ドリームプランのレビュー・感想・評価
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本当にあったことなのだ。リアルなテニスシーンと心に響く家族の物語。
二人の娘をトッププロのテニスプレイヤーに育て上げるプランを実行・実現した父親、そして母親。家族の物語。しかも、全くテニス経験のない夫婦がそれを成し遂げる。
きちんと学校、勉強もさせ、宗教心を持ち、感謝を忘れない家族。人種差別を経験し、娘たちを守る父親。あまりにも現実離れのプランに、テニス指導者からは全く相手にされず。近所からは子どもへの対応を厳しく批判される。画一的かつ型にはまった学校教育を大きくかけ離れた、父親・母親の教育プランと実践。親が子を守る。プランが全て、うまくいかないのはプランがダメだから。
この映画の凄いところは、描かれていることが「本当に起こったこと」なのである。
ビーナスとセリーナの姉で製作総指揮のイシャ・プライスは、「作品の信憑性を確保するため、つまり私たちが何者か、確実に真実を映し出すために私が必ず参加するという条件を提示したの。」とある。
スポーツ伝記映画でこれほどまでリアルに再現している映画があるのだろうか。
徹底的にビーナス役のサナイヤ・シドニー、セリーナ役のデミ・シングルトンをテニスプレーヤーとして訓練し、代役も配置し、テニスシーンは「本物」となった。この子役たちは撮影前テニスの経験がなかったという。父親のウィル・スミス、母親のアーンジャニュー・エリスの配役もこれ以外にはないのではないか。
プランと実践、家族愛。とても心に響いた作品であった。
2022 126本目
見事でした。ウィルはもちろんのこと姉妹を演じた子達も素晴らしかった。テニスには興味がなく名前しか知らなかったがそれでも面白かったです。
それだけにウィルのアカデミーでの事件とても残念です。これからのウィルの作品にも期待します
父ウイル・スミス
アカデミー賞でウィルスミスがクリスロックをビンタした件で、クリスロック支持の米に対し日本人はウィルスミス支持が多数派だった。
日本ではウィルスミスの行動に、か弱い女を守った男らしさ──男気を感じた人が多かったからだ。
ひろゆきがこの現象を解説していた。
要約すると──女が弱いから男が守らなければいけないという日本社会にある定論は一種の男女差別であり、また基本的に気分を害されたことで暴力にうったえたウィルスミスは短慮だった──とした。
日本では男性が女性を守るという構図が一般化している。だが男女平等ならば、侮辱されたスミス夫人自身が出てって仕返しをするのが合理だ。
女の人が劣っているから(保護対象だから)攻撃されたら男が代わりに仕返しをするのが日本では男女差別にならず美談になる。と、ひろゆきは批判したのだった。
たしかにあの事件の直後はウィルスミスの行動を「かっこいい」と言う輩が多かった。多かったというより溢れかえっていた。
かれの行動を「かっこいい」と評した人たちはひろゆきの言う男女差別主義者かもしれない。ただしそれが差別的であることにまったく気づいていないだろう。
おそらく「かっこいい」と支持した理由は自己アピールのようなものだ。ネット上で人の行動/言動を「かっこいい」と言うのは「それをかっこいいと見なせるかっこいいわたし」という意味。かわいいとおなじである。
わたしもスミス支持だが「かっこいい」とは(さらさら)思わなかった。それどころかウィルスミスのビンタは暴力ですらなかった。デモンストレーションだった。
ウィルスミスという人はカメラがとらえていないときでも劇的でエモーショナルな態度をとるタイプの人だ。かれの映画をいくつか見たらなんとなくそれがわかる。それはなんとなくだがこのリテラシーにはじぶんなりの自負がある。
つねに自己演出するタイプであり、かれの演技がうったえてくるのはそのためだ。アイアムレジェンドや幸せのちからや7つの贈り物やCollateral Beautyみたいな深い哀しみを背負った役はかれのように過剰な自意識がなければ表現できなかった。
したがってアカデミー賞でクリスロックがスミスの細君であるジェイダピンケットを侮辱したときも、かれにとってそれは「ワンシーン」だった。
かんぜんに外したが、スミスはおそらく演じただけだ。と、わたしは思っている。
スミスは髪の生えない病を患っている妻をGIジェーンだと揶揄された。だから、一矢報いる必要が生じた。リアクションしないわけにはいかなかった。娘のウィローだって母親に合わせて頭を丸刈りにしている。トレイ、ジェイデン、ウィローを含む家族全体の問題だ。で、とりあえず出ていってビンタした。ぜんぜん絵にならなかったけれどスミスはやらざるを得なかった。夫としてだけじゃなく父として見せなきゃいけなかった。
演技を商売にしている父のデモンストレーションだった。
けっきょくこの件で、言われなくてもいいことを言われ、やらなくてもいいことをやらざるを得なかったウィルスミスはかんぜんな被害者だった。しかも批判に晒され二次三次の被弾も浴び続けている。笑って話せるほど時間が経っても、かならずネタにされるだろう。
まったくどこにクリスロックを擁護する要素があるのかわからない。
よって個人的にはこの事件にたいする米日の温度差も、暴力うんぬんも、ひろゆきの概説も関係ない話だった。スミスは「ワンシーン」を演じただけだった。
この映画にもやはりスミスの自己演出のうまさがあらわれている。
哀しさを背負った気配がじょうずで、その哀しみの中には激しい感情が隠されている。言うなれば、激しい感情をおもてに出さずに、哀しみで表現する異能がウィルスミスにはある。
本編はこんなセリフではじまる。
『おれが育ったルイジアナではKKKから逃げるのに忙しくテニスをやる暇人は皆無だった、でも何かにきょうみを持つとおれは研究する、仕組みや世界一の人びとのやり方など、そうやって娘たちにも教えたんだ』
ウィリアムズ家はどん底のゲットーで生きている。そこでは一歩踏み外すと与太者になるか与太者に巻かれるしかない。
父リチャード(ウィルスミス)は黒人が生き抜くことの困難を知っている。ましてや成功をめざすならば、よっぽど抜け目なく渡らなきゃならない。その依怙地が、かれのドリームプランに強引や独善となってあらわれる。
だがリチャードは大切なことをわかっていた。
ビーナスがジュニアで優勝したとき、リチャードが娘たちにシンデレラを見せて、こう言った。
「だいじなのは彼女の謙虚さだ、人からひどく扱われても、見下されても、彼女は冷静で清らかな心のまま、謙虚だった。この先、試合で誰かと対戦するだろうが、謙虚になれないなら試合はなしだ」
ビーナスとセリーナ、ウィリアムズ家の物語にはシンデレラ曲線がある。
それを成し得たのは父リチャードがスポーツマンシップを理解していたからに他ならない。育成の初期段階で謙虚を教えるなら、たとえテニスプレイヤーで成功しなくとも、立身するだろう。そもそもかれのプランは忍耐/家族/教育の「人づくり」が前提になっていた。その賢さがこの映画にはあった。
(わが国の女子テニスプレイヤーのあのひとと比べたい欲求を抑えました)
また、父リチャードの人物像はスミスの実子トレイ/ジェイデン/ウィローにとって、ときどき妙に頑迷で熱くなりもする父ウィルスミスそのものではなかっただろうか。
King Richardはウィルスミスにとってこれ以上ないほどの嵌まり役だったと思う。
ただ、できればもうすこし尺を縮めたかった。
看板に偽りアリ?
まず『ドリームプラン』という邦題に物申したい。何故なら、本作は、娘たちをトップ・プレーヤーにするための「プラン」に焦点をあわせた物語ではなく、『King Richard』という原題が示すとおり、まさに、あのクセの強いオヤジの生き方にフォーカスした物語だからです。ただし原題をそのまま邦題にしてもお客さんは入らないだろう。それはわかります。でも『ドリームプラン』というタイトルは、映画の内容からちょっと乖離しているんじゃないですか? と配給会社(あるいは邦題を付けた人)に訴えたい。
ま、それはともかく、リチャードは本当に強烈な個性のオヤジですね。激しすぎる自己主張、押しの強さ、独善的な態度。常識では考えられないような振る舞いも少なくない。そしてあまりの無礼さに僕も何度も引いてしまいました。よくそれで娘たちに「謙虚さ」を学べとか言えるな、とツッコミたくなった。日本でなら尚更こんな人には風当たりがキツイでしょうね。日本ではこんな人は生きていけないのではないのでしょうか。というか、そもそも協調や遠慮を美徳とするわが国では、リチャードのような人は現れないのかもしれません(某ボクシング三兄弟の父親のことをちょっと思い出しましたが)。
リチャードの成功への執念と、娘たちを頂点へ導くための情熱の裏側にあるものは、人種差別から来る、強烈なコンプレックスや被害者意識です。繰り返しになりますが、この映画が描きたかったのは、やはり成功のための「プラン」などではなく、リチャードという強い個性を持った男の生き方なのです。そして、彼のパーソナリティーと生き方を通して、その背後にある、人種差別という社会問題や、そこから生じる貧富の差、またそういう社会で生きざるを得なかった人間の姿などをあぶり出すことがこの作品の本旨なのだと僕はとらえています。アメリカにおける人種問題は、日本人の我々には容易には理解し得ないところがありますが、いろいろと考えさせられました。
というわけで、最後に全体を通しての作品の感想を述べます。
何しろネタ(素材)は最高、「人生大逆転」の実話に基づいた話だから面白くて当たり前ですが、映画としてはとくにこれといった工夫や表現もなく、フツーの出来だと思いました。上映時間も、もう少し短くてもよかったのではないでしょうか。
脇を固めたすべてのキャストも素晴らしい
アメリカンドリームを絵に描いたような作品。リメイクされてアカデミー作品賞をとった「コーダあいのうた」も凄く良かったけど、個人的にはこちらのメッセージ的にも心に響いた。主役のウィルスミスも含め、脇を固めたすべてのキャストが絶妙だと思う。ただ実話ながら強いエンタテインメント作品にもなったことがアカデミー作品賞的にはポイントを下げてしまったか。
歴史的事件の発端となった作品もまた素晴らしい哉
女子テニス界で一時代を築いたビーナス、セリーナ・ウィリアムス姉妹のお父さんの話です。お父さんはちょっと変わり者。有名コーチの教え方が自分の考えと異なるときには臆せずに堂々と主張し、ジュニアで活躍してからプロに転向するのが王道であっても、信念に基づいてジュニアの試合には出場させない。こうしたアクの強い人は成功すると物語になるが、身近で一緒に働く人はストレスがあるだろう。Steve Jobsさんなども同じ感じだと思う。
お父さんはエホバの証人の信者であるように描かれていました。真偽はわかりませんが、恐らく本当なのでしょう。その教えの影響なのか、人としての正しいふるまいを熱意をもって教えていたのが印象的でした。これがきっかけになってエホバの証人の信者が増えたらそれは微妙ですが。
セリーナの話も描いて欲しいです。活躍する姉の陰で抱えたストレスもあったでしょう。それをはねのけて伝説になったのはまさしく物語。アカデミー賞授賞式では歴史に残る事件を起こしたウィル・スミスですが、主演男優賞にふさわしい演技でした。
2本立て2本目。すごい親もいたもんだ、なかなかの衝撃。 納得できる...
2本立て2本目。すごい親もいたもんだ、なかなかの衝撃。
納得できるところもあるが、その独善的な言動に驚愕もする。黒人独特の環境ゆえなのか、考えさせられた。
ビンタ事件がとかく注目されているウィルだが、私には彼が演じるこのウィリアムズ姉妹の父の方が事件。
今回はビーナスが中心だったが、なんならセリーナ編も見てみたい気がする。
いいスナップのビンタ
いい父親役に定評のあるウィルスミスが、
なぜリチャードを題材にしたか?
(成功者ではあるが、そんな崇高な人物でもない)
人種差別の底辺から這い上がってアメリカンドリームを実現させたサクセスストーリーにはうってつけだったか。
原題も「キングリチャード」だもんな。
若い頃最初の結婚して5人の子を捨てて、
本作品の2番目妻オラシーンと結婚するも、これも破局、3人目の妻との間に子を成し、この妻とも別れている。まさにキング。
まぁ姉妹のテニス話なので、この辺はバッサリだが。
本編のあともいろいろエピソードがあるので「キングリチャード」とするなら後日談か続編がほしいところ。
感動しかない
全くテニスに詳しくなく、セリーヌとヴィーナスのプレーもみたことがなかったが、映画をみて父の想い、親子の絆に涙がでた。感動のあまり、3日後に2回目を観に行き、また涙。友達、知り合いにもおすすめした!たくさんのひとに見てほしい映画。俳優がみな良かった!
アカデミー賞授賞式のハプニングで、ある意味映画史に名を残すことになった一作。
念願のアカデミー賞を獲得したにもかかわらず、自らの振る舞いで手放しに喜べなくなってしまったものの、本作のウィル・スミスの演技そのものは最優秀男優に相応しい熱演でした。
稀代のテニスプレイヤー姉妹を育て上げた手腕を持ちつつも、しばしば配偶者にも暴力を振るうという(映画では直接的な描写はないけど)、家庭人としては問題を抱えてきた父親、という硬軟両面で説得力ある演技を要求される役どころでしたが、ウィル・スミスは「華」のある自らの俳優としての存在感を封じて、「キング・リチャード(原題)」そのものを演じ切りました。リチャードが「ドリームプラン」に何を書いたのかを詳らかにするよりも、実際の指導や試合結果でその内容を理解させるという演出の手際の良さのおかげで、作品全体の疾走感が最後まで衰えません。何らかの文書が作品の要点となる場合、そこに「書かれていること」をナレーションなどでいちいち説明する演出方法を採用する作品も結構ありますが、丁寧な描写がしばしば演出のもたつきをもたらしてしまいます。本作ではそのような場面はほぼ見られませんでした。
本作を観ると、リチャードは周囲の無理解を意に介さず、自分の信念を貫き、結果的に大きな成功を収めた人物であるかのように描かれますが、現実の彼はその後家族と離別、本作の製作についてもほとんどリチャード本人の意思確認をせず進められたそうで…。加えて、作品の父親像の構築に、セリーナ&ビーナスのウィリアムズ姉妹をはじめとした親族の意見が大きく採り上げられているというところも何だか複雑な気分になります。
それにしても、そのリチャード本人に「暴力は良くないね」って言われるウィル・スミス。彼の立つ瀬が…。
成功したから良かったね。
やはり、差別に打ち勝って、
そこから抜け出すには
あの父のように
クレバーとクレイジーが表裏一体のような信念と強さと
何くそ!さが必要で、
それに答えうる娘たちの身体能力の高さと
心の素直さと、
家族の理解が大きな要因だよなー。
でも、実話だからなー
こんなに あっさりしてないんだろうなー
もっと悲喜交々、波瀾万丈あるんだろうなー
成功したから良かったね。
映画人は 映画の人に。
ウィル・スミスが
先日のアカデミー賞授賞式で、壇上で司会者を思いっ切り平手で殴ったんですよ。
客席で見守る妻の脱毛症をからかわれて。
(中継放送は一時中断に)。
立派じゃないですか、彼。
ウィル・スミスはついに二人の娘をウインブルドンに立たせた父親そのものになっていたんですね。
「Struggle is Beauty in Love」です。
嫌味のないエンターテイメントだった
アカデミー賞授賞式の前日に観た。
㊗️主演男優賞‼︎
ウィル・スミスがビーナスとセリーナのウィリアムズ姉妹を世界最強のテニスプレイヤーに育てあげた父親リチャードを演じた。
それにしても子供を世界一にするプランって?
ノープランだった自分には別世界のお話。
結果オーライのサクセスストーリーとはいえ十分に楽しめた。嫌味のない良作だった。
ビーナス & セリーナ 💓
初めて彼女たちを見た時の衝撃を今でも鮮明に覚えている。常識を覆す肉体だった。強靭な下半身だった。黒く輝く肌が美しかった。
アランチャ・サンチェスが悪役みたいになっちやった…
この父親、日本で言えば亀田史郎氏みたいな感じか…。アメリカでは有名人のようだ。
テニスの経験がない彼は独学でテニスの教育法を研究して78ページにも及ぶ計画書を作成…云々。その過程を描いているのかと思ったら、その後の物語だった…。
ウィリアムズ姉妹がグランドスラム大会のコートに躍り出たのは1997年。それ以前の姉妹のことはほとんど知らなかった。父親のことは試合のテレビ中継で語られることはあったものの、日本では名物オヤジとして取りあげられる程ではなかった気がする。
姉のビーナスはマルチナ・ヒンギスと同い年で、同じ14歳でプロデビューしたらしいので、1997年の全米オープンに初出場する3年前になる。そのプロデビューのトーナメント2回戦でのアランチャ・サンチェス・ビカリオとの対戦が本作のクライマックスになっている。
このサンチェスは13歳でプロデビューし、17歳で全仏オープンでグランドスラム大会を初制覇している。
ヒンギスも絶対女王シュティフィ・グラフも16歳でグランドスラム大会を初制覇しているので、ウィリアムズ姉妹が特別に早かった訳ではない。姉のビーナスがグランドスラム大会に初優勝した時は既に20歳だった。
総じて早熟な女子テニス選手の中にあって、ウィリアムズ姉妹が驚異的なのは現役としての息の永さだ。幼い段階で注目を集めることで潰れてしまわないように、父親がプロテニス界の常識と戦ったことがこの映画に描かれている。
プロ転向後、グランドスラム大会デビューまで時間がかかったのも、WTAのツアーよりも勉学を優先させた父親の方針があったからだという。
主人公リチャード(ウィル・スミス)が娘たちに語る悲惨な少年期の体験。自分の父親は息子を見捨てたが、自分は必ずお前たちを守ると宣言する。強い決意と、それを娘たちに表明する態度は尊敬に値する。
近所の人の通報によって虐待の調査に来た警官に対して、黒人の子供たちがこの世の中で生き抜いていけるように教育していることを訴える場面は胸を打つ。警官たちは絶句して引き下がる。
だが、この意思の強い男は、反面では独善的で意固地な「扱いにくい人」だ。
著名なコーチにも堂々と意見するのだが、彼が独学でテニスを研究する様子があまり描かれていないので、彼が間違っているのか、そのコーチを上回っているのかが分からない。そこは、結果が物語る。
この扱いにくいオヤジを妻のオラシーン(アーンジャニュー・エリス)が涙ながらに諭す場面が秀逸だ。ウィル・スミスと並んでアーンジャニュー・エリスがオスカーにノミネートされたのも納得。
スケールの違いはあれど、夫婦あるあるかもしれない。なにもしない夫(父親)か、何かにつけて強権発動する夫(父親)に二分されがちなのが男という生き物で、リチャードは後者だ。だが、結局子供たちのことを分かっているのは母親の方だったりするのだ。
ウィリアムズ姉妹がテニス界にもたらしたのは、女子離れしたパワーテニスと、セレブスポーツへの黒人の参入だった。
ジュニアトーナメントの会場で父娘に珍しそうな視線が向けられる演出があったが、これが感動的なラストシーンへの布石になっていたと思う。
父娘が練習する公営テニス場にたむろして彼女らにちょっかいを出していたチンピラたちが、ビーナスが白人たち相手に連戦連勝する姿を見てボディーガードに転じるところなど、作劇として粋な展開だ。最も父娘に手を出していたリーダーが態度を変えた方がより面白かったかもしれないが、そいつは彼らが暮らす地域の荒廃度を示す方の役回りになっている。
練習風景や試合をとおしてテニスシーンの演出が巧い。スピード感、迫力があって、姉妹を演じたサナイヤ・シドニーとデミ・シングルトンの動きを全身で見せていて小細工がない。少女期の役なので体型こそ今の本人たちとは違っているものの、動きの特徴は捉えていたと思う。
チラっと登場する有名選手たちも雰囲気がよく似ていて面白い。アンナ・クルニコワが名前しか出なかったのは残念だったが。
そして、特筆すべきはクライマックスで戦うサンチェスを演じた女優だ。何より彼女の動きが実に本物に似ていた。
カメラが人物に接近して迫力を出す様な過度な演出ではなく、二人の選手をフレームに納めた試合の再現力が素晴らしい。
試合の展開が事実通りなのかは知らないが、トッププレーヤーのサンチェスが駆引きを使うのが面白い。いきないプロの洗礼を浴びせたという展開だ。
そして、試合後の感動のラストシーンへとなだれ込むテンポが心地いい。
この映画は、名物オヤジの奮闘記であると共に、黒人の境遇に真っ向立ち向かった男の物語りとして、アメリカの病巣を見せてもいる。
伝記としての一面は、姉妹をテニス界に送り込んだ実績はそのとおりだが、妻の連れ子や先妻との間の子たちとのイザコザのゴシップを耳にするにつけ、真に受ける訳にはいかないが、映画で描かれている限りにおいても相当面倒臭い人物だということは分かる。
だが、それぐらい厄介な男でなければ、貧しい黒人の子だくさん家族にあって、セレブスポーツのテニス界に爪痕を残すような偉業は達せられなかっただろう。
これが全て実話というすごさ
何よりもこの話が実話であることが驚きです。生まれる前から計画されていたこともびっくりです。
ウィルスミスが演じた父親はさまざまな困難、逆境が立ちはだかっても自分のプランを押し通し、それを信じ続けます。これは本当に勇気のいる行動だと思います。
そして、そのプランをきちんとこなし向き合う家族たちもすごいと思います。
この映画は人種差別にも深く言及している作品ですが、それをはねのけるウィリアムズ家族の温かさ、強さを感じました。たくさん笑い、家族の中でもめ事が起こっても愛でそれを包み込み、前へ進んでいく。そんな家族の姿にとても心温まりました。
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