「「良き父親・指導者」の話ではない。」ドリームプラン キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
「良き父親・指導者」の話ではない。
なぜ内容を誤解してしまうような邦題をつけるのか理解に苦しむ。
ビッグマウスで奔放で傲慢な父親をメディアが揶揄した「King Richard」って原題はまさにピッタリだと思うし。
お話としては「名伯楽のコーチング論」といった類いのものでは決してなく、むしろ父親の暴走に「正しい選択と自立」をする物語。
主人公のリチャードはもちろん娘たちへの愛情には溢れているが、彼の指導は一方で、自身がそれまで生きてきた差別社会や自分を蔑んで来た人々に対して、娘を利用して復讐しているだけだと、ちゃんと奥さんに看破されている。
その辺り、アフリカ系アメリカ人のただの恨み節にならないフェアで批評的な視線はすごく良かった。
そういう意味で、彼の暴走を肯定することから始まる様な邦題は、どうにもしっくり来ない気がするし、観ていて違和感が先行してしまう。
逆にそうじゃない視点で観ると、子供たちがしっかり自立していく姿をしっかり見届けることができて、ラストがよりグッとくる。
現実として、彼がまず気をかけたビーナスよりも、セレナの方が残した記録としてはものすごいってのも、若干皮肉ではある。
そしてそれを表現する子供たちと奥さんの演技が素晴らしい。
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