「納得できるまで。」ワイルド・ローズ ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
納得できるまで。
タイトル通り、まさにワイルドな主人公で歌声もクレイジーパワフル。
しかしその生き様は全く褒められたものではなく、刑務所帰りに男と
SEX、パブで同僚をぶっ飛ばしステージを奪い、帰った家では子供
たちにも怯えられるという始末。この、どうしようもない母親である
ローズに与えられた唯一の才能は歌が上手いこと。カントリー歌手を
ずっと夢見てきた彼女は何としてでもナッシュビルへ行き成功したい。
子供達の面倒をみてくれた母親はローズに生活を立て直すことを要求、
資金を集めて歌手として成功する夢を抱きながら、家政婦として働く
彼女の歌声にマダムが手を差し伸べたことでチャンスが巡ってくるが、、
共感度0の母親が子供をほったらかしている状態に、昨今の幼児虐待
事件が重なって見え、日本人はやや複雑な気分になると思うこの作品。
歌以外に何の取り柄があるんだろうというくらい、性格もヤンチャで
手の付けようがないのだが、しかしその歌声にかなりの説得力がある。
主演のJ・バックリーがほぼ全編を網羅している素晴らしい歌唱には
こちらも聴き惚れるほど魅了される。J・ジョプリン風かと思ったが、
B・ミドラーにも近い。タイトルがローズで内容的に家族の話なので
そっちを連想させられるかもしれないが、とにかく歌以外はダメダメ。
しかし周囲にはなんだかんだと世話を焼いてくれる親切な人間が多く、
子供の面倒や資金の調達にしても協力的、もうダメだと歌から離れた
後半に、厳しかった母親の援助には涙が零れる。彼女の夢は叶うのか、、
ストーリー的には凡庸であり、ラストもそうなることを予測できるが、
自身の夢を叶えるひたむきな前進力に圧倒されるほどパワーをもらう。
納得できるまでやり尽くすことで獲得できた自信は、今まで描いた夢
とは違うかもしれない。だけど、多くの共感を齎す選択もできるのだ。
ローズが人間的な成長を遂げることで得た教訓が歌から伝わってくる。