「帰りに原作を買った」82年生まれ、キム・ジヨン Scottさんの映画レビュー(感想・評価)
帰りに原作を買った
この問題をこう扱うのすごい。
根っからの悪人は出てこないのね、みんな「(『ある前提』のもとでは)こうした方がいいよ」って、なんなら主人公のことを想って行動してるの。でも、主人公を追い詰めてしまう。『ある前提』が崩れ始めてるんだよね。そのことに気付けないのが悪いのかといえば、悪いんだろうけど、そこまで責められない気がする。じゃあ、今のままでいいのかっていうと違う。ここを描くのがすごくうまかった。
主張をもった作品だと、悪者は一方的に悪く描きがちなんだけど、それをしないで、問題の大きさを伝えてくるんだよね。すごい。
お母さんが常に主人公の味方なの良かった。就職決まらないけど大学卒業を迎えたシーンで、お母さんがスプーンを叩きつけて怒るの心にしみた。
あと主人公がお祖母さんに憑依されて、お母さんを気遣うのすごかった。自分は憑依現象を起こすほど苦しいのに、それでもお母さんのことを想う。
旦那さんが育児休暇を取ることを決めて「ようやく主人公が救われる」と思ってると、お義母さんが「息子の未来を奪わないで!」と怒るのも、ひどい話だけど解る。お義母さんにしたら、そう思う。
チーム長に「再就職はできません」と伝えたときに、チーム長は少し涙ぐむんだよね。その描写も良かった。
そして、主人公は体験を書くことによって救われるんだけど、社会的には問題が解決されてないんだよね。そんな簡単な話じゃない。そこを甘く描かないところも良かった。
でも、周囲の人は少しだけ変わる。そこも良かった。
観てて「日本は、ここまでじゃないだろ」と思いたかったけど、多分、似たりよったりなんだろうな。
色んなことを知っておこうと帰りに原作買いました。