「丹下段平×てんとう虫の歌的なチャーミングなサクセスストーリー」ドリームプラン ONIさんの映画レビュー(感想・評価)
丹下段平×てんとう虫の歌的なチャーミングなサクセスストーリー
見応え充分のサクセスストーリー。原題はキング・リチャード。ウィルスミス、こんな顔だっけ?というくらいあやしいテニスおやじをあやしく楽しく演じている。
そして邦題が毎度のことながら「ドリームプラン」という宝くじか生命保険の広告の文言のように観る気を削いでいて切ない。
映画は割と前半から懐かしアニメ「てんとう虫の歌」を思い出すかのような貧しさの中、家族揃ってテニスで天下を取るぞ、ここを抜け出すぞ、というやばいゲットーの親父の狂信的アプローチを映し出す。ヤバさでいうと丹下段平レベル。少年院のジョーに手紙であしたのために、と送ってしまうあの感じ。
とにかく子供たちの表情がいい。研究と信念と行動力、交渉力でグイグイ押し通す。そして娘たちは結果を出す。最初のコーチは父と母。そしてコーチが2回変わるが、どれもそのコーチングの芝居が面白いので熱くなる。テニスプレーヤーとして天下を取る、金を稼ぐ、というよりも、やはり黒人の歴史を背負って黒人としての未来を切り開いていくのだという意識が強くテニスしかできない人間になることを許さないあたりが素晴らしい。個人的に肝心な試合は背を向けて耳で聞いてる姿がリアリティあるな、と思った。そして無敵の時は音で聞き、負けるとなった試合は姿を現し、見つめている。そんな注目のチャンピオンとの試合の後の美しい終わり方もよかった。
欲を言えばこの脚本で映画的な攻めをもう少し観たかった気もするけど、演者の顔が素敵なのでまあいいか。
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