「社会派エンタメでありますが、根本的な問題を乗れるか乗れないかで評価が変わるかと思う作品です。」パブリック 図書館の奇跡 松王○さんの映画レビュー(感想・評価)
社会派エンタメでありますが、根本的な問題を乗れるか乗れないかで評価が変わるかと思う作品です。
観賞した人の感想が結構高い作品で気になってたので観賞しました。
で、感想はと言うと、社会派ドラマでそこはかとなくシニカルな笑いも盛り込まれている作品ですが、ホームレス達が寒さを凌ぐために図書館を占拠すると言う点について、賛同出来るか出来ないかで感想は変わるかな?と
勿論、それはあくまでも切っ掛けにしか過ぎないんですが、「図書館は民主主義を守る最後の砦」と言われても、寒さを凌ぐシェルターの増設断念や幾度の交渉決裂の過程の描写もなく、仲間が寒さで凍死すると言う過程があったとしても、図書館の占拠と言うのは賛同出来ない。そこに至る迄の描写が弱いんですよね。
ホームレス支援等の行政問題は何処の国でも抱える問題と聞いてますし、体臭のキツい利用者の利用制限も難しい問題かと思います。
冒頭にある様な追い出しをして、賠償金を支払うと言うのも、なんとなく訴訟大国アメリカらしい感じもしますが、かと言って一般の利用者が使えなくなる様なしわ寄せが来るのはどうかと。
体臭がキツい、突然全裸になると言う問題が頻繁に起こると一般の利用者は使い難く、また開館と同時にトイレで身支度を整える大勢のホームレスが占拠していたら、一般利用者は敬遠するでしょう。
民主主義の最後の砦と謳っても、図書館の閉鎖が余儀無くされる問題に発展したら元も子もない。
勿論、退役軍人等で仕事に溢れてしまい、ホームレスになってしまう者達の気持ちも分からない訳ではない。
シルヴェスター・スタローンの「ランボー」の第1作目でベトナム戦争帰りの帰還兵のランボーが職に溢れ、様々な不当な目に会い、訪れた街で偏見と不平等な対応をとられるのと似通った所があります。
自由と平等を掲げるアメリカではありますが、様々な差別が横行するだけあって、いろんな問題もあるかと思います。
かと言って、権利や主張を掲げ、大勢で団結して行い、籠城すると言う行為には賛成しかねるんですよね。
様々な国で対応は違うとは思いますが、日本ならこうはならない。
多分一般の利用者の権利を大前提にいろんな対応を取り、締め出しをするんではないだろうか?
暴動を起こすだけのパワーが今の日本国民に無いと言うとちょっと乱暴な言い方も出来ますが、過去にホームレス達が暴動を起こした大阪西成の事件があったけど、占拠や暴動、籠城行為はやっぱりNGで、ここで引っ掛かるとこの作品に乗り切れないのかなと思いますし、「寒さで外に追い出されたら凍死するかも知れない。だからこそ、仕方なく立て籠った。」
その大前提に至る迄の話をもっと丁寧に描かれていたら、評価は変わったかなと感じます。
また、図書館職員のスチュアートも顔見知りのホームレス達の力になりたいと思いつつも、最初は退館しないホームレス達に戸惑いながら、何故か今回の籠城の首謀者的な立ち位置になりつつあるけど、そのスチュアートの気持ちもなんか流されるままに、なんとなく乗せられて感があるんですよね。
様々な葛藤と刑に服した過去があるにしても、どうもスチュアートの信念的なのも軽い。
ホームレス達の権利を守るのもクビを宣告されているからのヤケっぱちの開き直りにも見えて、図書館員としての義務を果たしてない。
また、管理人のアンジェラとの情事の描写もスチュアートの軽さを醸し出してる感が否めない。
クリスチャン・スレーター演じる検察官のジョシュが良い意味で嫌な奴を演じてますが、ビル・ラムステッド演じるアレックの立ち位置もなんか微妙。
レポーターのレベッカも野心溢れる行動ももっと嫌みったらしくした方が良かったかなと思います。
あと、ラストで籠城したスチュアートとホームレス全員が素っ裸になると言う、ちょっと力技的な持っていき方は嫌いではないんですが、体臭問題を取り上げているのに、ホームレスの身体に汚れが見えなくて結構綺麗w
事前にシャワーを浴びたんか?と思うくらいで細かい所ではありますが結構、気になりましたw
ただ、かなり重いテーマの社会派ドラマである割に所々の作りと描写がコメディチックな感じで、ライトに観られるのが救い。
BGMもコメディでシニカルな感じが良いんですが、肩の力を抜いて観られる分、ただ中盤辺りはちょっと間延びした感じがあります。
社会派問題を取り扱った作品でありながら、軽妙でエンタメ性もありますが、個人的にはどちらにも中途半端に組み込んでいる様に感じて、ちょっと肩透かしな感じ。
割りとハードルを上げてたので少し残念ではありますが、あくまでも個人的な感想の1つとして捉えて頂ければと思います。