劇場公開日 2020年10月30日

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「日常への回帰やカタルシスを捨て去ったお化け屋敷の見世物」ザ・グラッジ 死霊の棲む屋敷 徒然草枕さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0日常への回帰やカタルシスを捨て去ったお化け屋敷の見世物

2022年8月28日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

ホラーとは、欧米の悪魔モノであれ怪物モノであれ、日本の幽霊モノ等々であれ、基本的にいったん人が超自然現象や不合理、非日常の事態に捉えられたとしても、最後には正統的な宗教の枠組みや合理的思考、社会的価値観に回帰する仕組みとなっている。たとえ悪魔、魔女がどれほど恐ろしくても、やはりキリストの威光が勝利をおさめ、怪物は打ち倒され、幽霊は成仏させられ、正義と日常が回復する――というふうに。異常なまま終わってしまうラブクラフトの小説も、怪物の正体や由来が描かれることによって、読者は「合理的」に納得してしまうのである。そして、その回復するところに、ホラーのカタルシスがあった。

ところが個人的な感覚では、日本の「リング」あたりから調子が外れて、「呪怨」にいたっては単なる恐怖の状況を延々と垂れ流し続けるだけのお化け屋敷=見世物小屋になってしまった感がある。それの行きついた先がA24スタジオの、まともなストーリーなど存在しないホラーであろう。

その視点からは、「呪怨」のリメイクである本作は見世物小屋の典型と化していて、必然的にカタルシスなど存在しない。作品としては、一応、家に取り憑いた悪霊が次々に人間を恐怖に陥れ、異界に取り込んでいるという説明がなされてはいるのだが、それはもはや善悪、価値観とは無縁に、怖い見世物が永遠に続くというだけの話である。

恐怖にメリハリのない、ダラダラとバカげたこの種のホラーは、お化け屋敷に行くのと同じ単なる暇つぶしにすぎない。
しかし、お化け屋敷だって好きな人はいるだろうし、人間、単なる暇つぶしをしたい時だってたくさんある。その意味では、本作はまあ上々の暇つぶしの映画とはいえる。

徒然草枕