劇場公開日 2020年3月20日

  • 予告編を見る

「予備知識が全く無いと辛いかも」三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実 スキピオさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0予備知識が全く無いと辛いかも

2020年3月24日
iPhoneアプリから投稿

ドキュメンタリーなので、ネタバレではなく、歴史的事実として。以下を前提として知っておいた方がいいし、この歴史に関心が無ければ、観ても仕方ない。

今から50年前のお話。1969年というのは学生運動の最盛期で、1月には有名な安田講堂攻防戦があった年。その5月に、三島由紀夫という極右の作家と、全共闘(全学共闘会議)という極左の学生が行った討論会を中心としたドキュメンタリー。

三島由紀夫は当時、ノーベル文学賞を川端康成と競う程の大作家でありながら「盾の会」という学生民兵を率いて、筋肉ムキムキに鍛えて、自衛隊で実弾射撃訓練をして、この討論会の1年半後に市ヶ谷で割腹自殺します。

東大全共闘は、前年に組織されるや大学や文部省だけでなく、一般学生や同じ左派の日共(日本共産党)や民青(共産党の下部組織)を向こうに回して、安田講堂で大立ち回りをしたバリバリの極左。

で、ややこしいのが、日本共産党は全く左翼ではない。共産革命なぞとっくに放棄し、大学側にたって学生運動を潰そうとしていた、極左の全共闘にとっては敵勢。また自由民主党も全く右翼ではない。天皇陛下に生きながら戦争責任を押しつけ、ひたすら謝りさせていた米帝の傀儡政権。極端に言えば、当時はこういう見方が一般的でした。

で、前置きが長くなりましたが、面白かったです。

討論会は、まあ、屁理屈みたいな抽象論の応戦です。当時の大学生の雰囲気を楽しんでください。学生結婚で子供を抱えていて、三島も学生もタバコ(ピース)をスパスパ吸って、サルトルを引用した哲学語ってをして、ゲバ棒や武器持って闘争していたんです。

ドキュメンタリーの作り方として、討論会映像の合間に、かつての学生たちが解説を入れるスタイルです。2月に観た「愛国者に気をつけろ」でも思ったのですが、今ならギリギリ、当時の人たちが70歳から80歳で生きているんです。この証言はもうこの先は聞けない、という貴重さも魅力です。

最後に、なんでコレがテレビ番組にならないのか。TBSが持っていた討論会の映像ですから、特番でやれば?とも思います。が、無理でしょうね。哲学も学生運動の歴史も若い人は知らないし、興味もない。何より「コンプライアンス」的に公共電波には「不適切」な内容かも。上記のタバコもそうだし、三島の発言もピーな発言が多い。地上波でやれば潰されるでしょうね。ちょうどナビゲーターも東出君だし。

まあ、それはそれでいいんじゃない、と思う一方、ワッケン司令ではないが「寒い時代だと思わんか?」とも言いたくなります。

おでん
にっしんさんのコメント
2020年3月25日

TBS やってたよ。https://www.youtube.com/watch?v=Ynt2dWQytZg&t=42s

にっしん