劇場公開日 2021年10月15日

  • 予告編を見る

「さりげなく美しいヴィルヌーヴの世界に浸る快感」DUNE デューン 砂の惑星 徒然草枕さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5さりげなく美しいヴィルヌーヴの世界に浸る快感

2023年3月29日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

ドゥニ・ヴィルヌーヴの作品はさりげなく美しい。何というか一見して驚くような美しさではなく、後からじわじわきて、いつかどっぷり浸っているような美しさなのである。
「ブレードランナー2049」はリドリー・スコットの伝説的作品の続編でありながら、独自の魅力を見せていたし、「メッセージ」「静かなる叫び」「プリズナーズ」のどれも印象が深い。

そして、この「DUNE」である。
原作はベストセラーSF小説で、それに影響を受けた「スター・ウオーズ」を今度はヴィルヌーヴが引用するという形らしい。
小生は原作をずいぶん以前に読んだのだが、内容は単なるスペース・オペラでほとんど忘れてしまった。「スター・ウオーズ」にはもう完全に食傷させられた。リンチ版の「デューン」は安っぽくて途中で放棄。本当に感銘を受けたのは本作だけである。

砂、砂、砂…の世界は「アラビアのロレンス」で見事に描かれているが、それに引けを取らない手触りや質感が伝わってくる。砂漠の民の生活は奇妙にリアルで、その乏しい色彩の中で豊かなグラデーションが美的快感を生み出し、この世界に浸っていることが嬉しい。
そもそも内容はあまり意味がないのだが、続編を作ってくれるならまたあの快感を味わえると楽しみになる。

徒然草枕