「シーラッハの矢」コリーニ事件 梨剥く侍さんの映画レビュー(感想・評価)
シーラッハの矢
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フォン・シーラッハの短編集は読んでいたが、長編は未読。奇妙な味わいの短編群に比べると、本作は極めて正統派の物語に思える。テーマとしてはアトム・エゴヤンのある作品を連想させる。
ドイツにとってナチスの時代というのは澱のように心の奥底にあって、いつまでも煩悶せざるを得ない過去なのかもしれない。ハリウッド製の戦争映画ではナチスは単純に悪の権化として登場させれば良しとなるが、ドイツ映画で描くとなるとどうしても痛みを伴う。同じ枢軸国側だった日本の映画はそのへんを避けて通ってきているような気がする。
「父親は?」…父親に白羽の矢が立ったのがファブリツィオ自身が指さしたことによるというのがあまりに重い。ちょうど「ソフィー」の“選択”のようにその後の自分を責め続ける記憶となったに違いない。
イタリア移民の起こした事件をトルコ移民の弁護士が担当するというのが、いかにも移民の国ドイツらしい。ちなみに、ヨハナ役のアレクサンドラ・マリア・ララはルーマニア移民だそうだ。
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