君の誕生日のレビュー・感想・評価
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正面から取り上げてはいないけれど
2014年に韓国の南西沖で起きたセウォル号沈没事故。本作は同事故を初めて正面から取り上げたとの触れ込みだが、「正面から」という表現は語弊がある。事故自体の描写も救助の様子も一切ない。これが長編監督デビュー作となる新鋭イ・ジョンオンは、ボランティア活動を通じて遺族と接した体験を脚本化し、遺族の喪失感や葛藤を描く物語を組み立てた。猟奇殺人事件などを容赦ない描写で実録映画化する韓国映画界のことだから、かの沈没事故をどれほどリアルに描き出すかと期待して観ると、はぐらかされた気になるかも。それほど国民が負った傷は大きく深く、いまだ癒えずということか。
息子スホを失った現実を受け入れられず家族や周囲につらく当たる母と、負い目を感じながらも家族を繋ぎとめようとする父が、支援団体からの提案で実現したスホの誕生日会を通じて悲しみと絶望を超克する姿が感動的。遺族に寄り添う姿勢こそが今求められているのだろう。
歴史的人災セウォル号事件。可哀想な妹。涙の強要作品。
内容は、完全なフィクションで2014.4.16に韓国で起きた人災フェリー船セウォル号沈没事件の被害者遺族のその後に焦点を当てた作品。
印象的な台詞は、『あぉづぁぁっあーっ!』団地の中で一帯に広がる嗚咽を含んだ阿鼻叫喚の泣き声。どれだけ大きいのかと怖くなります。精神不安定であそこまで行けば入院ものだと感じました。
印象的な立場は、愛しい兄を亡くしてネグレクト状態の家庭に取り残される妹イェソルです。亡くなった遺族の気持ちは理解できるものでは無いですが、生きている妹が不憫でなりませんでした。あの状態なら施設行きです。
印象的な場面は、父親の主観で進んでいく物語ですが、会社の採用面接でベトナム出張の時に刑務所に3年間入っていたとの事?!セウォル号事件後すぐに帰って来れない理由としてなのでしょうが、強引すぎて逆に気になりました。
全体的にセウォル号沈没事件が暗黙の了解であるように描かれていたので初見の人には分かりづらいと感じます。
韓国の文化や風習がうまく描かれて見ていて面白かったです。突然の事件や事故で亡くした家族や友達を偲ぶ気持ちはわかりますが、あそこまでしたらもぅ遺族の呪いにしか感じませんでした。一生忘れられない傷と向き合って生きていくのが人生。楽しく生きて行けば幸せなのになぁと感じました。
ラストは号泣必至。セウォル号沈没事件の遺族の悲哀。 母の壊れっぷり...
ラストは号泣必至。セウォル号沈没事件の遺族の悲哀。
母の壊れっぷりがすごい。そして自責の念に苦しむ父。2人の演技が素晴らしい。
若者がたくさん亡くなる、そんな悲しい出来事はあってはならないですね。
子供を失った苦しみ
ソルギョング扮するベトナムから帰韓したジョンイルは息子スホをセウォル号の事故で失っていてチャンドヨン 扮する妻スンナムからは離婚届が突きつけられた。スホの誕生日が近くなり誕生日会をやろうと言う企画が持ち上がっていたが妻は嫌がった。
韓国の皆さんにとっては厳しく悲しい出来事だったんだろうね。子供を失った苦しみは計り知れないね。もうぼろぼろだ。でも前を向かないとね。誕生日会に生きる望みをかけて、良い作品でした。
セウォル号事件
2014年に韓国で起きた船の沈没事件を題材にした本作品。
実際に起きた事件や事故を映画化するのは、普通に映画を作るよりも配慮したり、下調べなどいろんな苦労があるだろうなと想像する。それだけに、丁寧に作り込まれているなと感じた。
今回の事件は、犠牲者に多数の高校生が含まれており、また、あまりにその杜撰な船の乗組員や船長などの様子が報道され、他国の事件だったが、私もよく耳にした事件だった。
2014年に渡韓した際には、首都ソウルでデモや追悼のイベントのようなものも目にした。
ある日突然、大切な我が子スホがこの世を去ってしまった、母親スンナム。その現実をかんたんに受け入れることも出来ず、また、遺族の会にも近づかずに一人悲しみを抱きながら生きている。一緒に暮らす娘のイェソルに、どうしても気持ちの持っていきようがなくなり、辛く当たるシーンは本当に辛い。
夫のジョンイルは、理由があって海外におり、事件があった時に家族のそばにいられなかった。その彼がある理由で家族の前に戻ってきた(理由は最後の最後にわかります)
夫婦にとって大切な我が子の突然の死。政府は、遺族へ賠償金を払ったり、事故の被害者に対して国からの進学金援助などをするが、それも本当に心を込めて行うわけでもなければ、社会の中では批判も少なくない。
大切な家族を失って、その後どうやってその現実と向き合うのかは人それぞれ。
友達にしろ、元クラスメートにしろ、それぞれの思いがあり、それが終盤に明かされる。
しっかし、母親の叫び声に近い亡き声には、計り知れない悲しみと喪失感と、やり場のない気持ちが溢れていて、観ているのが本当に辛かった。今もなお、こんなふうに悲しんでおられる方がいるかと思うと気の毒でならない。
離れていた夫も夫で、理由があったにせよ後悔の気持ちが溢れて、最後は感情が爆発。
誕生会で、優しかった息子の姿が、いろんな人の話から聞くことができて、こんなにも慕われていたのだということを知った夫婦。
悲しみの中に、少しの光を見いだせるようなそんな時間を過ごせたようだった。
後半どのくらい泣いてしまっただろうかと思うくらい、ひたすら泣きました。
韓国の名優、ソル・ギョングとチョン・ドヨンの演技は素晴らしかったです。
エンターテイメントである映画を通して、社会の中では起こる悲しみを、敢えて事故の様子や具体的なニュースを伏せて伝えてある。それでも十分に、その事故が与えた悲しみややるせなさ、衝撃、憤りは伝わってくる。
さすがやなぁー、韓国映画。
セラピー
悲しみに蓋をして閉じ込めるのではなく、それを吐き出すこと、誰かに共感してもらうことで治癒していくことがあるのかもしれない。はじめは何のために?と思った誕生会だが、遺族が深い悲しみを乗り越えるためのセラピーの一環なのだとわかった。
なんて素晴らしい映画なんや・・・
息子の死で家族がバラバラになり、周りの人たちに助けられてまた絆を取り戻していく。
その元になるのがセォル号事件。
事件自体の焦点は無かったが、その後の家族が苦しんだ様子が伝わってきた。
あくまで被害者の中の一家族にすぎないが他の家族にも色んな物語があったと思う。
誕生日会がメチャクチャ良かった。
ボランティアの人の進行がうまい。
スライドショーや思い出を語りあったり手紙を読んだり・・・
ずっと涙無しでは見れないシーンが続くが、ある女の子がスホにあのとき助けられた事をむせびながら話したときは号泣。
息子の最期を知ることができてジョンイルもスンナムも嗚咽していた。
集まってくれた人みんな泣いてた。
スホが来ていたんや、みんなの心の中に。
そこには家族がまた明日に向かって立ち直って行けそうな光が差していたような気がする。
それにしても韓国の子役は人財宝庫やなあ。
イェソル、本当にかわいかった。
自然な表情に父親でなくても癒やされる。
玄関先に追い出されたときはかわいそうで仕方なかった。
短い時間で良かった。
不条理
セウォル号の事故については、助けられた命だっただけに本当にやるせないです。日本では死んだ子供の年を数えるなといいますが、皆でお祝いをすると少しは癒されるのでしょうか。もう少し事故についての批判を期待していたのですが、国家を揺るがす事故だったのでタブーになってるのかもしれないですね。
ていねいに描く
セヲル号の件ではずさんさを感じた。船長がまっさきに逃げるなんて、どんな国・民なんだろう。と思った。聖水大橋や三豊デパートの崩壊についても、事故そのものより、国や人のずさんさを思った。
だが時間がたち解明されたことを見たりすると、それらが社会の軋轢から起きたことに思えてくる。船長は、アルバイトで代打だった。事故が、運営の体質や、労働環境にも基因しているわけである。
いきなり瓦解する橋や建物、混乱だらけの沈没。
たんに「ひでえ話」なのだが、自省した映画となれば、なるほどと溜飲するところがある。たとえば聖水大橋の崩壊を若年期におきたことの象徴ととらえた映画はちどりがそうだった。
ただそれは、韓国が映画産業に熱心だからでもある。いい映画をつくると、聖水や三豊やセヲルの件が、第三者から見て納得できる歴史のなかの事故事件としておさまる。のである。映画の発展は、その国を理知な国に見せてしまうことができる。と個人的には思う。
そもそも人災はどんな国でもある。わが国でいえば福知山線や雪印食中毒、東海村の臨界事故・・・311の地震、津波。
日本人は頭がいいが、映画産業に力をいれてないために、いい映画で事故・事件を自省することができない。ひじょうにもったいない。
韓国のばあい、エンタメが獲得する外貨と、エンタメが獲得する汎用な信頼性のことを知っている。アイドルや映画を磨けば、外国人が韓国を好きになってくれることを知っている。それは国家間の社交性と呼べるものではないだろうか?政治の破綻ぶりに比べて、エンタメ事業は、信じられないほどに巧くて冷静だと、つくづく思う。
日本でも国をあげて力をいれたほうがいいと思う。
日本で現況、映画を発展させようとしている機関は、たぶん、お金のない閉鎖的な映画サークルのような団体だと思う。そうじゃない。こまっしゃくれた映画はつくらなくていい。映画技術の基本をおしえる映画の学校をつくるのが日本の課題であり、映画を目指してくるひとたちに「おまえの個性なんか20年早いわ」と教えてくれる映画学校が日本映画の急務だと思う。
それはいいとして。
セヲルの遺族のなかの温度差がはげしい。補償金もらってもいいと思うが、なんとなく、決別できない想いがあるのは、映画を見てわかった。我が子のことを思い出し、なおも幻影のなかに生きてしまう母親。その時にいなかったことで罪悪感に苛まれる父親。板ばさみになってしまう妹。毎晩の泣き声に困らされる隣人。隣の娘さんのセリフに「あの泣き声のせいで大学に二度も落ちたのよ」というのがあった。
韓国でもっとも演技派の代表男優はソルギョングであり、代表女優はチョンドヨンである。これは主観はもちろんだが、客観的にもおおむねそうであろう。その二人を揃えて、がっぷりよつで、大騒ぎせず、誰も責めずにセヲルの件を描いており、好感がもてた。感動ポルノな演出じゃないが、話の都合上なみだを免れないところはある。クライマックスで亡き子の誕生会があるが、たいへんだった。役者も見てるほうも。
それで、この落ち着いた演出が初監督作品とのことだった。はちどりを見たときも思ったが、やっぱり産業としての根幹が違う。基本と基本的なことを教えてくれる映画学校の存在を優れた韓国映画を見るたび感じる。
号泣度は超高め!
観賞後は涙がボロボロ。
韓国で実際にあった大型旅客船の沈没事故を元に作られたストーリー。
事故で亡くなった息子の両親と娘を軸にして、親戚や犠牲者の親などの周囲の人達の思いや気持ちを表現してリアル感はかなり高め。
事故のシーンは一切無いんだけど、あの時の事を思い出す。
思い起こせばかなり衝撃的な海難事故。
出だしから暗いシーンの連続。
事故から立ち直ろうとする親族や、立ち直れない親族の描写が凄い。
後半の誕生日会のシーンがとにかく凄いリアル感。
出席している人達の涙がリアルで一緒に泣いてしまう展開。
息子の思いを詞にした言葉にも泣ける。
実際の犠牲者の親族の方が観たらどんな気持ちになるのか考えさせられる作品。
号泣シーンは劇場の前後左右からのヒクヒク泣く方が多めなので思う存分泣けます( ´∀`)
誕生会
最後のクライマックスで泣けます。その前までは少し味の薄い料理を食べている様な感じがありましたが、それもこれも最後の誕生会での涙に結びついています。子供に先立たれる親は辛いですね。同じ様な年頃の男の子を持っているので、身にしみます。
ソル・ギョング&チョン・ドヨンの演技力と洗練された構成
イ・チャンドン監督の作品ですごい演技力をみせたソル・ギョングとチョン・ドヨンの二人が夫婦を演じて共演した映画。セウォル号事件で息子を失ったショックの悲しみに沈む母親の姿を描いている。全盛期のデ・ニーロとメリル・ストリープが共演したような感じで、さすがに二人とも演技が巧い。二人ともいろいろな役を演じてきたけれど、特に息子を亡くした悲しみにくれるという設定はイ・チャンドン監督の傑作「シークレット・サンシャイン」と同じで、チョン・ドヨンの演技がまさに嵌まっている。この映画、脚本や演出も素晴らしい。外国から帰って来た夫と、彼や周りにつらくあたる悲しみにくれた妻の姿が少しずつ描かれていく。露骨で余分な説明など一切なく、非常に洗練されている。亡くなった長男の誕生日の描き方も自然に描かれていて、涙を誘う。
癒えない傷
言葉ではなくて映像表現で、今ある主人公の心情を表すのは脚本時点からして容易なようで案外難しい行為だと思う。しかし、この映画はそれを、いともたやすく行ったことに感嘆せざるを得ないというのが観終っての第一印象であった。単なる何気ない細部な部分までに目が行き届いてると言う点においてもである。
内容としては序盤からの構成は見事。終始見入ってしまった自分が居た。
しかし、残念な点はラストシーン近くの誕生日会が、やや間延びしてしまったことである。それまでの編集が見事な分だけ惜しいシーンではあった。もちろん、そこが、この映画の核となってることは分かった上での、あのような演出であることは重々理解はしてるのだが、もう少しコンパクトにしてもよかったのではないだろうか。
しかしながら、全編を通して非常によくできた映画である。相変わらずの韓国映画の質の高さを再認識させられた。
普通に流れてたあの日常を
胸が詰まります。たまらんです。
前情報なしに視聴。女性客ばかりで気まずいなぁと思いながら観ました。
序盤は登場人物の関係性や状況もふわふわしててどう見ていいのか分からなかった。
セウォル号の遺族と気づいてからは、母の悲しさ苦しさ、父のやるせなさが心に刺さりまくって穴あきました。
部屋の絶妙な生活感とかチョン・ドヨンさんの枯れ演技がすごすぎて、、ラストの誕生日会は声上げて泣きました。シーンひとつひとつが丁寧で無駄がない。
当時、ニュースでたくさん映像が流れていても、どこか他人事だった。。
情報が溢れかえっていて凄惨な事件、事故が流し読まれる今こそ!見て欲しい作品です。
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