コリーニ事件のレビュー・感想・評価
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シーラッハの矢
フォン・シーラッハの短編集は読んでいたが、長編は未読。奇妙な味わいの短編群に比べると、本作は極めて正統派の物語に思える。テーマとしてはアトム・エゴヤンのある作品を連想させる。
ドイツにとってナチスの時代というのは澱のように心の奥底にあって、いつまでも煩悶せざるを得ない過去なのかもしれない。ハリウッド製の戦争映画ではナチスは単純に悪の権化として登場させれば良しとなるが、ドイツ映画で描くとなるとどうしても痛みを伴う。同じ枢軸国側だった日本の映画はそのへんを避けて通ってきているような気がする。
「父親は?」…父親に白羽の矢が立ったのがファブリツィオ自身が指さしたことによるというのがあまりに重い。ちょうど「ソフィー」の“選択”のようにその後の自分を責め続ける記憶となったに違いない。
イタリア移民の起こした事件をトルコ移民の弁護士が担当するというのが、いかにも移民の国ドイツらしい。ちなみに、ヨハナ役のアレクサンドラ・マリア・ララはルーマニア移民だそうだ。
とにかく観て欲しい映画
ドイツの映画ということ、何も語らない老齢の被告人、というだけで背景は想像に難くない。が、この作品の主題はそこに無い。
被告人の沈黙が痛い非常に重い内容。それをエンターテインメントとして見易く飽きさせずに、最後には悲しい清々しさにまとめた脚本、監督は素晴らしい。
長い年月を経て自分達が作り上げた国家、社会に対するリスペクトなのか、人としての在り方を見失わない登場人物達に強く尊敬の念を覚えた。同時に羨ましさも。
法律に携わる方々のみならず、全ての人に観て欲しい映画。
骨太なドイツ映画
実に骨太な、そしてドイツで作られる意義のある、素晴らしい映画でした。
サスペンス仕立てでエンターテイメント性もありながら、歴史上の事実も踏まえつつ、更に二度三度と観客を欺く。
しかしこうした映画を今も作り続け、きちんと過去の過ちを自省するドイツという国の真摯さは本当に素晴らしい、と、
我が国の歴史修正主義的な流れとを見ながら、思わせられました…
本件、コリー二て一件落着。
ドイツの法廷サスペンスとは珍しいけど、なんと言っても、被告役がフランコ・ジャンゴ・ネロ!すごい存在感で、これだけでも観る価値がありますね。お話し自体は手堅くらいまとめた感じだけど、主人公の個人的事情と職業倫理との板ばさみは意外とあっさりだし、行動も敵側と通じているみたいで、いまいち納得できません。結局、戦時中のナチの残虐行為が真相と言う新味のない展開でちょっとがっかり。被害者の戦時中と戦後のギャップがあり過ぎて、心境の変化とかがわかると良かったかも。戦後ドイツの司法制度に関するオチは、ちょっとひねりがあって面白かったです。
これ、面白い
残虐なドイツ人の歴史を描いたドイツ映画。
トルコ移民で母子家庭の息子ながら念願の弁護士になって初めての仕事が、父親代わりとなって自分を育ててくれた会社社長を殺した在独イタリア人だった。昔の恋人を含む被害者家族との板挟みなど、最初はなかなか話が進まないなーという印象だけど、車がエンストしてピザ屋に飛び込むあたりから面白くなる。
新米弁護士の主人公は黙秘している被告人からは何も聞き出せないが、少しの情報を手がかりに被告人の動機を探っていく。何も喋らない被告人に「父親に会っておけ」と言われたことが心に残り、ずっと憎んでいた父親に公文書の読み込みを任せてピザ屋のアルバイトを伴って被告人の故郷イタリアに行くと…
確かに主人公の元恋人で被害者の孫娘の言うように、被害者は任務に忠実だっただけ。しかし最近では「グッドライアー」もそうだけど、起こってしまった戦争は、終戦後何十年経っても終わらないんだ、ということ。またその罪を問えないようにするとは。
イタリアトスカーナの村の広場でのラストシーンは泣ける。
あと、公文書は大切ね!捨てちゃダメです。
サスペンスでも法廷劇でもない
やたら評価の高いドイツ映画。
冒頭におこる殺人事件の弁護を担当する新人弁護士。しかし、被害者は小さい頃にお世話になった人物であり……。
ドイツの法律の抜け穴だとか、法廷劇のドラマとあるので、ドラマチックな逆転劇を期待したが全くそんなものではない。
ラストの判決シーンもかなりの肩透かしだし。
言い方は悪いが、ドイツのドレーアー法とやらに考えさせるメッセージを向けた作品。
ドイツはいつまでもWW IIの悪夢に向き合う。日本はどうだ。
ドイツは国家と国民が存する限り、永遠にナチスの十字架に向き合うのだと思う。
日本は一部の関係者に責任を押し付け、「終戦」で早々に幕引きを図った。
このような映画は日本に生まれないのか。
胸にズンときた
良い人と思っていた人の過去に触れる。
ある人には父であり、恩人である。
コリーニ氏に殺される直前、ハンス・マイヤーは、罪を悔いていたのではないか?
その人を許せなかった自分をコリーニ氏は許せなかったのかもしれない。
正義、罪、償い、世代や時代を超えて大事なものがある。
知られざる過去、知られざる法
新作ならなんでも飛びついてる感じで鑑賞
弁護士作家のベストセラー小説の映画化との事
感想としては
やや詰め込みすぎな割に地味なんですが
全体的には丁寧な作りで見応えがありました
あるホテルの一室で会社社長マイヤーが射殺され
犯人ファブリツィオ・コリーニ(フランコ・ネロ)
は逃げもせずすぐ逮捕
国選弁護人に新人のトルコ人弁護士カスパー(エリアス・エンバリク)
が初仕事でコリーニの弁護を担当することになります
その後カスパーは被害者が自らの幼少期の親代わり
今の弁護士の自分を成り立たせてくれた恩人であることを知ります
…いやそんな恩人ならすぐ気が付こうよ…
と思ってしまうほどこのカスパーという弁護士は
なんか抜けてます
カスパーは動機を探りますがコリーニは全く何も喋らず
このままでは終身刑になると説明しても変わらず
会社を引き継いだ旧知の仲の孫のヨハナは会社を引き継ぐ
にあたり早々に裁判を終わらせる方向で
弁護士としての師匠マッティンガーが裁判を担当し話が進みかけますが
犯行に使われた凶器がそう簡単に入手できない拳銃「ワルサーP38」
である事を疑問を感じたカスパーはコリーニの出生等を探ると
イタリアのモンテカティーニという村出身であるとわかり
恩師マイヤーがナチ親衛隊出身でパルチザンのテロの報復に
ランダムに選び出したモンテカティーニの村人20人を虐殺
その中にコリーニの父がいたことを突き止めます
つまりコリーニの犯行は復讐だったわけです
この事実にヨハナは恩師の過去を暴くカスパーを非難し
マッティンガーを通じて取引を持ちかけますがカスパーは
正義を貫くためたとえ恩師に不利になろうがコリーニの
弁護をやり切る決意をします
しかし裁判が始まるとコリーニが1968年にマイヤーを
告発しますがマイヤーの戦争犯罪を時効とし取り下げる判断が
既に下されたことをマッティンガーが明かし
その件を全然知らなかったカスパーは驚きます
…っていうかそういう履歴って資料に書いてなかったの?
カスパーは真面目で正義感に熱いですがなんか抜けてます
まそれはいいとして
そこでカスパーは当時の資料を調べ直すと1968年に施行された
「ドレーアー法」というナチスの「直接手を下さなかった」
虐殺等の「幇助」に関する罪が15年で時効になるという法が
存在することを知りその法案策定にマッティンガーも関与していた事を知ります
当事この法案に関してはあまり議会に関心を持たれず可決されていたようです
これによりコリーニの告発が取り下げられていたのでした
父を殺されたコリーニは姉もいましたが今回の犯行の
2ヶ月前にその姉は亡くなっており実力による復讐を決意したわけです
カスパーはマッティンガーに法の正義としてナチスの戦争犯罪を
法が守るのかと迫るとマッティンガーは降参しそれを否定しました
かくしてコリーニの行動の真相は明かされ求刑も情状酌量が認められる
ものになると思われますが…結末はあまりに悲劇的なものでした
調べるとドイツではこの小説がきっかけか
ナチスの戦争犯罪について再審議する動きがあり
90歳にもなる元ナチス出身者が場合によっては裁かれる
といった事が起こったほど影響があったようです
この作中でもヨハナが
あなたは祖父のおかげで弁護士になれたし
親衛隊にいたのも過去の話じゃないというセリフがありました
確かにそうなのですが弁護士という仕事はそれでも法の正義を
尊ぶ仕事であるという事をカスパーは実践したわけです
カスパーにとってはマイヤーとの過去は忘れないでしょうし
コリーニにとっては忘れることは絶対に出来ない過去だったし
その過去はカスパーもヨハナも知らない過去だった
このへんのすれ違いが印象的な作品でした
おすすめしたいです
法律って恐い、国家はもっと恐い
法律って恐いねぇ、法律って決して弱者に寄り添ってくれるもんじゃないから・・
強者が上手く立ち回るために存在する側面も多分にあるし・・
今、日本の国会で何気なく法案が、ぽんぽんと成立してますが、きちんと監視機能が効いてるのかどうかも少し気になります。
最後にコリーニさんは本当に自ら命を絶ったのでしょうか?
収監されている被告人が簡単に命を絶てるほどお粗末な拘置所ってどんななんですかね?
国家や司法に不利な判決を出さない為の陰謀じゃないかとも思いましたが・・・
考えすぎでしょうか?
初ドイツ映画かも
予告編を見て、気になって、原作読んだら面白くて、映画も見に来ました。
シブおじ率が高い、いい映画。
そもそもドイツ映画を見たことがないので、分かりやすいのはありがたい。
丁寧な作りで、わかりやすくて ストレートに泣ける。王道です。ラストもな。(まあ、映画のお約束的な・・・私は蛇足だと思ったので、マイナス0.5点)
この物語自体はフィクションなんだけど、小説がきっかけで問題の法律が廃止されたらしい。
そんな強すぎる原作を殺さず、主人公をトルコ系にして、その人間関係も膨らませて(原作もそうだっけ?もう、忘れてる)良い映画だったと思いました。
原作知らなかったら、もうすごい知的興奮だと思います。SSという言葉が出た時の、衝撃。
主人公の派手な顔立ちが唯一の華ですが、周りのおじさんたちもみんな渋くて素敵でした。ドイツ良いね。
一種のドイツ歴史に触れる事ができる作品
エンドロールでもあったように、実際にドイツでは戦争犯罪者が数え切れないほど法律で守られた過去があり、この小説がそういうった法の改訂に繋がったというのがから、一種のドイツ歴史に触れる事ができる作品である。
ただ恥ずかしながらサスペンス映画と勝手に期待して観てしまって為そういう見方をするとしこりは残る。
この作品は歴史映画として見る分には十分見応えはあった。
あまりドイツ作品、ドイツ文化に多く触れることはない為貴重な時間とはなったが、ハリウッド作品に見慣れてると動機や過去の描写は分かるが、若干現実味に欠ける(ドイツ文化をよく知ってれば現実味はあるのかもしれないが)ストーリー展開が気になったか。
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