劇場公開日 2020年3月20日

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「自分が資本家になるのが一番手取り早い、それに気づかせる映画。」21世紀の資本 アッサミーさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0自分が資本家になるのが一番手取り早い、それに気づかせる映画。

2020年6月2日
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鑑賞方法:映画館

知的

この映画は2013年にフランスの経済学者トマピケティーが書いた、21世紀の資本と言う本を映画化したものです。この本は過去300年前から近未来にわたるお金のあり方を、相続の記録や統計データから実証的に見た本です。そこで得られた結論は資本収益率r は、経済成長率gを上回ると言う不等式です。映画は見るものに次々と質問をつきつけてきます。
1、なぜ世界には豊かな人と貧しい人がいるのか?
②、貧しい人が豊かになれるチャンスはほんとにあるのか?
3、勤勉に努力し勉強したら親の世代よりも豊かになれるのか
④次の世代のためにわれわれは何を準備しておくべきなのか?
日本は先進国でしたが成熟国にはなれないまま衰退途上国にいると私は思っています。民間企業に勤める平均給与は2017年統計では、432万2000円でこれは1990年と同じ水準です。興味ある人は日本の実質賃金指数の推移グラフを調べてみてください。1996年を100としたとき日本は89.7で給与が下がってるのは諸外国では日本だけです。
赤城智弘と言う人が2007年に論座に発表した丸山マサオをひっぱたきたい、31歳のフリーター、希望は戦争と言う文章を映画を見ながら思い出しました。戦争は等しく人々に死を求め結果として社会を流動化させます。現状打破するには戦争になったら良いと考えている人々、特に若者がいると言うことです。この映画でも1930年から1980年までは例外的に金持ちと貧乏人との格差が小さい時期だったと描かれています。第一次世界大戦と第二次世界大戦があったからです。前回見た三島由紀夫vs東大全共闘と言う映画は1960年代の日本は安保闘争に代表される政治の季節だったと言うことです。経済的には日本は高度経済成長の真っ只中で、人々の暮らしは年々良くなりました。もちろんその陰で水俣病に代表される公害問題は深刻だった。だけど働いたら、努力すれば暮らしが良くなると言う実感は皆にありました。今はそうではないと言うことです。
コロナウイルスが戦争に変わり世の中をチェンジしていくようになるはずです。政治とは権力のあり方、経済とはお金のあり方で両者密接に結びつきます。もしも私が若かったら泥舟の日本を脱出してアフリカの高原地帯で何らかのビジネスをやりたい、もしくは要するに自分が資本家になる事、労働力ではない方法で金を稼ぐ手段を覚える事です。その事に気づかせてくれる映画でした。

アツサミー