンが望まないものを投げつけた点においては
どうかと思いますがが嫌いになれないとこある作品でした
皆の思い出のマトリックスはアップデートされなくて
いいのかもしれません
続編やリブートものばかりありがたがって
客が入る風潮もいつまでも続かないと思います
新しいものに挑戦しなきゃいけないんじゃ
ないでしょうかね
「私の最高傑作?次回作だよ!」
チャップリンの言葉です