「「トムとジェリー」が必要?」トムとジェリー キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
「トムとジェリー」が必要?
もちろんレギュラー放送当時、私も学校が終わった平日の夕方は「トムとジェリー」で楽しんだ世代なので、クロエ好きも相まって早速劇場へ赴いた。
ただ、内容は…
※後半、少しネタバレします。
まず人間と動物の関係。
冒頭でトムがセントラルパークで「盲目でキーボードを弾くネコ」としてストリート演奏でお客を集めていると、ジェリーが邪魔して目が見えることがバレる。で、お客は「ただネコが弾いてるだけだった」と離れていく。
つまり「動物が人間と同じ能力を持つ世界」なんだ…思っていると、作中に登場する動物達は基本的にトムとジェリー以外、人間の「愛玩動物」「飼育されるモノ」でしかない。
どちらかに特殊能力があるって感じでもないので、人間と動物の立ち位置がそもそも飲み込みにくい。
で、TVシリーズとの一番の違いは、「人間がストーリーを作っていく」という点。
まあいろいろあるんだけど、結局結婚式場がメチャメチャになるのは、登場するキャラクター全員がそうなるように足を引っ張り合っている結果なので、観客が同情できるのは新婦にだけ。基本的には「あーあー」と呆れて眺めている感じ。
で、それを最後無理やり応急処置みたいにフォローして「ハッピーエンド」とはならないでしょ?と思ってしまう。
何しろ被害者が多すぎる。
トムとジェリーも結局あの「追いかけっこ」をネタに使われただけでメインストーリーの中では大した活躍はしてないし、その追いかけっこ演出も昔のTV演出の焼き直し程度。あのピタゴラ装置みたいなのもダラダラと長いだけで、物語的な意味は無い。
振り返ると、あの要所要所で流れるヒップホップが聞かせたい映画なんじゃないか、と。
音楽は確かにカッコいい。
結論としては、別にトムとジェリーがいなくても…いや、むしろいない方がスッキリ飲み込める話。
案の定、隣の小学生以下のお子さんは開始30分でグズり出して退場。
いや、あの子の気持ちがよく分かるよ。
これ「トムとジェリー」じゃないじゃん、と。
私は登場キャラクターの誰にも共感も感情移入もできなかった。
クロエがまた随分大人っぽくなった(いつまでもキック・アスを思い出している)ことだけを確認して劇場を後にした。