「リンチ版も好きだが、こちらも洗練されていてよい。」DUNE デューン 砂の惑星 あふろざむらいさんの映画レビュー(感想・評価)
リンチ版も好きだが、こちらも洗練されていてよい。
かなり良い。ヴィルヌーヴは出世したな。
冒頭、レジェンダリーのロゴが出て、いやな予感がしたが、さほど影響はなかったかと。
キャストも非常によかった。とくにポール役のティモシー・シャラメはすばらしい。宇宙でも強大な力を持つ一家の跡継ぎではあるが、本当はあまり後を継ぎたくない。しかも彼は砂漠の救世主になる可能性があるなどと言われて、そのプレッシャーに揺れ動く心を繊細に表現している。ほかのキャストも映画の世界にしっくりとなじんでいてよかった。ただ、ゼンデイヤだけは浮いていた。アクの強い俳優が多い映画なんだけど、みんなちゃんと溶け込んでいたのに、ゼンデイヤだけは、浮いている。彼女は「グレイテストショーマン」の時はよかったんだけど、スパイダーマンも違和感があった。
宇宙船のデザインは、「メッセージ」の延長線上にあるように感じた。ダサいんだかかっこいいんだかよくわからない。ただ、重量感がきちんと表現されていた。スターウォーズだとデザインはかっこいいんだけど、軽そうな感じがする。そういうところも映像技術の進歩なのかなと感じた。遥か未来の設定なのに、結構アナログなところもおもしろかった。たぶん現代のテスラのほうが未来的なデザインだと思う。
音楽はハンス・ジマー。この人の音楽を聴くといつも「ブレードランナー」のヴァンゲリスを思い出す。ただ、もっとエッヂが効いていてかっこいい。現代的なのだろう。
肝心の物語は、アトレイデス家が皇帝の命令で砂の惑星に移住するところからはじまる。以前の支配者であったハルコネン家は退陣している。アトレイデス家は砂の惑星で採れる香料を採取する任務をおっているが、ハルコネン家の残していった設備では、ノルマは達成できない。そんなとき、ハルコネン家が攻めてくる。実は皇帝とハルコネン家は結託していて、宇宙で絶大な力を持つアトレイデス家を滅ぼそうとしていたのだ。
物語の構造としては、砂漠の救世主になることを運命づけられている主人公のポールが、自らの使命を知り、あらがうが、やがて受け入れるというもの。古典的な英雄譚だ。
起承転結でいうと、おそらくは起がおわったあたり、もしくは承の前半くらいまでか。つまり、かなり途中で終わる。ただ、ポールの成長という意味では一区切りしたあたりまで描いているので、いきなりぶった切られた印象はない。
ポストスターウォーズとして宣伝されているが、ep4~6を期待するとがっかりすると思う。ep1~3なら、まあそうと言えなくもない。それでもスターウォーズはエンターテイメントの要素が強く、魅力的なクリーチャーもたくさんでてくる。DUNEはそういうのはない。政治的なかけひきであるとか、人間の心が揺れ動くさまを描くほうに重点を置いている。もちろん映像的なかっこよさはあるけれど、スターウォーズ的な空中戦とか、ライトサーベルを使った戦いはない。冒険活劇のテイをとってはいるが、内面的な葛藤を描く術にたけている映画だと思う。
第三弾まで作るかもしれないという話なので、非常に楽しみだ。