劇場公開日 2020年3月20日

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「1969年日本、若き知性と熱気を封じこめた異空間」三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実 かせさんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.01969年日本、若き知性と熱気を封じこめた異空間

2025年5月25日
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鑑賞方法:VOD

三島由紀夫が東大全共闘と議論した、東京大学駒場キャンパス900番教室。
TBSに保管されていたフィルムから、議論の流れと参加者のその後を追う、意欲的な108分のドキュメンタリー。

なんかね、引きこまれました。
全共闘と楯の会、いずれの人物もおもしろく、なにより三島由紀夫のやわらかな語り口がいい。
彼らの言うことをときに認め、ときに分解してさらなる説明を求め、あくまで自分の論と対比させる。
こんなの自分そのものに、絶対的なよりどころがなければ無理ですよ。
自分だと、開始10分以内で半泣きなってツバ飛ばしながら意味不明な罵倒語わめきちらしそう。

とちゅうから(なかまによばれて)参加してくる、芥正彦がまたいい。
乳幼児の娘さんを片手に抱き、諧謔的(ユーモラス)に、表現者として対決してくる。
組織最強の論客ながら、当人は東大全共闘なんて必要としておらず、一舞台人として、一表現者として三島に向きあう。
日本を代表する作家相手に一歩もひかず、堂々あなたはカッコわるいと自論を突きつける。
ゆーて日本の学生運動ですから、多くの登場人物はご存命でインタビューにもでてまして。
中でもこの芥正彦、なんかカッコいいジジイになってて、三島の決起を見て
「ああなんかまたバカやってんだな」
「死んでよかったよかった」
「あいつは一世一代の大芝居を、さいごまで演りきったんだ」
なんて粋なセリフを口にしてます。
本人は、カッコいいとかジジイとか、ぜったい言われたくなさそう。
でもカゲで喜んでくれてそう(ひどい矮小化)

かんじんの議論じたいは、当事者には切迫したものであったんでしょうけど、生きた時代も知力レベルもちがう田夫野人の自分には理解しがたく、うわついた言葉遊びに思える場面も多々ありました。
それでも、最高の知性と知性の理性的な衝突は、ストレスよりも知的な興奮を喚起するものでもありました。
もっと罵声とびかうメチャクチャなののしりあいを予想してたんですけど、最初に三島由紀夫が対決姿勢を語る10分間が、その後の議論をフレーミングしたおかげもありましょう、東大生たちはみな、みずから発した言葉に熱中していて、そのみずみずしさは好ましく思えました。

国体についていろいろ考えさせられる部分もありましたけど、それよりも三島のヒーロー性に焦点の当てられたフィルムかなと。
当時の時代性を知る資料として、はたまた押井守がよくネタにする全共闘の知識として、映画ファン目線で見てもおもしろいですよ。

かせさん
kossyさんのコメント
2025年5月27日

時代ですよね~
本当に育ちのいい子たちは関わらないんでしょうけど・・・

kossy
ぷにゃぷにゃさんのコメント
2025年5月27日

コメントありがとうございます。
芥さんはそういう理由で出てきたんですかー。
確かにラスボス感ありましたね。
今の時代、こんな高度な論戦を見ることはできそうにないですよね。

ぷにゃぷにゃ
マサシさんのコメント
2025年5月27日

自決時の70年安保闘争。
「豊饒の海」の題名の意味とアポロ11号が着陸した月面「しずかの海」
彼が語りたかった事がそんな所にあるのかなぁって思っています。

マサシ
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