「アイラインの引き方」モロッコ、彼女たちの朝 momo8さんの映画レビュー(感想・評価)
アイラインの引き方
旅行に行けない昨今、異国情緒たっぷりの映画は心の栄養剤だと思う。
舞台は日本から遠く離れたモロッコ。昔リッチな知り合いがモロッコにハマって足繁く通っておりました。それは素敵な所らしい。私のイメージでは宗教色が強い?ヘナ、迷路、クスクス…そんな程度の知識で鑑賞しました。
近年、随分変わってきましたが、日本でも未婚の母は白い目で見られます。ただ、日本はどちらかというと無宗教の人が多く、授かった命は大切にしなければ、という思いが強い様に感じます。しかし、モロッコでは生まれてきた子供まで白い目で見られる…幸せになれないんですね。
そんな事情があり、美容師の職も追われ、途方にくれていた身重のサミアを、美しいけど仏頂面のアブラが救います。
アブラは事故で突然夫を亡くし、自分を楽しい事から遠ざけて生きています。一人娘のワルダも常に厳しく躾ています。
初めは一晩だけと云っていたが…
人懐っこい性格のサミア、巧く取り入るという訳ではないのですが、手間のかかるパンを焼いたりして段々打ち解けてきます。
お祭りの日、普段は素っぴんのアブラがお化粧をします。爪楊枝のようなモノにインク状の液体を付け、閉じた眼の際をなぞると、自動的に上下にアイラインが引ける…素晴らしい、驚きました。
そして、ついにサミアが出産します。
情が移るのが嫌なのか、最初は抱きもしないサミア。でもやっぱり母性が押さえられない。抱っこすれば可愛いし、オッパイもあげます。しかし、朝になれば別れなくてはいけないかもしれない。
結末はハッキリ描かれてないので、観た人に委ねられています。
たんたんとした日常…それが物凄く美しい。夜の暗い通りから眺める家の灯りや、朝、洗濯物を干す屋上とか…とても素敵でした。
二人の強い女性に幸あれ、です。