「主役は赤ちゃんかも 原題は・・・・」モロッコ、彼女たちの朝 カールⅢ世さんの映画レビュー(感想・評価)
主役は赤ちゃんかも 原題は・・・・
登場人物(役者さん)をじっくり観賞することができる点において非常に満足感の高い映画でした。
臨月の身でひとりカサブランカの町を仕事を探して一軒一軒門をたたくサミア。一度は断るも、向かいの道端に夜になっても座りこんだままのサミアが気になって仕方ないアブラ。未婚の母に対する世間の目がとくに厳しいお国柄。美容師の職も住居も失って、バックひとつ担いで放浪の身。アブラは頭がよく、お世話好きで、困っているものを放っておけない性格。厳しい表情でひとり娘の生活のリズムが壊れるのを心配したり、世間の目を考えて、揺れるアブラにこちらの心もその都度グラグラしてしまう。少しずつ譲歩したり、的確なアドバイスで強要することなく、サミアの心に寄り添うアブラ。決心の固いサミアが母性愛を抑えられなくなってゆくさまは、アブラが無理しなくていいのよと口には出さねど、誘導しているかのようでした。
言葉にせず、表情での細やかな心理表現。
娘の好奇心に溢れたおしゃまな可愛らしさ。
自分のことは棚においておいて、粉屋の若旦那とアブラをくっつけようとするサミア。ちょっとその気になって化粧を念入りにしたり、体型を気にするアブラ。
サミアは本当の臨月の妊婦さんだったのでしょうか?アブラの娘がお腹を触るシーンが本当の臨月のお腹の皮に見えたので。新生児の赤ちゃんはもちろん本物ですが、授乳シーンでのサミアのお乳の張りがあまり感じられなかったので、お腹は特殊メイクだったのかな?
赤ちゃんもじっくりと描写されていて、とてもよかった。もみじのような手。自然な鳴き声。サミアがちっちゃい足にキスするシーンがよかった。
見ているものに任せられるエンディング。
実家には帰れないサミアがまた街をうろうろしているところをアブラに捕まって、四人で仲良く暮らせればいいのになぁと思いました。