劇場公開日 2022年2月23日

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「アカデミー賞授賞式のハプニングで、ある意味映画史に名を残すことになった一作。」ドリームプラン yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0アカデミー賞授賞式のハプニングで、ある意味映画史に名を残すことになった一作。

2022年4月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

念願のアカデミー賞を獲得したにもかかわらず、自らの振る舞いで手放しに喜べなくなってしまったものの、本作のウィル・スミスの演技そのものは最優秀男優に相応しい熱演でした。

稀代のテニスプレイヤー姉妹を育て上げた手腕を持ちつつも、しばしば配偶者にも暴力を振るうという(映画では直接的な描写はないけど)、家庭人としては問題を抱えてきた父親、という硬軟両面で説得力ある演技を要求される役どころでしたが、ウィル・スミスは「華」のある自らの俳優としての存在感を封じて、「キング・リチャード(原題)」そのものを演じ切りました。リチャードが「ドリームプラン」に何を書いたのかを詳らかにするよりも、実際の指導や試合結果でその内容を理解させるという演出の手際の良さのおかげで、作品全体の疾走感が最後まで衰えません。何らかの文書が作品の要点となる場合、そこに「書かれていること」をナレーションなどでいちいち説明する演出方法を採用する作品も結構ありますが、丁寧な描写がしばしば演出のもたつきをもたらしてしまいます。本作ではそのような場面はほぼ見られませんでした。

本作を観ると、リチャードは周囲の無理解を意に介さず、自分の信念を貫き、結果的に大きな成功を収めた人物であるかのように描かれますが、現実の彼はその後家族と離別、本作の製作についてもほとんどリチャード本人の意思確認をせず進められたそうで…。加えて、作品の父親像の構築に、セリーナ&ビーナスのウィリアムズ姉妹をはじめとした親族の意見が大きく採り上げられているというところも何だか複雑な気分になります。

それにしても、そのリチャード本人に「暴力は良くないね」って言われるウィル・スミス。彼の立つ瀬が…。

yui