劇場公開日 2022年10月14日

「スタジオジブリ関連作品の実写化は改めて難しいと実感。10年後をオリジナルストーリーで描いた意欲作。」耳をすませば 細野真宏さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5スタジオジブリ関連作品の実写化は改めて難しいと実感。10年後をオリジナルストーリーで描いた意欲作。

2022年10月14日
PCから投稿

スタジオジブリによってアニメーション映画化され、その後に実写化した作品に「魔女の宅急便」(2014年)があります。ただ、これは、元々「魔女の宅急便」は児童書の原作が存在し、それの実写化でジブリ作品とは関係ない映画でした。
「耳をすませば」も原作マンガがあり、本作はそれをベースにし、さらに原作の中学生時代の「10年後」をオリジナルストーリーで描く、という意欲作になっています。
「魔女の宅急便」との違いは、本作はスタジオジブリの「協力」作品となっている点です。
それは、スタジオジブリ作品を支えてきた日本テレビの中心人物であった奥田誠治が日本テレビから松竹に出向中であり、本作の企画に関わっているため成功したスキームと言えるのでしょう。
中学生時代を描いたシーンではジブリ版の雰囲気も感じます。
原作とジブリ版は意外と異なり、例えば天沢聖司は原作では画家を目指していますが、ジブリ版ではヴァイオリン職人を目指していたりします。
それを本作ではチェリスト(チェロの演奏家)を目指しているので、ジブリ版の設定に近いものとなっています。
ただ、本作だけで完結すべく中学生時代に加え「10年後」の1999年を描くという構想の大きなものなので、物語自体が、やや散漫なイメージがありました。
そして、「耳をすませば」と言えば、物語を覚えていない人でもジブリ版で採用された「カントリー・ロード」をイメージしている人が圧倒的に多いため、本作での「翼をください」には違和感を持ってしまう人が少なくないようにも感じました。「カントリー・ロード」だけでも統一できれば雰囲気で入り込むことができたのでは、と残念に思いました。

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細野真宏