「かっこいいドイツ映画登場!」コリーニ事件 talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
かっこいいドイツ映画登場!
2回目鑑賞。戦時のイタリアで「モンテカルロの一夜」というドイツの歌がレコードで何度も流れるのがあの時代の空気を作ってた。
フランコ・ネロの演技に泣けました。1968年の例の法律が問題であったことが法廷で明らかになったときのフランコの顔は、晴れて太陽のようだった。アンナ役の女優さん、とっても素敵、ドイツ人にはいないタイプ。私の祖父がいなかったら「あなたはKebabの売り子だったでしょ」はかなりきついけど本当だ。母親はトルコ人、父親はドイツ人だけど、カスパーが小さいとき、父親はとんずら。でもお父さん、助けてくれたね。それは「お父さんはまだ生きてるの?」とネロが聞いてくれたから。私が思うのは、どちらか一方がえらそうに、でなくて、互いが自分を考える、考えさせる関係というのがいい。そういうのどうかな、とこの映画は私たちに提案してるかなと思った。
エンドロールで、いわゆるドレーアー法には、リュプケ(CDU、後に大統領)、法務大臣ハイネマン(後にSPD初の大統領)、ブラント(SPD、後に首相)も関わっていたことが、流れた。彼らもこの法律が何を意味しうるかわかってなかったんだろう。なぜなら大混乱の時代だったから:1968年、ナチ犯罪への追及が厳しくなりつつある一方で、その反動勢力もあり、ナチス政権下で検事として辣腕を振るったDreherがその法律の草案者だ。政府はCDUとSPDの大連合。まさに法の穴である「時効スキャンダル」は、可決後にビルト紙日曜版が、翌年はシュピーゲル誌が暴いた。ここでもマスコミの力が効いている。
この映画の原作(原作者のシーラッハは弁護士でもある作家)の出版(2011)がきっかけで、ドイツ連邦法務省内にナチの過去再検討委員会が設置された(2012)。
当時の若いマッティンガーもほやほやの見習いで、カスパーとどっこいどっこい。ただ、あの時代に法学専攻だったなら保守で、学生運動側には居なかったろうと想像する。(2020.11.29)
映画とてもいいです。でも、原作読むと何が問題なのか、ドイツは戦後どのように動き、どれだけ膨大な資料を(ナチスの資料はナチスが破棄したが)きちんと保管しそれを法廷でつかったのかよくわかります。公文書が真っ黒だったり議事録とらない、何でも捨てるのは日本だけ?どこの国も?よくわかりません。日独比べてドイツは偉いね、と言いたい訳ではないです。どんなに世話になり大好きな人が居ても、法律の前で謙虚に誠実に、というのは非常にドイツ的だと思います。まして主人公はとても優秀な弁護士の卵、だからこそ。そこらあたりは映画ではちょっと弱いと思いました。原作、薄い文庫本なので関心あったら。(2010.11.28)
カスパーがボクシングやるなんて!想像外の幕開けでワクワク、素敵な俳優さん!といきなり肩入れ状態。
原作は未読ですが、鑑賞後、すぐ買いました。映画化する上で、原作の設定を色々変更したようです。
移民社会のドイツ。DoktorやProfessorといった肩書き大好きなドイツ。クラシックカーとしてのメルセデスーステイタスでもあり、頑丈で、ドイツ人が好きな車ー。定年間近で男前の教授のリッチな生活と引き締まった肉体(例外あり)、これもドイツ。アイロン大好きで、シワシワだらけの衣服考えられないドイツ。ワインを美しいグラスで飲むのもドイツ(ドイツ人はビールばかり飲んでいる訳ではない)。インテリの女子学生だって、タトゥー入れる、ピアスあちこち挿入する、髪の毛もファッションも派手なのもドイツ(ベルリンかな)。
そして、法律を真面目に守るドイツ人が、「正義」の前で謙虚になり、一度決めたことでも、いい方向に変える勇気もある人たちであることが、描かれていた。
前例主義でない、忖度しない、権威や権力に怖じ気づかない。若い人をからかいながらも、リスペクトし、励まし育てるのが上手な大人たち。そういう風に、ドイツの学校、家庭、地域では、若い人を育てる。自分の言葉で自分の意見を述べることを、ひたすらトレーニングする。「生意気」は、若い人へのほめ言葉であるドイツ。以上、美化しすぎであること、わかっています。でも、原発あって、自然をぶち壊して、不要不急の武器買って、私達が払っている税金の使い方がすごく下手くそな、そんな国の「コロナの時代の」私は、自分の国を全く信頼できない。その反動です。
トスカーナの自然も映るし、ドイツ語もイタリア語も聞けます。時代をまたぐ時間軸往来の素晴らしい構成。そして、ジャンゴ~のフランコ・ネロ。ブルーの目は相変わらず美しい。何も語ろうとしないが、表情で示すという、恐ろしく難しい演技が素晴らしかった。音楽もとてもいい!通底するモチーフは父への愛、思いです。
誰が見ても、楽しめるところ、好きなところを見つけられる映画だと思います!
talismanさん、原作やっと読みました。やっとです。
ほんと薄い、でも薄いのに中身はなんと濃厚な重厚な一冊でした。後書読むと原作者の祖父もナチ党の重要人物なんて、、、いや〜堪能しました。
talismanさん、レビュー拝見してていつも思うのですが、色んなことをよくご存知ですよね!見習わないと、といつもおもってます。
原作気になりますね。薄いなら読んでみようかな、今何冊か読むものが溜まっているのですぐは無理かもですが、いつか必ず読みますね〜!
いつもお世話になっております。
いやはや、今年のマイベスト10をそろそろ考えなければならないのですが、やっぱりこの作品は上位になりそうです。
試験もおかげさまで自己採点で合格だったので、これからまた映画三昧の生活になりそうです。
ワルサーP38に関してはbloodさんが詳しいので、またご教授願いたいところ・・・・
talismanさんへ
ナチスの子供世代が親世代の戦争犯罪を糾弾すると言う、本作みたいな件は、1990年代に一種のムーブメントになりました。正直言って、今更感は否めないです。
ドイツ人の強制移住で最大210万人の一般人が死亡している事の方が、葬られた歴史の闇ですかね、って思います。