「ラストのシーン」さんかく窓の外側は夜 中村晴香さんの映画レビュー(感想・評価)
ラストのシーン
私は原作を見ずに映画を拝見させていただきました。※かなりネタバレを含みます。
実はこの作品を見るのは今回2回目でした。1回目は話の流れを理解するのに必死だったのが正直な感想です。ですが、冷川さんの過去や三角くんと英莉可ちゃんの生まれ持ってしまった才能について理解し、自分なりに考えることが多く見た後の余韻もすごかったです。
2回目は流れも知り過去も知った状態だったので1回目とは違うところに着目することができました。まずは音楽。個人的にとても好きでした。綺麗なハーモニーで場を作ってから落とす不協和音に鳥肌を感じストーリーに入り込むような感覚がしました。特に好きだったのは英莉可が登場する可憐なピアノ。英莉可は当たって普通の女子高生。呪いを操れるという特殊能力を持って生まれただけであり、本当は普通に過ごしたかったはず。等身大の女の子であるということを表すような音楽が印象的でした。
私が1番理解が難しかったシーンは宗教と暴力団の交わりです。これは原作を読んでないからなのかなと思っています。2回見た今でも理解しきれていません。私はパンフレットを購入したのですが、2時間という短い間にこの連載中であった原作のストーリーを取り入れることが難しいという監督の言葉に頷きました。限られた時間の中で表すことが難しい部分であるのかなと思いました。三角くんが心に残る過去や、冷川さんの人間関係、英莉可の特殊能力。普通に生まれただけなのに他の人とは違う力を持ってしまった3人がさんかくに結ばれ、涙するシーンがとても心にグッときました。冷川さんに勇気をもらえたように、三角くんが過去の冷川くんを励ますシーンから涙が止まりませんでした。
私が1番考えさせられたシーンはラストの腕のシーンです。台本では冷川さんと三角くんが会うシーンで終わりだってらしいのですが、英莉可の腕でパッと終わりました。1回目は続編があるのでは?と思いましたが、よく考えればそうではないなと思いました。英莉可は理由はともあれ殺人という重い罪を背負っています。呪いがなくなったからといって英莉可の罪が許されたわけではない、そう感じ取りました。ハッピーエンドかと思いきや、「お前がやった罪は償えない」と語りかけられた気がしました。劇中でもあるように人間は何よりも恐ろしいです。時には人を死に追いやります。英莉可はそれが呪いだっただけの話で、決して許されることない。傷つけたものは一生背負って生きていく、というメッセージではないかと考察しました。
あまり見ないジャンルであり新鮮でした。オープニングのずっと真夜中でいいのに。さんの「過眠」とのカットのマッチがとても好きです。色彩がとても工夫されていて、人の服の色分けや血の色など、なぜか綺麗だと感じさせられました。この作品では色遣いと込められたメッセージに注目してみていただきたいなと思います。冷蔵庫の平手さんの絵も見つけておらず、原作を読んでからの感じ取り方の違いを楽しみにまた何回もみたいと思います。
こんなに映画で深く考えたことは初めてです。穢れの裏にメッセージを込められていて見た後も余韻に浸ってしまう素敵な作品でした。