「主題はいいのだけれど、人間関係がいまひとつ興ざめ」コリーニ事件 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
主題はいいのだけれど、人間関係がいまひとつ興ざめ
世紀が改まった頃のドイツ。
ホテル最上階の一室で経済界の大物ハンス・マイヤーが銃で殺害される。
犯人(フランコ・ネロ)は直ちに捕らえられ黙秘を続けている。
トルコ人で新米弁護士のカスパー・ライネン(エリアス・ムバレク)は予審に立ち会い、犯人の弁護を引き受ける。
資料には本名で記載されていたので気づかなかったが、殺害されたハンスはカスパーの大恩人。
さらに、ハンスの唯一残された遺族の孫娘ヨハナ(アレクサンドラ・マリア・ララ)とは恋仲だったことがあった・・・
といったところからはじまる映画で、主要人物の関係だけを取り出すと、やや興ざめな人物配置の感がありますが、黙秘を続ける犯人の動機を調べると・・・と、俄然、面白くなってきます。
犯人ファブリツィオ・コリーニはイタリア出身。
殺害されたハンスも高齢で、年齢から逆算すると、第二次世界大戦が絡んでいることは、映画中盤で察しがつく。
とすると、サスペンスを盛り上げ、引っ張る要素は、コリーニがハンスを殺害した動機が「下劣な動機」かどうか(これにより罪の重い謀殺となるか、軽い故殺となるかに分かれる)となるのだけれども、映画の決着はそこのところにない。
ナチスドイツが第二次大戦中行った非道行為を糾弾するのではなく、戦後、復興中のさ中の60年代に、旧ナチスの戦争犯罪人たちにお目こぼしをするような悪法をつくっていた、いわゆる「臭い物に蓋をする」以上のことをしていたことを白日に晒すところにあった。
この大戦中のみならず、戦後の歴史上の誤りを正そうとする主題には共感できるのだけれど、サスペンス描写や法廷シーンなどは、やはりぬるく感じてしまいました。
やはり、主要人物の相関が、興ざめなのかもしれません。
カスパーとヨハナの関係がサスペンス醸成に寄与していないような・・・・