「人としての強さ。」ようこそ、革命シネマへ とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
人としての強さ。
映画は放り出されたように終わる。
そこであなたは何を感じるのか。
何を受け取るのか。
エンターテイメントを期待する人は観てはいけない。
ドラマを期待する人も観てはいけない。
”革命”という言う言葉に反応して、ドンパチ・アクション・流血を期待する人も観てはいけない。
「映画はハッピーエンドじゃなきゃ」という人も観てはいけない。この映画がバッドエンドかどうかは観る人による。
あくまで、ドキュメンタリー。
万人に受ける映画じゃない。
けれど、
何かしらの表現活動をしている人や、芸術・芸能活動に関わっている人には観てほしい。
人の強さについて考えたい人にも観てほしい。
地道な活動について考えたい人にも観てほしい。
酸いも甘いもかみ分ける、ユーモアあふれる素敵なおじさまに会いたい方も、観てほしい。
映画祭で絶賛なのも納得。
「皆で、映画を観たい」ただ、それだけ。
それだけなんだけれど…。
日本では全く知られていないが、国外での受賞歴もある4人のクリエイター。
多分、ただ表現活動を続けるためなら、誰でもいいから観てもらえばいいのなら、国外で活動すれば叶う願いなのだろう。
この映画の中に数分挟まれる、彼らが制作した映画のシーン。『ネズミ(だっけ?)』他、そのシーンだけでも次の展開を期待させて、ドキドキする。全編を観てみたくなる。
でも、彼らは、国外で活動するのではなく、逃亡先から戻ってきた。ある監督は収監から解かれて、この国に留まる。
彼らにとっては、何を表現するかだけではなく、誰と、映画の興奮を分かち合うのかが大切なんだろう。
「友達と映画を観るのは家で一人で観るより絶対良い」映画の中で、マーケティングリサーチとしてインタビューを受けた少年が言う。
それを叶えたい。ただそれだけ。それだけなんだけれど…。
「時には失敗もいいものだ。そこから希望が育つから」
声高に相手を罵倒し、征服するのではない。
反対に、どんなに力を振りかざされても、彼らの心は、他の誰かに征服されない。
ただ、同じものを愛する仲間以外には。
ユーモアに包まれた静かな怒り・悲しみ。誰にも決して消せぬ望み。
映画は、淡々と老監督たちの活動を撮り、時折アーカイブ映像等が差しはさまれ、放り出されたように終わる。
思わず笑ってしまうシーンはあるが、ドラマティックな演出等はない。
老監督たちが受けた仕打ちも、ラッシュのように差しはさまれるだけなので、この国で映画産業に携わることがどれだけ危険なことだったのか、うっかりすると見過ごしてしまう。
なので、鑑賞直後は、狐につままれたような、物足りなさで、試写会場を後にした。
けれど、後からじわじわ来る。
理不尽なことに出会ったとき、彼らの顔が浮かぶ。
いろいろな映画が製作され、配給され、鑑賞できる幸せをかみしめた。
すべての人に感謝を捧げます。
と同時に、コロナ騒ぎで映画を含める芸術産業の危機が騒がれている。
経済的困窮にある方々へエールを送るとともに、
それでも、映画産業は絶対に消えない。
この映画を観て、確信した。