「あるべき姿の「言葉」の交換」三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実 踏木 寝不架さんの映画レビュー(感想・評価)
あるべき姿の「言葉」の交換
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3章からなる本作。
各々のシーン事に丁寧な解説が施され、細やかに当時の状況や人物像を物語ってくれる。
個人としては三島由紀夫先生の話す映像を見るのが初めてで軽い期待と軽率な気持ちで見に行ったが、あまりの内容の濃密さに我を忘れて見入ってしまった。
討論では個人個人が相手の主張をしかと理解するまで聞き入れ、理解した後に言葉を返すのだが、その理解の迅速さと返す刃の織り込まれ具合に、あたかも自分がその場にいるかのような錯覚を受ける。
芥正彦氏の立ち振る舞いは正に自分の写鏡のようで(実際歳も近く)、若い自分の世界を強固に保っている人間として尊敬の念を覚えた。
また、それに相対している三島由紀夫先生の態度が陳腐な表現になってしまうが、最高に素晴らしい。言葉を使う者として最高の尊敬と、また、ユーモアを交えつつ論じる姿はその時代の文学を代表する芸術人として完璧だった。
概念的な内容が多く、難解であったことは確かだが、自分の世界を言葉という世界共通単位で表現し一つ一つ積み上げていく様は正に感動であった。言葉も無い。途中両者の世界を理解するためにトイレに休憩をしに行った自分を正解だと褒めてやりたい。
これこそ言葉の、言葉の重みと言葉によって作られる世界を伝えてくれる最高の映像だったと私は思う。どうか、常にこのような言葉の重みを持って喋れとは言わないが、ごく稀にであればこのような討論をしたいと思うばかりである。
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