劇場公開日 2021年9月17日

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「匿名性と引きこもりの 狭間で」マルジェラが語る“マルタン・マルジェラ” きりんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0匿名性と引きこもりの 狭間で

2025年1月18日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

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【匿名性と引きこもりの狭間で】

ファッションショーが誰にも配信で観覧できるようになってしまってショーの驚きが無くなってしまった・・
と、マルタンは失意をこぼす。
なるほど、これ、とってもよく分かる。

皆さんにもこの数年間に、思い当たる体験はあったはずだ。
「コロナ禍」で、僕たちは無観客の落語や、空席を前に語る漫才師の収録を、あの頃さんざんラジオで聴いた。
無観客試合もスポーツ界では行われた。
「無味乾燥」とは、まさしくこのこと。
「大工殺すにゃあ刃物は要らぬ雨の三日も降ればよい」だ。
演芸が、そして芸人が殺されていた時代だ。

このドキュメンタリーの冒頭、
マルタンのショーのランウェイの横から、その客席の暗がりから、もう鳴り止まぬ、異常なほどの拍手が続いていて、あの場で観客も踊り、観客も歌い出したそうだ。
小屋が崩れ落ちんばかりの迫力。
あの冒頭のシーン。
あれなのだ、必要なものは。

人に出会って平手打ちを喰らわせられるのが、生の舞台の醍醐味。

人間不在のネット社会で、
そして通販横行の出不精社会で、
気が抜けて引退していくアーティストは、マルタンならずとも、今後も増え続けるのだろうと思う。

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そもそも「ファッションの発現」は何時の時代の事だろう。
食の確保が最優先であったはずの いにしえ。
イノシシの骨で作った鼻ピアスを仲間に見せ、
腰蓑の裾をちょっと工夫して斜めに揃えてみる。そうやってみんなをおどろかせ、羨ましがらせる。鳥の羽や貝殻で帽子や首飾りをこさえる。
そうやって自分だけのランウェイを歩く。
腹を満たす行為ではないが、心が躍って爆発する服飾の工夫は
人類の誕生と同時期だったはずだ。
恋人の身を包み、赤ん坊の体をくるむ布切れに想いを込めない人はいないからだ。

マルタンについて、ファッション史の専門家たちが講評するのが、またいちいち腑に落ちて興味を惹かれる構成だ。彼女ら、彼らの語る言葉のセンスにも驚かされる。

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【図画工作の作品は、残しておきたい】

ひとつひとつ、彼の歩んできた道のりの「白い箱」が、棚からおろされて開かれる。
マルタンの子供時代の「デザインブック」が大変良かった。
彼がスクラップブックに貼り付けたオリジナルデザインのワンピースやドレス。使う端切れのセンスと質感。縁取りに這わせる青いニット糸。
バービー人形のために自分で縫うシャネルテイストのスーツの完成度と言ったらない。
どれも子供の作とは思えない素晴らしさ。

「パリでデザイナーになる」と言う彼を、両親は「何を馬鹿な事を」と押し留めたけれど、
おばあちゃんは孫の裁縫を手伝い、彼のどんな質問にも (間違いもあったが) よく聞いて、なんでも答えてくれたのだと。
彼の相談をいつも聞いてその手助けをしてくれたおばあちゃんの存在は小さくなかったはずだ。

赤の他人の僕がこんな事言うのはおかしいですが、おばあちゃんこそ最初にして最後のマルタンのオーディエンス。「ありがとう、でかした。おばあちゃん」と僕は伝えたい。
孫のデザイナーとしてのお楽しみに対して、生涯拍手を惜しまなかった祖母。
彼女が、マルタンのショーへの、あの熱狂的アプローズのバックヤードに、ずっと居てくれたのだと思うね。

だから彼の人生はおばあちゃんへのオマージュ。

モードメゾンの記録映画は
これだからやめられない。
星5つ。
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[追記]
蛇足ですが
僕、きりん。
実はコム・デ・ギャルソンの川久保玲の親戚なんですよ。

「えっへん、どんなもんだい!」
と同僚に自慢したら
「他人やないけ!」と怒られました(笑)
元妻の、父親の、姉の、夫の、姪です。

このサイト「映画ドット・コム」でもいろいろ好き勝手に書いているきりんですが、
ペンネームと云うか、匿名と云うか、きりんは引っ込んでいたほうが世の中のためになる、只の無名の雑魚でしたよ。
川久保さんごめんなさい。😆💦

あ、でも元妻のためにはシフォンのワンピースを縫いました。
熱狂的自画自賛。これ大切。😁

きりん
NOBUさんのコメント
2025年1月18日

今晩は
 いやあ、私は管理する側なので、自分では作業はしないのですよ。現場の人達が如何に仕事をしやすく出来るかなどや(近年の諸熱対策の強化指示、無駄な仕事をさせていないか、DXをもっと活用できないかetc.)、全社の生産計画、要員計画のチェック、指示をする中で気を付けている点は、”現場視点を忘れない。””机上でモノを考えるのではなく、現場で考えろ!”という事ですね。あ、仕事みたいなコメントになってしまいました。スイマセン。ではでは。

NOBU