「勝手に期待し過ぎたかもですが・・・」プリズン・エスケープ 脱出への10の鍵 pipiさんの映画レビュー(感想・評価)
勝手に期待し過ぎたかもですが・・・
出来ればアパルトヘイトに対する啓蒙をもっと掘り下げて欲しかった。
そういう映画という訳じゃなかったのかもしれないが、冒頭のシーンで社会派メッセージを含む作品であろうと期待させてくれたので肩透かしを喰らった気分になってしまった。
ジョージ・フロイドさんやアマド・オーブリーさん殺害事件による「Black Lives Matter」の大規模な抗議デモに対して、国営放送たるNHKが恥知らずで情け無い誤解説&差別助長アニメ(国際ニュース番組「これでわかった!世界のいま」)を制作してしまうような日本には尚のこと必要な知識だ。
アパルトヘイト時代の南アで起きた実話というだけであって、99%脱獄モノだったのだが、それならばと純粋にその観点で観た場合、ハラハラドキドキもカタルシスも何もなかった。実話ベースだし、鍵を作って開けるの繰り返しだから仕方ない部分はあるけれど、何もかもが予測・推測の域を超えず「そう来たか!」と膝を打ちたくなる展開が皆無なのである。各シーンごとに冒頭見るだけで先がすべて読めちゃうので、早送りで視聴しても大差ないと思ってしまう。しないけどね。
「大脱走」を始め、「パピヨン」「アルカトラズからの脱出」「ショーシャンクの空に」なども大好きだが、それらに共通する興奮や快感が本作からは得られなかったんだなぁ、残念ながら。
部分的には「政治犯の刑務所は、一般的な窃盗や暴力犯罪と違ってインテリだな」と感じたし、ポットラックが絞首刑になったというシーンは差別政策・差別意識の深い闇を見せつけられた。
デニス・ゴールドバーグの「我々は犯罪者とは違う"良心の囚人"だ」という台詞も深い。(実在のゴールドバーグ氏は2020.4.29に逝去された。決して「遥か昔の物語」ではないのだ!)
アパルトヘイト時代という背景、知的脱獄という新ジャンル、そしてダニエル・ラドクリフの好演。
ラドクリフは事前に背景について本当によく勉強されたそうで、深い知識理解と高い問題意識で好演してくれたのだが、残念な事に監督と脚本が実話の重みを消化出来ていない。星2.5と感じるが、ラドクリフの仕事に敬意を表し+0.5としよう。