ドリームプランのレビュー・感想・評価
全207件中、41~60件目を表示
ウィリアムズ姉妹の父
ウイリアムズ姉妹が登場したときは、誰も勝てないような気がしたほど、衝撃的だった。
一家は黒人が多く住んでいる地域に住んでいるが、父(ウィル・スミス)は5人の娘たちの才能を伸ばすことに人生をかけていた。
ヴィーナスとセリーナには天性の才能を感じ、いいコーチを見つけようと頑張る。
また、燃え尽き症候群を杞憂、テニス以外も手抜きなしに教えた。
スーパースターを育てるのは強い意志が必要みたい。
父親のエゴ
個人的にはスポーツには余り興味がないし、女子テニスは伊達公子で止まっている。
ウィリアムズ姉妹も名前は知っている程度でそれだから観たいと思ったわけではない。
マイノリティのマンディを乗り越えてアメリカンドリームを実現した、
そんな高揚感のあるストーリーを予告編からも期待していた。
だが、期待は大いに裏切られた。
こういう父親、スポ少なんかでもよく見かけるよね。
子供を叱る親にダメ出ししていたけれど五十歩百歩。
天上天下唯我独尊、手を差し伸べた人の好意も平気で踏みにじる。
観ていて胸くそ悪かった。
むしろヒロインとして姉妹中心に描き、
それを支える母、障壁となる父であるべきだったのでは?
観終えてそんな気がした。
子育て論
成功の裏話として充実の内容で、144分間という尺ながら終始楽しめた。父親の論をかなり丁寧に描いているし、その論には同意できる点もある。幼いままに社会に晒される危うさは事実であるし、この点についてはあらゆる分野で改善されたようにも思う。
とはいえ、親は子の成長をマネジメントする立場にはない訳で、基本的な方針には賛同しえない点も多い。2人は成功し、父の貢献は大きいとしても、果たせない子供も多くいるのが実情で、それをしてプランが悪いだとか金づるだとか言える訳ではない。逆効果も容易に起こりえるところ。夫婦喧嘩のシーンに集約されているが、結局は御せないし、子供がすることに過ぎない。
ジョンバーンサルだとは最後まで気付かなかった。これは名扮装。
本当にあったことなのだ。リアルなテニスシーンと心に響く家族の物語。
二人の娘をトッププロのテニスプレイヤーに育て上げるプランを実行・実現した父親、そして母親。家族の物語。しかも、全くテニス経験のない夫婦がそれを成し遂げる。
きちんと学校、勉強もさせ、宗教心を持ち、感謝を忘れない家族。人種差別を経験し、娘たちを守る父親。あまりにも現実離れのプランに、テニス指導者からは全く相手にされず。近所からは子どもへの対応を厳しく批判される。画一的かつ型にはまった学校教育を大きくかけ離れた、父親・母親の教育プランと実践。親が子を守る。プランが全て、うまくいかないのはプランがダメだから。
この映画の凄いところは、描かれていることが「本当に起こったこと」なのである。
ビーナスとセリーナの姉で製作総指揮のイシャ・プライスは、「作品の信憑性を確保するため、つまり私たちが何者か、確実に真実を映し出すために私が必ず参加するという条件を提示したの。」とある。
スポーツ伝記映画でこれほどまでリアルに再現している映画があるのだろうか。
徹底的にビーナス役のサナイヤ・シドニー、セリーナ役のデミ・シングルトンをテニスプレーヤーとして訓練し、代役も配置し、テニスシーンは「本物」となった。この子役たちは撮影前テニスの経験がなかったという。父親のウィル・スミス、母親のアーンジャニュー・エリスの配役もこれ以外にはないのではないか。
プランと実践、家族愛。とても心に響いた作品であった。
2022 126本目
父ウイル・スミス
アカデミー賞でウィルスミスがクリスロックをビンタした件で、クリスロック支持の米に対し日本人はウィルスミス支持が多数派だった。
日本ではウィルスミスの行動に、か弱い女を守った男らしさ──男気を感じた人が多かったからだ。
ひろゆきがこの現象を解説していた。
要約すると──女が弱いから男が守らなければいけないという日本社会にある定論は一種の男女差別であり、また基本的に気分を害されたことで暴力にうったえたウィルスミスは短慮だった──とした。
日本では男性が女性を守るという構図が一般化している。だが男女平等ならば、侮辱されたスミス夫人自身が出てって仕返しをするのが合理だ。
女の人が劣っているから(保護対象だから)攻撃されたら男が代わりに仕返しをするのが日本では男女差別にならず美談になる。と、ひろゆきは批判したのだった。
たしかにあの事件の直後はウィルスミスの行動を「かっこいい」と言う輩が多かった。多かったというより溢れかえっていた。
かれの行動を「かっこいい」と評した人たちはひろゆきの言う男女差別主義者かもしれない。ただしそれが差別的であることにまったく気づいていないだろう。
おそらく「かっこいい」と支持した理由は自己アピールのようなものだ。ネット上で人の行動/言動を「かっこいい」と言うのは「それをかっこいいと見なせるかっこいいわたし」という意味。かわいいとおなじである。
わたしもスミス支持だが「かっこいい」とは(さらさら)思わなかった。それどころかウィルスミスのビンタは暴力ですらなかった。デモンストレーションだった。
ウィルスミスという人はカメラがとらえていないときでも劇的でエモーショナルな態度をとるタイプの人だ。かれの映画をいくつか見たらなんとなくそれがわかる。それはなんとなくだがこのリテラシーにはじぶんなりの自負がある。
つねに自己演出するタイプであり、かれの演技がうったえてくるのはそのためだ。アイアムレジェンドや幸せのちからや7つの贈り物やCollateral Beautyみたいな深い哀しみを背負った役はかれのように過剰な自意識がなければ表現できなかった。
したがってアカデミー賞でクリスロックがスミスの細君であるジェイダピンケットを侮辱したときも、かれにとってそれは「ワンシーン」だった。
かんぜんに外したが、スミスはおそらく演じただけだ。と、わたしは思っている。
スミスは髪の生えない病を患っている妻をGIジェーンだと揶揄された。だから、一矢報いる必要が生じた。リアクションしないわけにはいかなかった。娘のウィローだって母親に合わせて頭を丸刈りにしている。トレイ、ジェイデン、ウィローを含む家族全体の問題だ。で、とりあえず出ていってビンタした。ぜんぜん絵にならなかったけれどスミスはやらざるを得なかった。夫としてだけじゃなく父として見せなきゃいけなかった。
演技を商売にしている父のデモンストレーションだった。
けっきょくこの件で、言われなくてもいいことを言われ、やらなくてもいいことをやらざるを得なかったウィルスミスはかんぜんな被害者だった。しかも批判に晒され二次三次の被弾も浴び続けている。笑って話せるほど時間が経っても、かならずネタにされるだろう。
まったくどこにクリスロックを擁護する要素があるのかわからない。
よって個人的にはこの事件にたいする米日の温度差も、暴力うんぬんも、ひろゆきの概説も関係ない話だった。スミスは「ワンシーン」を演じただけだった。
この映画にもやはりスミスの自己演出のうまさがあらわれている。
哀しさを背負った気配がじょうずで、その哀しみの中には激しい感情が隠されている。言うなれば、激しい感情をおもてに出さずに、哀しみで表現する異能がウィルスミスにはある。
本編はこんなセリフではじまる。
『おれが育ったルイジアナではKKKから逃げるのに忙しくテニスをやる暇人は皆無だった、でも何かにきょうみを持つとおれは研究する、仕組みや世界一の人びとのやり方など、そうやって娘たちにも教えたんだ』
ウィリアムズ家はどん底のゲットーで生きている。そこでは一歩踏み外すと与太者になるか与太者に巻かれるしかない。
父リチャード(ウィルスミス)は黒人が生き抜くことの困難を知っている。ましてや成功をめざすならば、よっぽど抜け目なく渡らなきゃならない。その依怙地が、かれのドリームプランに強引や独善となってあらわれる。
だがリチャードは大切なことをわかっていた。
ビーナスがジュニアで優勝したとき、リチャードが娘たちにシンデレラを見せて、こう言った。
「だいじなのは彼女の謙虚さだ、人からひどく扱われても、見下されても、彼女は冷静で清らかな心のまま、謙虚だった。この先、試合で誰かと対戦するだろうが、謙虚になれないなら試合はなしだ」
ビーナスとセリーナ、ウィリアムズ家の物語にはシンデレラ曲線がある。
それを成し得たのは父リチャードがスポーツマンシップを理解していたからに他ならない。育成の初期段階で謙虚を教えるなら、たとえテニスプレイヤーで成功しなくとも、立身するだろう。そもそもかれのプランは忍耐/家族/教育の「人づくり」が前提になっていた。その賢さがこの映画にはあった。
(わが国の女子テニスプレイヤーのあのひとと比べたい欲求を抑えました)
また、父リチャードの人物像はスミスの実子トレイ/ジェイデン/ウィローにとって、ときどき妙に頑迷で熱くなりもする父ウィルスミスそのものではなかっただろうか。
King Richardはウィルスミスにとってこれ以上ないほどの嵌まり役だったと思う。
ただ、できればもうすこし尺を縮めたかった。
看板に偽りアリ?
まず『ドリームプラン』という邦題に物申したい。何故なら、本作は、娘たちをトップ・プレーヤーにするための「プラン」に焦点をあわせた物語ではなく、『King Richard』という原題が示すとおり、まさに、あのクセの強いオヤジの生き方にフォーカスした物語だからです。ただし原題をそのまま邦題にしてもお客さんは入らないだろう。それはわかります。でも『ドリームプラン』というタイトルは、映画の内容からちょっと乖離しているんじゃないですか? と配給会社(あるいは邦題を付けた人)に訴えたい。
ま、それはともかく、リチャードは本当に強烈な個性のオヤジですね。激しすぎる自己主張、押しの強さ、独善的な態度。常識では考えられないような振る舞いも少なくない。そしてあまりの無礼さに僕も何度も引いてしまいました。よくそれで娘たちに「謙虚さ」を学べとか言えるな、とツッコミたくなった。日本でなら尚更こんな人には風当たりがキツイでしょうね。日本ではこんな人は生きていけないのではないのでしょうか。というか、そもそも協調や遠慮を美徳とするわが国では、リチャードのような人は現れないのかもしれません(某ボクシング三兄弟の父親のことをちょっと思い出しましたが)。
リチャードの成功への執念と、娘たちを頂点へ導くための情熱の裏側にあるものは、人種差別から来る、強烈なコンプレックスや被害者意識です。繰り返しになりますが、この映画が描きたかったのは、やはり成功のための「プラン」などではなく、リチャードという強い個性を持った男の生き方なのです。そして、彼のパーソナリティーと生き方を通して、その背後にある、人種差別という社会問題や、そこから生じる貧富の差、またそういう社会で生きざるを得なかった人間の姿などをあぶり出すことがこの作品の本旨なのだと僕はとらえています。アメリカにおける人種問題は、日本人の我々には容易には理解し得ないところがありますが、いろいろと考えさせられました。
というわけで、最後に全体を通しての作品の感想を述べます。
何しろネタ(素材)は最高、「人生大逆転」の実話に基づいた話だから面白くて当たり前ですが、映画としてはとくにこれといった工夫や表現もなく、フツーの出来だと思いました。上映時間も、もう少し短くてもよかったのではないでしょうか。
脇を固めたすべてのキャストも素晴らしい
歴史的事件の発端となった作品もまた素晴らしい哉
女子テニス界で一時代を築いたビーナス、セリーナ・ウィリアムス姉妹のお父さんの話です。お父さんはちょっと変わり者。有名コーチの教え方が自分の考えと異なるときには臆せずに堂々と主張し、ジュニアで活躍してからプロに転向するのが王道であっても、信念に基づいてジュニアの試合には出場させない。こうしたアクの強い人は成功すると物語になるが、身近で一緒に働く人はストレスがあるだろう。Steve Jobsさんなども同じ感じだと思う。
お父さんはエホバの証人の信者であるように描かれていました。真偽はわかりませんが、恐らく本当なのでしょう。その教えの影響なのか、人としての正しいふるまいを熱意をもって教えていたのが印象的でした。これがきっかけになってエホバの証人の信者が増えたらそれは微妙ですが。
セリーナの話も描いて欲しいです。活躍する姉の陰で抱えたストレスもあったでしょう。それをはねのけて伝説になったのはまさしく物語。アカデミー賞授賞式では歴史に残る事件を起こしたウィル・スミスですが、主演男優賞にふさわしい演技でした。
2本立て2本目。すごい親もいたもんだ、なかなかの衝撃。 納得できる...
いいスナップのビンタ
感動しかない
アカデミー賞授賞式のハプニングで、ある意味映画史に名を残すことになった一作。
念願のアカデミー賞を獲得したにもかかわらず、自らの振る舞いで手放しに喜べなくなってしまったものの、本作のウィル・スミスの演技そのものは最優秀男優に相応しい熱演でした。
稀代のテニスプレイヤー姉妹を育て上げた手腕を持ちつつも、しばしば配偶者にも暴力を振るうという(映画では直接的な描写はないけど)、家庭人としては問題を抱えてきた父親、という硬軟両面で説得力ある演技を要求される役どころでしたが、ウィル・スミスは「華」のある自らの俳優としての存在感を封じて、「キング・リチャード(原題)」そのものを演じ切りました。リチャードが「ドリームプラン」に何を書いたのかを詳らかにするよりも、実際の指導や試合結果でその内容を理解させるという演出の手際の良さのおかげで、作品全体の疾走感が最後まで衰えません。何らかの文書が作品の要点となる場合、そこに「書かれていること」をナレーションなどでいちいち説明する演出方法を採用する作品も結構ありますが、丁寧な描写がしばしば演出のもたつきをもたらしてしまいます。本作ではそのような場面はほぼ見られませんでした。
本作を観ると、リチャードは周囲の無理解を意に介さず、自分の信念を貫き、結果的に大きな成功を収めた人物であるかのように描かれますが、現実の彼はその後家族と離別、本作の製作についてもほとんどリチャード本人の意思確認をせず進められたそうで…。加えて、作品の父親像の構築に、セリーナ&ビーナスのウィリアムズ姉妹をはじめとした親族の意見が大きく採り上げられているというところも何だか複雑な気分になります。
それにしても、そのリチャード本人に「暴力は良くないね」って言われるウィル・スミス。彼の立つ瀬が…。
成功したから良かったね。
映画人は 映画の人に。
全207件中、41~60件目を表示