82年生まれ、キム・ジヨンのレビュー・感想・評価
全30件中、1~20件目を表示
共感半端ない。
チョ・ナムジュの原作を拝読して、映画化の方も観たくなって配信で鑑賞しました。率直にいうと、原作よりやさしくつくられているなという印象。身内の母と姉がジヨンの支えにもなっているのに加えてお父さんは別として、弟も今時風の青年になっていて頼りないところもありつつ、ジヨンの不調を健気に心配する優しい弟になっていました。また、夫もジヨンの苦悩や想いを汲み取り、諭すように病院へ導こうとする『理解ある夫』になっていて、だいぶやわらかい表現になっているなぁと。原作を読んでいる身からすると言い方はあれだけど、手緩い。
ドラマとしては過去と現代が入り混じるものの分かりやすくまとめられていて、また社会から受ける彼女の悔しさ悲しさ恥ずかしさを映像ならではにうまく演出されていたのがよかったと思います。
吹き替えで観たので、声音から違う人物になっているかは掴みづらかったけど、主演のチョン・ユミさんの明暗の表情がすごく良かった。こちらまで、苦しくて悲しくなってくる。共感半端ないですね。だからこそ、過去のシーンでバスの辛い出来事のときに、他人であるはずの名も無き女性が救いに走ってきたときは泣いた。
社会から、また身内からも受ける女性の生きづらさは、日本も通じるお話だと思うので、リメイクされてほしいなぁ。
ずっと観るのが怖かった。
たぶん私の中の《昭和オヤジ》が、日頃の言動を糾弾されそうで恐れていたのだと思う。
韓国映画だけれど、状況はそのまま日本にも当てはまりそうだ。
前半は、子育てのしんどさや、「嫁」という立場の理不尽さ、女性であることの生きづらさが、これでもかというくらい描かれる。観ている方も辛くなってくる。主演のチョン・ユミのやつれ具合がリアルだ。
ネタバレをお許しいただければ、物語の中で希望の光が見え始めるのは、主人公が自分の病気を自覚してからである。それは、韓国の社会がこれまで女性に対してどういう扱いをしてきたか、このような作品が共感を得られるほどに、やっと自覚され始めたことに擬えられるのかも知れない。
自覚すらできず、旧弊がまだ常識としてまかりとおっている社会は、外目には問題がないように見えるだけに、病巣は根深いように思える。
個人的には、一見やさしそうな旦那の鈍感さがいちばん罪深い気がした。
社会的差別と孤立。踏ん張らなければ飲み込まれる。
韓国でも日本とあまり変わりなく、女性の社会的差別や姑問題があるんだなぁ。
淡々と進むストーリーだか、随所に心がザワザワするセリフやシーンが散りばめられている。
俳優達の演技も素晴らしく、感情移入できた。
というか、わたしも乳幼児を育てる母親だから。
凄く苦しいストーリーだった。
特にひどく思い悩んでいた頃の私に重なる。
育休から時短復帰し、家事育児仕事をしていた。
夫は家事育児に積極的だが、平日は仕事が忙しくワンオペ。
私は育児に疲弊し、これまで生きてきた中でこんなにも怒りを露わにして枕を殴り叫んでいる自分に恐怖を感じた。
毎日子供を生かすことに必死だった。
正直仕事が息抜きになっていた。
つらいよな、、、
でも弱音を吐くと、「望んで子供を産んだんでしょ?」とか、世の誰かが言ってるなんの解決もしない言葉がよぎる。
私は自分が豹変する事が怖くて辛くなり、精神科の予約を入れようとした。
が、できずにいた。
主人公みたいに、自分は普通。大丈夫。
こんな事で病院に行くなんて、、、って思ってしまう。
映画の後半からは、ジヨンが自殺してしまうのではと思った。
でも、夫婦で胸の内を言葉に出して話し合い、いい方向に向かっていって、なんだか救われた。
是非沢山の人に観てほしい映画。
とてもリアルに描いていると思う。
疑問
出産しても保育園に預けて職場復帰すれば良かったのでは、と思いました。
主婦として家での生活を楽しむ風でもなく過ごしているので。
子供が大事だけど夫も協力的で妻の考えを尊重する人だから家にいるべき、と言わなかった筈です。
しかし、そうであっても発病する?
ジヨンが母方の祖母になり(?)我が子の母に語る
シーンで、こんな深い祖母の想いを幼いジヨンが知り得たのか疑問でした。
最後もこんなにもたやすく物書きとして再出発できるものか、と不思議でした。
女の生きづらさを、描いて・・普通の女性が主役なので共感!
2019年(韓国)キム・ドヨン監督作品。
原作者はチョ・ナムジュ。韓国で130万部のベストセラーとなった。
繊細に82年生まれの女性=妻で母で娘で嫁であるキム・ジヨン(チョン・ユミ)の、
袋小路に追い詰められた内面をのディティールを繊細かつ具体的に描く事で、
浮かび上がる問題点が実に重い。
なぜなら簡単には解決できない複雑で困難な事だから・・・。
収入の良い、その上優しく思いやりのある夫デヒョン(コン・ユ)
韓国でキム・ジヨンは日本の佐藤裕子さん的に82年生まれで一番多い名前です。
その名の通り彼女は特別な人ではない。
好きな人と結婚して2歳2ヶ月の娘を持つ高学歴の専業主婦です。
家で娘の世話と家事をしていると、閉塞感で息が詰まる。
《私のしたい事はこれだけじゃない!!》
デヒョンの妻、アヨンの母だけでは、世界から置いてかれた気がする=焦り。
焦りがジヨンの身体に異変を起こす。
正月の帰省で夫の家族といたとき、ジヨンはジヨンの母親に憑依して、
話出します。
(この会話が本音丸出しで、実に効果的・・ショック療法的アイデア)
ジヨンは女と生まれて33年。
男と小さな差別や社会の不合理を感じてきた。
お父さんのイギリス土産が弟には高級万年筆で姉とジヨンには、ノートだったショック。
高校生になり夜更けの塾帰りのバスで合う痴漢行為(図々しい痴漢で驚く)
バスを降りて助けたオバサンに感動・・私なら行動できるだろうか?
職場の女子トイレに仕掛けられた盗撮カメラ。
(もっと悪質なのは課長がその映像を部下と回し視聴してた事。)
そんなセクハラ・痴漢・義母ののモラハラ。
男女格差(会社のプロジェクト・チームに選ばれぬ理由とか・・)
男尊女卑的な夫の実家に対してジヨンの実家は進歩的です。
その辺の対比も効果的。
夫のデヒョンも凄く妻想いで愛してるのに、その優しさがどっか空回りする!!
《ジヨンの憑依を言い出せないデヒョン。》
この映画は、憑依は霊媒師に頼め・・・なんて韓国的解決ではありません。
男に適した職業。女に合う仕事・・・これは絶対にあると思う。
しかし男が女に甘えて家事と育児を放棄するのだけは、
許してはイケナイ。
そう思います。
女性差別
Amazonプライムにて鑑賞
評価が高いのと時々別人になるとのあらすじに興味をもった。
結論から言うと全然想像していた話ではなかった笑
あらすじは結婚出産し家庭に入った母親が精神的に不安定になっていき時々別人が乗り移ったようになるという話
個人的には別人が乗り移ったのが死者が多かったのでイタコ的な感じなんかなと思ったら全然そんな事はなく💧
メインテーマは女性差別
やはり日本だけでなく同じような問題があるのだなぁと思った。
またジョークの部分なども他の海外などよりも受け取りやすいように感じた。
検索してると原作があり、それでは男性から街中で何かひどいことを言われてそれで徐々に不調になっていくという設定のようだ。
そんな描写あったかな?
そういう描写があった方が理解しやすいかも
また旦那は奥さんに病気のことを打ち明けられずにいるのもはやく言えばいいのにと思うし、最終的に中々悪いタイミングで言うんやってなる💧
結局別人になるのは奥さんの自己防衛的な感じやったんかな?それやったら二重人格とかの方がよかったかもしれない。
また女性差別などのところはリアルに描かれていて理解してくれない父親やモラハラ上司などいるよなあってなる💧
ちょっと前も牛丼シャブ漬けとかいうてる人いたし笑
たしかに女性が働き辛い世の中ではある
ただ仕事や育休とかの話は日本でもよく言われるが難しいよなあって思う
奥さんが働きたい気持ちもわかるが旦那が育休とってまで働く事はなんともなぁって感じ
義理の母が言うのも一理はある気がする
女性差別の問題などもポンポンと出されていてちょっと雑多になってしまってる気はした。トイレの盗撮など
まあ男性も女性差別などに理解を示してより良い社会を作っていければいいですねぇ
重く日本にも通じる内容
映画の作品としての出来は申し分ない。シナリオも俳優陣の演技も極めて高度だ。星の数はそれだけで言えば4以上かもしれない。しかしこの映画のテーマは実際の現実問題とも相まってまさに出口の見えない問題であり、作品のエンディングの中にも希望と期待はあるものの、明確な解決策は見いだせずに終わる。映画には希望と期待が見えて欲しい。見終わった後に爽快感に包まれたいのだ。僕が映画を見る行為はその希望を探す旅でもあるのだ。
普遍的なテーマなのだが…
物凄く心を揺さぶられた。主人公キム・ジヨンは子供を産んだことで仕事を辞め、育児や家事に忙しい日々を送るうちに、時々記憶を無くしてしまい、そのときに別人が憑依してしまう精神的な病に掛かってしまう。決して生死に関わる病気ではないが、身近な問題に感じる。古くは男尊女卑、今はジェンダーなど、男は、女は妻は、こうあるべきだという概念、環境に窮屈さを感じ、耐えられなくなってしまうことは想像に難くない。何気ない一言が、人によっては傷付き、それが積み重なっていくと、修復も難しい。夫婦役を演じたチョン・ユミ、コン・ユとも好演だった。
女性は「かくあるべし」から脱出せねば
原作が韓国でベストセラーになったらしく、「どんなんだろう?」と。内容は何も知らずに観賞。『新感染』のコン・ユとチョン・ユミなんで、胸キュンのラブロマンスもありなのかなと想像したりでしたが、全然違っておりました。
淡々と進むストーリーですが、深くて重いテーマで、心に突き刺さるような箇所がいくつもありました。一見、キム・ジヨンという女性の産後メランコリーを描いた個人的な物語のように思えるのですが、表現しずらい、他人から理解してもらえない、そして、今も昔もたくさんの女性が感じている「女性であるがゆえにぶつかる重圧」という普遍的なテーマが浮かび上がってきます。
韓国の映画ですが、日本に置き替えても何ら問題はなく、封建的な社会であれば、女性の立場はいつになっても重苦しさが付きまとうかもしれません。
心の病というのは、一筋縄では解決できないもので、それを理解するのは「からまった毛糸を解いていくのに似ている」とも言われます。この「からまった毛糸」であろうエピソードがいくつかあり、うまい見せ方だなと思いました。子供のころからすでに、ジヨンの心は何かを感じ取っていたんですね。そして、ジヨンは、どこにでもいる、まあまあ恵まれた境遇である幸せな奥さん。でも、母、妻、嫁、女性は「こうあるべきだ」という価値観にがんじがらめに縛られているので、日常生活に疲れ切っています。
ジヨンの不安定な気分(感情)が乗り移ったのか、観ていると、不安な空気に包まれてしまいました。でも、これって、ジヨン演じるチョン・ユミさんの演技が成功しているってことでもありますね。
私自身のことになりますが、ジヨンと同じような、いや、もっと悲惨な体験をしております。世代はかなり上ですが。子供を産んだ後は誰でも不安定になるというのは短絡的な発想でして、やはり、いろいろな問題が山積みになったがゆえのことでした。物を言うのも疲れて果てていたんだけれど、黙々と大家族の夕飯の片付けをしていたとき。子供がお箸を持って歩いておりました。私はそのことさえ、気付かなかったのですが、姑に「危ないときには叱らんと!あんたはしつけがなっとらん!そんなんやったら、将来、あんたが泣くことになるんやで」みたいなキツいことを連発で言われて、トイレでしくしく泣いたことも・・・笑(今では笑い話 ヾ(*^▽^*)〃) もちろん、姑の言うことも一理あるのです。でも、映画のエプロンよりも、ひどいものをもらったことはありますよー!笑 (`ε´)
原作は読んでないのですが、ラストはもっとシビアだとか。映画では、一筋の光が見えて、ジヨンが立ち直っていくような、ある種、爽やかな印象があり、ちょっとホッとしました。
旦那さんが無力で無神経で気付かないという意見もありますが、一般的には協力的な方だと思います。(コン・ユだから、許せるのかも?!)
観る人で、心が動くところは違うと思いますが、今、悩んでいる人も、昔、苦悩していた人も、これから先のことを考えて不安に見舞われている人も、これを観て、心が軽くなればなと思います。
(余談)
どうでもいい話なんですが、主人公のチョン・ユミですが、韓国の女優に、チョン・ユミはもう一人別人がおります。
この映画のチョン・ユミ・・・1983年生まれ(その他出演映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』等)
もう一人のチョン・ユミ・・・1984年生まれ(映画『きみはペット』などに出演しているが、どちらかといえば、ドラマに多く出演している感じ。『トンイ』、『イニョプの道』等)
『イニョプの道』を最近、観たばかりなので、ちょっと混乱してしまいました。
社会問題
憑依してしまうお話なんだと思っていたので
いろんな展開があるのかと思っていましたが
そうではなく、女性のかかえている問題が
数多く見える映画でした。
女性が見た時の感想と男性が見た時の感想
同じ人間でも、性別により違う視点になるかもしれません。
鬱病になったり、いろんな面で抱える問題たちが
多くあり、なんだか自分のことも
見直そうって思う作品でした。
面白い!!とかそういう作品ではなく
考えさせられる作品だなと思ったので
見てよかったです。
ジムジヨンさんと実母の関係性がすてきでした。
好物を聞かれて、アンパンと答えた父親に
なんか腹立ちました。
息子の好物答えるなよ。
夫婦になる前に、なりそうな人と見る映画
「82年生まれ」も世代間ギャップを物語る大切なキーワード。
子育てを行うために、マンションが牢獄に見えて、子どもが枷になって、キム・ジヨンを孤独にしてしまう。マジで子育てなめんなよ、と思う。そして母親世代がどれほど苦労してきたかを、82年生まれ、キム・ジヨンを通して見えてくる。そのすごさ。男尊女卑から男女平等へ移り変わり始めたばかりの時代に当てられたキムを、新たな価値観とこれまでの価値観が翻弄する。
夫が気遣って「君は病気だ」という風な台詞を言うシーンがあるが、いやわかるけど、キムに謝らせるなよと思う。追いつめた一因には夫の「中途半端な関心」がある。「家事」「子育て」というものを理解していない。手伝わなければ、やってみなければその仕事がどういうものかわかるはずもない。子育てに参加しない男性、女性はこうあるべきだという価値観、家族づきあい、子育て環境、同じ立場にいる他人との比較、こうある社会やこれまでの文化やこうあるべき価値観がキム・ジヨンを追い詰めていく。
だれも「自分らしく」という、マイペースをキムに勧めていなかった。自分の好きなもの「小説」を書き始めて、感情を表に出す術を、客観視する方法を手に入れ、「自分らしさ」を探し始めて事態は、少しは、好転していく。そこで物語は終わる。ここから先またどうなるかはわからないが、しばらくは大丈夫そうな2人。
「タリ―と私の秘密の時間」と合わせてみると、より良いと思います。
共感しかない
とくに、上司の女性は、子育てしながら会社でもバリバリ働けて、取引先のジョークにも面白く返すシーンがあったが、自分もそんな風に働いて子育てもできる女性になりたいと思い、なれると思っていたであろう主人公が、現実的には育児の大変さに葛藤している場面を見て、私の母親世代の人達は育児も家事も趣味も凄くうまくこなしているのに、私はなに一つできない、とよく落胆することがある。
うまく描かれているなと感じる、子育て世代の風当たりはいつも強いし、こちらが強くいようとすると返って妊婦様と言われるのも事実。
主人公が病気であることを知った時の、母親とのシーンが印象的で、思わず泣けた。
旦那さんが様々気を付けて接してくれているが、まだまだこうゆう旦那さんは少ないように思う。
複雑な女性の悩みを、もっと社会全体で理解して欲しいと思ってしまう。
いまの子育て世代の物語
いまの韓国映画では社会を生き抜く強めの女性が描かれることが多い中、心に弱さを持つ女性が母として女性として社会人としていろいろな悩みに苛まれながら過ごす様子を旦那さんの視点を交えながら描いてます。
かなり旦那さんが理想的に優しい感じがしますが。
生まれた環境、時代によって大きく人生の選択肢が変わるだろう女性の物語の中、主人公の目を通して描かれるその母親の見え隠れする境遇の大変さが端々に伝わり、娘の病気を知った時の落胆さが印象的でした。
夫婦と家族と
原作を読み、映画も見ました。
結婚し、子どもができて家族になる。恋愛をしていた時は良かったけど、旦那の家族(とくに母)が関わってくると途端に閉じ込められた感じ。働きたいけど、子どもを見てくれる人がいないって悩みもずっと変わらずあるんだろうな。旦那の育児休暇も、まだまだ浸透してないし。ラスト旦那が子どもを迎えに行って、主人公が働いてる感じだったのは、1つのハッピーエンドかな。旦那の母は、関わりすぎず見守る形が奥さんにストレス与えなくていいんだろうなと思う。
82年生まれ、私も
韓国の世界的ベストセラー小説を基に、韓国のある一人の既婚女性の物語。
日本の一しがない男である私。
住んでる国も価値観も違う。作品に共感する事が出来るのか…?
ところが!
性別や国は違えども、生き方の悩みは同じ。万国共通。
悲しみも苦しみも、喜びも幸せも、とても共感してしまった。
劇場公開時から観たい!と思っていたのだが(本当は隣町まで観に行こうと思っていたのだが、コロナがまた拡がり始めた時期だったので断念)、いや~、いい作品であった。
韓国で1982年生まれの女性に多いという“キム・ジヨン”。
本作の主人公もその一人。
両親、姉、弟、平凡な庶民家庭に生まれ育ち、大学卒業後はOLに。
デヒョンと結婚し、出産した事で退職。専業主婦に。
育児と家事をこなしながら、夫と幼い娘と平穏に暮らす毎日…。
一見、家庭に入った女性の“教科書”のような生き方に思えるが…
時々物忘れや夕方になると鬱気分になる事がしばしば。主婦業も大変。その疲れ…?
正月は夫の実家へ。嫁は我が家以上にあれやこれや進んでしなければならず、更なる気疲れや心労が重なる。加えて、姑のちょっとした言動に過敏に反応すらしてしまう。
私の亡き母も姑とは仲良かったが、小姑からは会う度にあれやこれや口うるさく言われていた。かく言う私も。落ち着きなかった小さかった頃の事やもうどーでもいい前の事を何度も何度も何度も何度も何度も蒸し返す、大キライな小姑(叔母)であった。
…さて、私の突然の思い出こそどーでもいいとして、映画の話に。
夫の実家で突然、“事件”を起こしてしまうジヨン。それはまるで、自身の母が憑依したような言葉を発する。つまり、
自分の息子を正月に実家でのんびりさせるなら、私の娘も実家で休ませてよ!…みたいな。
しかもジヨンには、その時の記憶は無い。
この時一回きりと思いきや、その後も時折起きる。亡くなった先輩や祖母の言葉を…。
やはり本人には全く記憶が無い。
心配したデヒョンは妻に真実を隠し、それとなく精神科に行く事を勧めるのだが…。
“奇病”とでも言うべきジヨンの病気は何なのか…?
病名や病気の詳細自体は分からなくとも、原因は分かる。
韓国現代社会が抱える男女差別、ジェンダー差別。
日本でもまだまだ根深いが、もしこれが現実だったら、韓国は深刻。
OL時代、憧れのカッコいい女性上司(チーム長)が居た。彼女に対しての、男性上司の無神経バカ発言。チーム長もよく、皮肉は言ったものの堪えたもんだ。
就職前、父から「嫁に行け!」。女は家庭に入るもの。
チーム長と再会したジヨン。彼女の立ち上げたばかりの小さな会社から誘いを受ける。妻の意思を尊重する為、デヒョンが育児休暇を取ろうとする。すると、姑が大激怒。「息子の将来をどうしてくれるの!?」
未だ古臭い考えに縛られたままの年代。新しい時代の流れを受け入れられない…いや、自分の考えが絶対的に正しく、頑として受け入れない。
勿論、全員がそうではない。そのどちらでも味方になってくれたのは、母。同性親子だからこそ気持ちが通じ合う。
他にも性/ジェンダー差別問題がチクチクと突き刺さる。見てて胸が痛いほど。
男は前、女は後ろ。男は社会に出て働き、夢も果たせるけど、ほとんどの女性は家庭に入り、“女性だから”という理由で夢破れ…。
これは何も韓国だけの事じゃない。日本だってまだまだ同じ。世界レベルでは、ジェンダー意識は非常に低いとか。
だから、訴える事がとても響く。
そしてその訴えこそ、ジヨンの病気の原因。
この社会への、性/ジェンダー差別に苦しむ女性たちの心の声…いや、本音なのだ。
女性の生きづらさが描かれているが、だからと言って男性に全て否がある訳ではない。
会社での立場。
育児休暇を取ろうとするデヒョン。
先に育児休暇を取った会社員は復職したら、居場所が無くなっていた。
男尊女卑も社会問題だが、これも一つの問題。
ひょっとして、日本だって同じかもしれない。
チョン・ユミの繊細な名演!
一挙一動、表情、視線、佇まいまで、全てに吸い込まれる。
勿論、その美しさにも釘付け。
彼女と夫役コン・ユは『新感染 ファイナル・エクスプレス』などで3度目の共演。妻を支える夫を温かく演じる。
優しい母、陰湿な義母、個性的な姉、キャリアウーマンのチーム長…女性の登場人物が印象的に描かれている。
本作が長編デビューとなるキム・ドヨンの演出も繊細にして見事。
ジヨンの現在と過去を交錯させつつ、感情をすくい、染み込ませる。
アメリカではオスカー最有力と言われる『ノマドランド』のクロエ・ジャオ、日本では『すばらしき世界』の西川美和や『朝が来る』の河瀬直美、世界各国でも多才な女性監督が活躍中。
もう映画監督=男とは言わせない!
ラスト、イヤミそうな男がジヨンにイヤミを言う。“ママ虫”と。
それに対し、ジヨンは反論する。
「あなたに私の何が分かるの?」
これは男女問わず、差別社会全てに言えるのでないだろうか。
イヤミを言われ、塞ぎ込んでいるばかりではそれこそ心の病になってしまう。
理不尽な差別や問題に立ち向かう。訴える。
そして、目的や夢を持つ。
夫が育児休暇を取り、再び働き始めたジヨン。
アジア圏では珍しい形だろう。
そう、アジアは遅れている。日本では未だ女性が国のトップにすら立っていない。
女性が働く姿、夢を追う姿、その為に頑張る姿って素敵だ。
私の職場にも働く女性の方々はたくさん居る。
女性の生き方や自由が当たり前になる、輝かしいそんな社会になるように。
作品のラストは訴えではなく、いつしか輝いていたような気がした。
余談ながら、私も82年生まれなのである。
すごい
絶えず問いかけがある。その上、原作とは違うエンターテインメントでもあるラスト。観ながら、自分のゲタを履かせられた過去とか、色々考えた。そして、チョン・ユミは本当にすごい。すごかった。
慣習
なかなかに問題作。
韓国だけの話でもないようには思うけど、独自のお国柄ってのは多少はあるだろう。主人公の立場を案外ドライに描いてた印象を受ける。
だからこそ、この作品をキッカケに議論の1つも巻き起こればいいなとは思う。
思うが…。
なかなか改善は難しいのだろう。
前時代から引き継がれる慣習とそれに隷属する価値観は根強く、社会環境もそれに適応しきれてはいない。作中で語られる事実はどれも現状を表してるかのようにも思える。実際の給料事情もその通りなんだと思う。
自立を促しながらも、育児というのっぴきならない義務を担わなくてはならず、それ自体は人類規模の話だ。そう思うとある種の矛盾を今は抱えてるように思う。
変革期だからこそ生まれる軋轢や歪みに、飲み込まれないようにバランスをとってかなきゃとは思う。
実際、今の慣習に容易に染まれる人もいる。
この作品がとある一例であるのは言うまでもない。
まぁ、価値観を変えていこうと言うのだから、並大抵な作業ではないし、短時間でどおなる事でもない。
こおいう立場の人もいる。
それを知る為の作品なのだろう。
「ママ虫」ってのは衝撃的な単語だった。
あんな風に言われなきゃいけない理由なんて1つもないし、誰しもが通ってきた道だ。
荒んだ現代を象徴しているようで、憤りを通り越してひたすらに悲しい。
今の価値観だと出産はリスクのように感じる。
そう感じてしまうのが1番の問題なのだろう。
誰もリスクを取りたくはない。だけどそれを排除する生き方は国家的なリスクとなっていく。
女性は出産を「人生が変わる」と捉え、男性は「生活が変わる」と捉えていた。
その通りだと思うのだけど、改めて聞くとゾッとする。
生物学的に男性は出産できないし、出産は女性だけの特権でもある。公平ではない機能を有する異なる生物を公平に扱おうというのだから、それはそれで無理ゲーのような気もするんだが、難解なこの命題に科学と文化で立ち向かってほしい。
子孫繁栄は生物の大前提で…母という存在は、それだけで神々しくもあるんだが、いつの間にこんなにも格差がついてしまったのだろうか?
複合的な問題はありはするんだが、先ずは感謝を怠らないようにと肝に銘じよう。
夫が良い人なので
少し救われるけど、でも彼は家のことは大して何もしてなさそうです。
家事、育児、任せておいたら、どんどん妻が元気なくなってきて、おかしくなってきて、どうしよう? どうしよう? みたいな。
外に働きに出る事は、病気の治療になるのかなぁ? ちょっと違う空気を吸えるけれど、家事はたまるし、育児には外野の言葉が刺さるしね。
夫の実家では嫁はまるで家政婦扱い…
これは参るな
最後はなんだか良い感じで終わっていたのが、かえってモヤモヤした。
男社会に貢献しない。
わたしは1981年生まれです。女です。
キムジヨンより半年くらい年上です。
原作は未読、書店で積まれているのを見て、文庫になったら読みたいかもって思っていました。
あまり韓国のドラマ・映画は知らないので、ジヨンもデヒョンも知らない役者さんでした。
デヒョンさん、井ノ原快彦氏に似てるなあ…と思っていました。
若くていけめんのいのっち。ってこう書くといのっちがいけめんでないみたいやん。いのっちもいけめんやで。
ジヨンが時々違う人みたいになる症状は、最初から夫の知るところです。
さっさと本人にゆうたれよというイライラは通奏低音としてありつつも、ジヨンが過去に経験した・見聞きした「女にだけ課される嫌なこと」エピソードは、なじみがあるものばかりです。
デヒョンの会社の同僚や、ジヨンの父、デヒョンの母、ジヨンの会社の同僚…
男尊女卑のゲス的言動を見るにつけ、背後から刺したろかいとの怒りを燃やしながら鑑賞しました。
見ながら『タリーと私の秘密の時間』に似てるな…と思って見ていました。
※『タリーと私の秘密の時間』のネタバレ注意※
『タリーと私…』は、3人の子育て中でへろへろのママ(シャーリーズセロン)が、シッターを雇ったことによって、忙しすぎてできなかったこと(掃除とか手作りカップケーキとか)をシッターのタリーが寝てる間にやっててくれた!助けてくれてよかった!って思ってたら実は、雇ってたシッターは若いころの自分だった、つまり若い頃の自分が助けてくれる妄想をしながら実際には自分で全部やってたから、睡眠不足・過労等で死にかけるっていうオチなんです。
イマジナリーフレンドを実在のシッターだと妄想してまで、「ちゃんと」求められる妻・母・女であらねばならぬとおもって頑張ったんですね。女の子が課された呪いの強さにびっくりしちゃう話なんです。
『…キムジヨン…』でも、ジヨンは求められる妻・母・女に「ちゃんと」なろうと努力しました。
自分の意に反しているけど、反論を飲み込み、夢をあきらめながら、「ちゃんと」求められる妻・母・女をやろうとした。
母もそうしていたように。義母や夫が望むように。
苦しくってたまらないけど、「ちゃんと」しなくちゃいけない。でもやっぱりくるしい。
巡り巡って、他人に憑依してもらってゆってほしいことを自分にいうという、とてもまわりくどい(けどせつなすぎる)自己防衛をするに至ったんじゃないかなと。
本当に他人が憑依しているわけではなく、無意識下でジヨンが自分でそうしてるんですが。
この自己防衛は、大した役には立ってません。周囲と自分に対して「ジヨン限界」ってことを伝えただけです。
そして、夫も母も「ジヨン限界」を知って泣いたりおろおろするだけで、そんなに大したサポートしてないと私は思いました。夫が育休取ったんかどうかは結局分かりませんでしたし。
ラストでは娘の送迎はやってるみたいでしたが…
僕のせいで君はこうなったんだろうかって怖かったと夫は泣きましたが、そのとおりや、死ぬまで詫び続けろって思いました(夫だけじゃないけどね)。
私は、すでに自分ひとりで頑張りすぎてボロボロになっている女本人の現状認識と前進を結論とするのでは、弱いと思います。
もっと夫が母が父が弟が義母が、することあるやろ、それを書けと思いました。
ジヨンのお母さんは、ご自分も辛い半生だったと思いますが、夫(ジヨン父)と息子(ジヨン弟・甘やかされボーイ)に切れるだけかい、と思いました。
いい話だし、みんな見たほうがいいけど、結論がさ。
苦しんでる女本人が、めっちゃ無理してた!死ぬほど頑張っててわたし壊れてる!って気が付いて、ちょっと落ち着いて本当の他人に手伝ってもらって頑張っていこう!って感じにまとめてるんですね。
それじゃたりないよ、『タリーと私…』もそうだったけど、わたしの頑張り方間違ってた(てへ)でまとめたらあかんやろって思いました。
女が苦しいのは周囲=文化・社会がおかしいからですからね。
まだ加害者を甘やかすんかいと思うんですよ。もっとちゃんと加害者に怒りをぶつけないと、またおんなじことにならへんか?って。
映画にするにあたり、取捨選択した結果なんだと思うんですが、もうちょいがんばって!って気持ちです。
とはいえ、未だ日本映画にはない問題提議ですから、その点はありがとうなんですけども。
そしてコロナ禍に加え、鬼滅のなんちゃらの一人勝ちである現在の上映ラインナップの中で、結構埋まっていた席と、そのほとんどが大学生くらいの女の子だったことを思うと、『タリーと私…』のころ(2018)より、確実に世界は前進しているのかもって気はしました。
私自身は、あまりにも世界が男のために形作られていることに絶望してしまっているので、この世界の存続に一切手は貸さん!と決意しております。よって、結婚も出産も拒絶。
恋愛も、男のプライドへの配慮がうざ過ぎて、もう結構ですという姿勢です。
とにかく「男をたてる」ってのがきもちわるい。
女にたててもらわなたたへん男って(下ネタ自重)てことか?寝言は寝て言え!!
って思ってます。
『…キムジヨン…』の中では、ジヨンの姉が一番近いですかね。
原作小説はもっとディープでこんなほわほわでは終わらないとのことで読んでみたいな、文庫になったら。
全30件中、1~20件目を表示