「いつまでもケンカして仲良し」トムとジェリー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
いつまでもケンカして仲良し
『ゴジラvsコング』がド派手な宿命の対決を繰り広げたが、こちらも。
執念深く、何処までも追い掛け回すネコ。
それをひらりとかわす、ズル賢い頭のネズミ。
最小対決? 80年以上も続く長寿対決!
そう、トムとジェリー!
いや~懐かしい。
その昔、夕方の再放送なんかでよく見てたよ。
まさかこの歳になって、今になって、映画で新作を観れるとは…。
で、この映画の作りが面白い。
アニメーション映画…ではない。
3Dアニメ…ではない。
実写…でもない。
実写と2Dの融合。
舞台や登場人物は実写のこの世界に、トムとジェリーは2Dで表現。トムジェリのみならず、動物たちは皆2Dで。強面ブルドックのスパイクなんてのもそういやいたね~。
『トムとジェリー』の忘れてはならないお約束と面白味は、実写では表現が難しいドタバタ・アクション、コミカルな動き、過激なギャグ。
それらを2Dで描く事によって、オリジナルの醍醐味を再現。
また、幾らハリウッドの技術が進もうとも、『ライオン・キング』のようなリアルな“超実写”トムジェリなんて絶対見たくない。
3Dアニメのトムジェリも見たくない。
やはり、トムジェリはこのスタイルで。
正直、最初こそは違和感あったが、それも徐々に感じなくなってくる。
現代版『ロジャー・ラビット』な感じ。
『トムとジェリー』は約80年の間に数え切れないほどの作品が作られてきたが、そのほとんどがアニメ用の短編エピソード。たまに長篇OVA作品があるくらい。
今回せっかくの大々的な長篇映画作品という事で、ただアニメ的なドタバタではなく、ストーリーも展開する。
列車に乗ってNYマンハッタンにやって来たトム。
同じく、ジェリーもマンハッタンで物件を探していた。
早速ふたりは、セントラルパークで一悶着。…って言うか、キーボードを弾くネコも珍しいどころかスゲーと思うけど。
ふたりのドタバタに巻き込まれ、バイトを失った若い女性ケイラは、ひょんな事から経歴を詐称して、一流ホテルの職に就く。
ホテルでは間もなく世界中が注目するセレブカップルの結婚式が控えていた。
そのホテルにジェリーが住み付き、ケイラは退治を任されるもてんてこ舞い。
そこでトムを臨時スタッフとして雇うも、ふたりのケンカのせいで結婚式が台無しに…。
トムとジェリー、そしてケイラ、大ピンチ! さあ、どうする…!?
前述もしたが、ふたりのドタバタ劇はたっぷり元気に健在。ホテル内で、NY中を駆け巡って。
一切言葉は喋らず、ジェスチャーやパントマイムのような動きが、老若男女、万国共通に伝わる面白さ。時折トムが発する悲鳴が爆笑ポイント。
いっつもケンカばかり。
いったん仲良くなったかと思うと、またケンカ。
でも、ピンチの時には本当に力を合わせ、最高のバディになる…。
それもあって、トムとジェリー! 正直自分はそれほど詳しくはないが、ファンなら堪らないオマージュも盛り込まれているだろう。
だけど自分も、昔見てた記憶が蘇ってきた。
ネコとネズミでは圧倒的にネコの方が強い。
食べる側と食べられる側。
それを逆にしたのが、トムとジェリー。即ち、
コテンパにやられるネコと余裕のジェリー。その勝敗率、実に1:9以上だとか!
おそらく世間的には、ちっちゃくて可愛いジェリーの方が人気だろう。
でも私は、ドジだけど奮闘のトムの方がどうしても好き。
何だか昔から、ジェリーが小憎たらしくて(^^;
キャラやドタバタ明るさ、懐かしさは楽しい。
が、話や作品自体の出来はかなり子供向け。
子供は楽しく笑うだろう。トムジェリに馴染みある大人には嬉しい。それ以外には…、退屈かもしれない。
ドタバタはただ騒々しいだけ。
ツッコミ所も多々。NYの一流ホテルなのに、ホテルマンは無能過ぎじゃないかい…?
派手な事を望む新郎と、平凡を望む新婦。
失敗、迷惑…。
反省、正直に…。
その為に自分に何が出来るか。
一応それなりに良き事は描かれているが、ファミリー向け映画のお決まりハッピーエンドの域を出ていない。
強いて言うなら、クロエ・グレース・モレッツ。
飛びっ切りの可愛さだったね~!
トム並みの行動力とジェリー並みの頭の回転。
もし本作に彼女が出てなかったと思うと…。
何だか最後は、トムジェリじゃなくクロエの魅力になっちゃったね。
一番のライバルで、一番の仲良し。
何十年ぶりか分からないけど、久し振りにふたりの追い掛けっこを見れてやっぱり楽しかった。
著作権の問題かもしれないけど、日本公開でなら特別に、エンディングにあの歌を流して欲しかったな。
♪仲良くケンカしな
これからも。いつまでも。