劇場公開日 2021年8月13日

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「じわりと感じる温もりと希望」モロッコ、彼女たちの朝 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0じわりと感じる温もりと希望

2021年8月12日
PCから投稿

小さく、ささやかな映画ではあるけれど、焼き立てのパンみたいな温もりがある。最初に出会った時は心が擦り切れたみたいに険しい顔をしていたヒロインたち。しかし少しずつ絆が深まるにつれて柔和さを取り戻していく。その変化していく表情や関係性を見ているだけで、二人の歩んできた道のりが自ずと伝わってくるかのようだ。ここにはアラブ世界特有の文化や慣習があり、彼女たちは「女性はこうすべきもの」という抑圧に苦しんでいる。だが本作はそういった過去、あるいは現在を描きつつも、そこから先の未来へつなぐ灯火を感じさせる。小麦粉を混ぜて一つ一つ形を整えて焼き上げていくパンは希望の糧。そこから無数の笑顔が生まれる。一人娘も屈託のない表情でその場を明るくする。日に日に膨らみを増すお腹にも大きな未来が育っている。この小さな家、小さなパン屋から何かが始まっていく。ささやかだけれど力強い明日への希望がここには宿っている気がした。

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牛津厚信